衆院予算委員会は27日、安倍晋三首相ら全閣僚が出席し基本的質疑を行った。学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の太田充理財局長は、近畿財務局が売却価格について「ゼロに近い形まで努力する」などと学園に伝えたとされる音声データを事実上認めた。売買契約前の価格交渉は否定したが、データには価格の下限を巡るやり取りが詳細に記録されており、値引きなどの事前交渉を否定してきたこれまでの政府答弁に大きな疑問符がついた形だ。
一方、首相は売却が「適切だった」としてきた過去の答弁は「財務省や国土交通省から適切に処分したと報告を受け、そのような理解で申し上げた」と述べ、訂正しない考えを示した。
太田局長は音声データを近畿財務局職員に確認し、時期は売買契約前の「2016年5月半ば」と説明。データには学園の籠池泰典理事長(当時)が「ゼロに近い形の払い下げ」を繰り返し求め、財務局が「1億3000万円を下回る額は提示できない」「理事長が言うゼロに近い額まで、できるだけ努力する作業をしている」と話すなどの応答が記録されている。
学園との協議について、佐川宣寿国税庁長官は理財局長時代に「価格を提示したことはない」と答弁していた。音声と食い違うこの答弁について太田局長は、当時まだ基本になる国有地の土地評価額(9億5600万円)が出ておらず、そこから追加のごみ撤去費用(約8億2000万円)を差し引いた正式価格は示していない、という意味だったと釈明した。
音声の内容は「金額などさまざまなやり取りがあったが、(財務省側の)考え方を申し上げたものだ」とし、「(佐川氏の過去の答弁が)金額に関する一切のやり取りがなかったかのように受け取られたのは申し訳ない」と陳謝した。
首相は、会計検査院から「値引きの根拠が不十分」と指摘されたことに対し、「真摯(しんし)に受け止めなければならない」と述べ、今後は国有財産の処分手続きを透明化すると強調した。一方、衆院予算委は理事会で、野党が要求した首相の妻昭恵氏、佐川氏、学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長らの招致を認めないと決めた。【水脇友輔】