Amazon Echoの国内発売を機にAIの存在が身近に感じられるようになってきた昨今。国内アーティストに目を向けると、Maison book girlがAIとプロデューサー・サクライケンタの共同作詞にによる新曲「言選り」を、マジカル・パンチラインがAIをクリエイティブディレクターに迎えたMVをそれぞれ発表するなど、AIと音楽のコラボは徐々に盛り上がりを見せている。そこで今回、海外の動向にも詳しいデジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏にAIと音楽の未来について話を聞いた。
ジェイ氏は前述した2作品について、「AIがクリエイターやアーティストのクリエイティブツールの一つとして強みを発揮することを予感するコンテンツだった」と評価し、“作曲”におけるAIの可能性について以下のように語った。
「Maison book girlの例のように歌詞をAIで生成した場合はその言語が分からないと伝わりませんが、曲は世界中の誰もに伝わるので、聴いてもらえるパイがより広がります。最近ではアメリカの歌手、タリン・サザンが作曲とMVのプロデュースにAI(Google Magenta、IBM Watson、Ampher Music)を使っていました。これは先にAIに曲を作らせてから自分で歌詞を書くというプロセスで、彼女がネットとの親和性が高いこともあり話題となりました」
国内に目を向けると、音楽とAIのコラボはまだ実験的なものであるように感じる。今後国内で普及するために必要なものは何なのだろう。
「従来のアーティストだけでなく、自分で曲を作ることを難しく感じているような“アーティスト志望”の人もAIを使って自由に楽曲を作る時代はそう遠くない、と2組の取り組みを観て感じました。今後の議論は“AIをどう使うか”から、“誰がAIを使って音楽を面白くできるか”に焦点が当たると思います。一方、海外ではすでにAIで作曲した音楽の著作権、出版権をどう分配するかについて音楽業界と人工知能を作っている企業が話し合いを進めていますが、残念ながら日本ではまだそこまで至っていないようです。AIを使って何ができるか、特にどのようなビジネスを作り、誰が利益を得られるかについては、音楽業界とテクノロジー業界との間で連携が早急に必要ではないでしょうか」
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