​Q.​毒母のせいで、DNAレベルで自分が嫌いです…

毒母に育てられたせいで、心が弱いという今回の相談者さん。乗り物に乗れない弱い自分を嫌い、原因となる母親への恨みが収まらないのだそう。
毒親問題に自身も悩んだ経験のある元メンヘラ、現ハッピーリア充のスイスイさんが、問題を根元から見つめ直します。

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弱い自分と母への恨み

スイスイさん、いつも楽しく拝読しています。

母との関係について相談です。
私は昔から気が小さく、とても心配性です。
その気性により、今では乗り物全般に乗ることが出来なくなってしまいました。

私はもっと普通の人として生まれたかったです。
友達と旅行を楽しめたり、彼氏と買い物を楽しめたり。
テレビで映る病気の方などは、病気になって良かったなんて言いますが、ただ精神の弱い私は、とにかく普通の人が羨ましいです。

私は自分の精神の弱さに対するストレスを、全て母にぶつけます。

母は私のことを「自分の生涯をかけた作品」と言います。
なので私が、もっと普通に産んでほしかった、もっと精神的に強くなりたいと訴えれば、母は傷つきます。
これ以上どうやって育てればよかったのと、ショックを受けています。

病院に通って、乗り物に乗る際に飲む薬をもらっています。
ただ私は、DNAレベルで自分のことが嫌いなのです。この弱い自分を受け入れられない以上、親に対する恨みを拭えそうにありません。
この気持ちは乗り越えることが出来るのでしょうか。

相談の趣旨が合わないようでしたら、申し訳ございません。 子育て中のスイスイさんに、このようなことを質問するのは心苦しいのですが、メンヘラ卒の母親としてのご意見アドバイスをいただけると嬉しいです。

寒い日が続きますので、どうぞお体にお気をつけ下さい。

( 匿名・20代後半・女・メンヘラ・毒親育ち)

読者のみなさん。

この相談に答えるとしたら、なんて答えますか?
「毒親とは、独裁国家のようなものだから、まず出国すべき! 離れて! そして自分の価値観で生きて!」と絶縁を提案しませんか?

毒親であった場合の、適切な方法は、その支配からの卒業一択。

例えはどうであれ、方向性はそうなりがちな気がするのだけど、そしてそれで実際2回答書き上げたのだけど、なんどもなんども読んでわたし、気づいてしまったのです。

これから書くことにあなたはショックを受けるかもしれないが、わたしはあなたの相談文から推測していることを、答えるから、心の準備をして落ち着いて(それができたら電車乗れるか。とりあえず最良の状態で)読んでほしい。

あなたの相談文を何度も何度も読んで、答えを書き直した結果、たどり着いたのは、このお母さんそこまで「毒親」ではないのでは?と。

少なくとも教育面でクセのある洗脳をしたかというと、そんなことない気がする。
ここで扱われている言葉、「DNAレベルで」や「ふつうに“産んで”欲しかった」って…育て方や教育以前のガチ血筋フェーズな話のみしか指してないし、なによりここまで恨むなら、離れて毒を抜けばいいのに30歳前になってもあえて離れないのには理由があると思う。

その理由は、便利だからだよね。
毒どころか、あるのは2つの蜜。

1つ目の蜜は、お母さんがメンヘラホイホイなこと。子離れをしていなさすぎてメンヘラなあなたに対しがっつり服従してくれている。

2つ目の蜜は、あなたのコンプレックスをすべて母のせいできること。母のせいにして自己嫌悪や独立する責任から逃げ続けられている。

その便利な身代わりがいるその環境、手放したくないよね。自分のこれまでの行動より、お母さんを恨んだ方が楽だもんね。
だから下手したら、恨み先があるいまが一番、人生の苦悩少ないかもしれない。

だけど問題は、そのままだと「自分を嫌いなまま」だということ。ということであなたの幸せのために今回まず一緒に考えるべきは…
「自分のコンプレックスとどう向き合ったらいいですか?」だと思う。

人は自分の価値を変動させられる

そもそもコンプレックスって「隣の個性が青く見える」というだけのこと。

背が高い人いいなと思う人もいれば、低い人いいなと思う人もいて、英才教育された人いいなと思う人もいれば、自由に育てられた人いいなと思う人もいて、つまりコンプレックスがあるということは「特別に人より劣る部分がある」という証明ではなく、ただ自分と違うものに憧れるだけのこと。

なので、人類が画一化されない限り、あなたが「ふつうの人」と思ってる人たちだって大抵何らかのコンプレックスを抱えてる。
そしてあなたの問題は、自分のコンプレックスに関して、「DNAレベルでまるごと生まれ変わらないと解消しない」と思ってるところ。

でも、どんな人でも、そんなことはないのだ。

自分の価値は自分で一刻一刻変えられる。いうなれば自分の「時価」は変動させられるということ。(ここでいう時価とは日経でも築地でもなく自分市場の「自分が認める自分の価値」のこと)

コンプレックスを不動のものと諦めず、自力で減らせるのだ。

で、自分で気づいてないけど、あなたはすでに自分のコンプレックスを減らそうと、もう前進できてる。「不安症で乗り物に乗れない」を克服するために、ちゃんと病院に通って薬をもらっているし、薬さえ飲めば乗り物に乗れる。価値あげられてる。
嘆くだけなら時価はそのままだけど、0.00001円ずつでも上げられたならその自分を褒める癖をつけてほしい。

しかも乗り物に乗れないことで、ふつうの人より世界が狭くて不利だと思ってるかもしれないけど、この時代、世界を広げるために乗り物はそこまで必須じゃないと思う。
(現にわたし1年に一回くらいしか電車に乗らないし子どもの送り迎え圏内しか車使わない)

乗り物に乗れなくても徒歩で日本一周することもできるし、自宅から出ずyoutubeやインスタで好きなことを発信して世界中の人と繋がったり、それを仕事にもできる。
彼氏や友人に関しても、いつも徒歩圏外に出る必要もないしなんならチャットで語り合うだけでも関係は進むし、そもそもせっかく薬を処方されてるわけだから、たまには薬を飲んで買い物や旅行に行けば、何も弊害ない。

医療もインターネットも出会い系アプリも進化してした今、あなたが幸せになれない理由はないのだ。
あなたは幸せになれるし、幸せになってほしい。いいわけができない時代でよかった。

母からの卒業

ということで、このDNAでは幸せになれない!という思い込みは、今これ読んでるのが11:30だとすると11:40頃には完全に捨てよう。
母を恨み続けたいなら続けてもいいと思う。でも、それでは1円も時価があがらないので、自分の価値を上げる取り組みもはじめよう。

ただし。この精神論の効き目は長くて2日だ。
3日目には30年構築され続けた母とあなたのハードメンヘラ服従世界がまた復活。あなたはその狭い世界のなかで、甘えや怒り、悲しみ悔しさ恥ずかしさ、全部母にぶつけるだろう。
そして母はいつも通りそれを受け入れるだろう。そして昨日までの無意味な恨みサイクルがはじまる。

そうならないように必須なのは、やはり母から卒業すること。
結局この二人はお互い好き同士なので、絶縁までしなくていいから、一度離れてほしい。

わたしこれ本気で言ってるんだけど、3日以内に住宅情報サイトで一人暮らしをする部屋を見つけて。

具体的には、今日サイトでいい物件を見つけて不動産屋に電話、明日3つくらい内覧にいって3日目母に引越し費用全部貸してと言って(絶対貸してくれる)、無理やり一人暮らし始めてほしい。
なんならそのお金は返さなくてもいい。乗り物に乗れないなら、家の近所だってもちろんOK。
あなたが自分の人生急にはじめるという成長に母は感動してお金とか大丈夫だから!となると思う。仮にならなくても、2日でふりきろう。

速攻住める物件を探したあなたは来週には部屋でひとり。
一人暮らしという既成事実を作ってしまったので、既に理想の「ふつう」に近づいたあなたの時価はあがってるし、物理的距離は恨みサイクルの防波堤になる。

最初の夜、まるで命綱のないバンジー跳ぶような心細さを感じるかもしれない。でもそれこそが、自分の人生を自分の作品として生きるということ。
今まで彼氏役も友人役も上司役も全部担ってた母は、一旦あなたの人生から追い出して、バイトでもなんでもいいから自分で仕事を探して、そこで登場人物を集め、自分の人生を進めよう。

私の場合

でいまさらだけど、私こそかつて毒親問題に悩み、自分のコンプレックスはすべて母のせいだと思ってた一人だった。
考えや言葉が強い母なので、もろに影響を受けながら彼女の選んだレールに乗ったまま20歳になった私は、就職のときが最後のチャンスだと思って、嘘をついて逃げるように上京した。

はじめは物凄い心細さに襲われたけど、あの不安があったからこそ、友人や上司に心を開き、あたらしい人間関係を作っていけた。
今7年ぶりに母と一緒に暮らしていて、やはりかなり影響を受けている。
けれどもお互いにひとりの成人女性同士として付き合える部分が増えて「ああ卒業したな」という実感がある。

多分わたし、今回「自分を諦めないで」と「母から卒業して」しか言ってないと思うけど、なんと真剣に考えすぎて何人もの毒親卒業娘たちのケースをヒアリングし、意見を聞いた結果、全員その二点を実行して解決してた。
なので、とりあえず、私のことは信じられなくても、この原稿は信じて、30年使ってこなかった勇気を全部ここで自分に使って。

最後にほっこりする話をします。
最近3歳の息子が、親が帰国子女で英語がペラペラな同級生をみて、自分も英語が話したいといいだした。
わたしは帰国子女でもなく、英語もペラペラではないコンプレックスがあったが、もはや帰国子女だということにしてなんと毎朝息子と英語で話すようにしている。
iPhoneの翻訳機能と英単語付こども図鑑のおかげで気持ちだけ帰国子女になれた。
経歴なんて自分のなかではいくらでも詐称できる。乗り越えなくていいから、塗り替えていこう。
(いまこれ読んでるデバイスでこのまま住宅情報サイトを開いて)

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スイスイ・ハッピー・ホーム


毎朝息子と英語で話すようにしているおかげで、ウーパールーパーってえいごでなんていうの?にも答えれるくらいの帰国子女に仕上がっています。


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スイスイ

“メンヘラ”とは、もともと「心の病を患った人」を指すネットスラングです。でも今ではすっかりカジュアルに偏在しつつある“メンヘラ”。その樹海から脱け出したスイスイさんが、我が身を振り返りながら、今さら聞けないメンヘラの基礎の基礎、そして...もっと読む

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コメント

granat_san Q.​毒母のせいで、DNAレベルで自分が嫌いです…|スイスイ @suisuiayaka | ものすごく癒やされる回答。案外この前半分を言ってくれる人はいない。 約1時間前 replyretweetfavorite

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1_hikaru_1 Q.​毒母のせいで、DNAレベルで自分が嫌いです…|スイスイ @suisuiayaka | 約2時間前 replyretweetfavorite