[写真]国際空港(羽田)管制塔では飛行場管制が行われている。奥の旧管制塔では羽田、成田エリア統合した一体管制が行われている

 24日夜、札幌の航空管制で無線トラブルが起き、飛行機の発着が一時できなくなる事態になりました。このように航空管制は航空機の運航に不可欠なものです。

 いま航空管制能力のオーバーキャパシティが懸念されています。2016年までの15年間で日本の管制が取り扱う航空機の延べ数が約1.5倍と増加しているからです。そしてそれを担う管制官の育成も急がれています。航空ジャーナリストの藤石金彌氏に寄稿してもらいました。

【図】新千歳の「JAL機緊急脱出」に潜むさまざまな危険 重要なCAの役回り

■「便名」間違えでニアミス招く

 旅客機、軍用機、ヘリコプターがめまぐるしく飛び交う大空で、最先端のハイテクを駆使して的確な状況判断をし、飛行を安全・迅速にコントロールする航空管制官。一体どんな状況の下で、どんな仕事が行われているのだろうか。

[写真]航空管制官の管制卓

「……焼津近辺にて当社DC10とのニアミス発生致しました。大変危険な状況でした。高度差200フィート(60メートル)あったかなかったかくらいです……」

 2001年1月31日、静岡県焼津市上空で発生したボーイング747とDC10のニアミス(日本航空機駿河湾上空ニアミス事故)で、乗員・乗客計677人が生死の狭間から脱した直後のB-747のパイロットの交信だ。

「2人のパイロットと2人の管制官(訓練生と教官)の計4人に、全体の状況の把握がうまく行われていなかった。異常接近警報(CNF)が点灯して両方の機がすれ違うまでの約1分間に、管制官2人が便名を間違え、958便(DC10)のキャプテンへの衝突回避指示が2度伝わらず、管制官には両機にTCAS (空中衝突防止装置)が作動していることを知ることができなかった」(国土交通省・事故調査委員会の中間報告)

 音声で便名を間違えたヒューマンエラーで始まったこのトラブルは、音声伝達は「言い間違い」「聞き間違い」を起こしやすいことを示している。単位時間当たりの情報交換にも限度がある。

 管制官のミスは大事故と隣り合わせ。とても大きな責任を背負う重要な仕事だ。

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