新田が競輪祭初V 【小倉】
小倉競輪で4日間にわたって争われたG1「第59回競輪祭」は最終日の26日、12Rで決勝戦(1着賞金2890万円)を行い、新田祐大(福島、31歳、90期)が上がり10秒6という圧巻のスピード捲りで1着。競輪祭初制覇。G1通算5度目(単発を除く)のVを挙げた。2着は地元の北津留翼、3着は前回覇者の平原康多。既にグランプリ行きの切符を持つ新田が優勝したことで、最後の切符は桑原大志が手にした。4日間の売上額は86億3769万円余り(目標額90億円)。競輪祭は来年の第60回大会からナイターでの6日間開催に変更される。
■ヒーロー まさに「規格外」の強さ
強い。今年二つ目のタイトルを、新田はいとも簡単に奪った。戦った選手たちからは、「力が違い過ぎる」「規格外だ」という声が次々に漏れた。
新田は「(8番手)深谷君の動き待ちのレース展開になった中で自分のタイミングの位置になったので、1角すぎに踏み出した」と、淡々と振り返った。3角すぎには3番手先捲りの木暮も乗り越え、上がり10秒6で後続をちぎった。11年前、エスクレド(スペイン)が出したバンクレコードに0秒1と迫るタイムを聞き、「本当ですか? それは分からなかった」と驚きの表情。自身が思う以上のパワーを発揮する肉体と精神力が備わっていた。
手応えも口にした。「今年の前半戦はいいレースができなかったが、高松宮杯(6月)を制してからは、常に勝ちを意識した」。今は狙って優勝を勝ち取れるという自信を、言葉からみなぎらせた。
きょう27日から来月中旬まで、トラック競技のW杯をカナダとチリで戦うために日本を留守にする。「時差や体調のケアをするのが年末の課題」と、GPへ向かう道程も平たんではない。だが常に人気を背負う立場。昨年の失格に言及し「期待を裏切った。選手は、応援してくれる人たちがいてこそ。今年は応援に応えたい」と力を込めた。GP優勝賞金を加算すれば、年間賞金額は2億5000万円を超え、2002年に山田裕仁が記録した年間最高獲得賞金額を抜く。あと約1カ月後、その瞬間がきっと訪れる。 (野口)
◆新田 祐大(にった・ゆうだい)1986年1月25日生まれ、福島県会津若松市出身、31歳、90期。2005年7月デビュー。通算成績は847走で292勝、優勝48回(4~6日制G15V、G22V、G37V)。通算取得賞金は8億1625万7437円。渡辺一成、中川誠一郎と12年ロンドン五輪チームスプリント出場(8位)。身長172センチ、86キロ、O型、師匠は班目秀雄(引退)。
◆福島勢がG1 4連覇
新田が6月の高松宮杯(岸和田)に続き、今年2度目のG1制覇。8月オールスター(いわき平)、10月寛仁親王牌(前橋)は同県の渡辺一成が制しており、福島勢がG14連覇。同一府県の4連覇は2002年のグレード制導入後初。
■北津留悔しい準V
単騎の戦いだった北津留翼が準Vの健闘で、G1の表彰台に初めて上った。それでも「先に自分が仕掛けていれば…」と悔しさが残った。木暮-平原を追走し、最終HSは一本棒の5番手。「もっともがき合いになって、内が空くかどうかが勝負と思っていたんだが…」と、予想外の展開に仕掛けを逸した。「2角で行けばよかった。新田君に先に行かれて、あっやられたと慌てて追ったが遠かった」。ただこの一戦で頂点が見えたのも事実。来年のG1戦線で再挑戦だ。
■戦い終わって
平原康(3着)木暮君に全て任せていた。今回の新田君の飛び抜けた強さは、自分への刺激になった。
木暮安(4着)新田君のスピードが全然違った。
諸橋愛(5着)新田君は加速率がすごい。その後ろに付いて勉強になったし、自分の課題も感じた。グランプリまでに修正する。
渡辺晴(6着)前を任せた山中君はこの舞台で先行したのだからすごいこと。(捲られて)あとは見ての通りです。
金子貴(7着)いい緊張感で走れた。また味わいたいので再び頑張る。
深谷知(8着)新田さんが強過ぎる。差はすぐには埋まらないが、やるべきことをやっていく。
山中秀(9着)力の差を感じた。
■GPの9人決定
JKAは26日、グランプリ(12月30日、立川)の出場9選手を次の通りに発表し、9人のS級S班への昇班も決まったと発表した。
平原康多(埼玉、5年連続(8))▼三谷竜生(奈良、初)▼新田祐大(福島、3年連続(4))▼渡辺一成(福島、2年連続(2))▼浅井康太(三重、7年連続(7))▼諸橋愛(新潟、初)▼深谷知広(愛知、3年ぶり(5))▼武田豊樹(茨城、4年連続(9))▼桑原大志(山口、初)
■桑原が初のGP
桑原大志が賞金9位で生き残り、山口支部勢として初のグランプリ出場を決めた。5月の日本選手権の準Vで賞金上位に名を連ねて一躍、注目の選手に。「苦しかった。メンタルも鍛えられた」と胸の内を明かしながら、「他地区の選手にも祝福してもらえて、うれしいですね」とホッと笑顔を見せた。「いろいろな人に支えられてここまできた。本当にみなさんのおかげ」。多くの感謝を胸に年末の晴れ舞台に立つ。
2017/11/27付 西日本スポーツ