精神科医のボードゲーム日記

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The Art of Design: interviews to game designers #15 – Vlaada Chvatil

Andrea "Liga" Ligabueが2011年12月6日に投稿した記事の翻訳


【なぜ訳そうと思ったか】
フラーダの代表作の「スルー・ザ・エイジズ/Through the Ages」の大ファンだからです。
本当に面白いゲームです。最近アプリ版が出ましたが、Board Game Arena:BGA(ボードゲームアリーナ)という無料サイトでも遊べます。
3人戦で3時間くらいかかりますし、気軽にお勧めしにくいゲームですが、
・重ゲー好きな方
・ウォーゲームに耐性のある方(お互い攻撃し合うプレイングが楽しめる方)
は、ぜひ機会があれば遊ばれてみてください。本当に楽しいゲームです。


【スルー・ザ・エイジズの大まかな説明】
イメージ 1
特徴的な外装

細かいルールは「皇帝の居城 スルーザエイジ 目次」も参考になる。
カード版Civilizationという感じ。
各プレイヤーが古代~中世~近現代にわたって自分の文明を育て、強化する。
マップをまったく用いず、300枚以上のカードと数種類のリソースだけを用いるのが特徴的。
リソース管理要素とウォーゲーム要素が強い。
食料:ワーカーの生産に必要
資源:生産したワーカーを自分の場のカード上に置く(建物を建設する)ために必要
科学点:獲得したカードを、自分の場に出す(発明する)ために必要
文化力:最終的な勝利点
軍事力:他国との植民地の競りや戦争で必要
これらの要素はうまく絡み合っていて、どれか1つでもおろそかにすると事故が起きてしまう。特化戦術はこのゲームでは許されていない。

長所:
ウォーゲームのわりにあまりギスギスしない。
攻めこまれても「まあ、この状況だとそらそうなるわな」と納得できるし、最終的に大差で負けたときでも「あそこであの植民地を取るために欲張りすぎたのがだめだったなあ」と、あまり頭に血が昇らず振り返ることができる。
もちろん勝つとすごく楽しい

短所:
ダウンタイム(自分以外のプレイヤーのプレイ時間)が長い。
とにかく長い。ネット戦で3人戦で3時間、4人戦で4時間強かかる。1人1時間かかっている。実際に卓でやるともっと時間がかかる。
ただ、ダウンタイムの間に思考が途切れてしまってもプレイに問題が生じにくいのが救い(ネット戦だと、別な作業や雑談をしながらやるのにちょうどよいゲーム性)。


【アート・オブ・デザインシリーズ】
翻訳記事に話が戻りますけれど、本記事のインタビュアーはリーガ・リガビューという方です。
彼の「アート・オブ・デザイン」というインタビューシリーズはすごく面白いです。
少しだけリーガ氏の他記事の紹介も行います(興味なければ飛ばしてください)

和訳記事一覧:
本ブログの和訳:
The Art of Design: Interviews to Game Designers #12 – Friedemann Friese

I was game の和訳:


EL-CO の和訳:


リーガ氏は独特の視点を持っていて、僕の大好きなインタビュアーです。外れがなく、訳していてすごく楽しいので優先して選んでいます。
ただ、かなりデザイナー志向の人間なので「テーマとかメカニクスがどうとか、興味ないんだよ!」という方にとっては、ちょっと退屈かもしれないですね。
この他にもリーガ氏は人気デザイナーのインタビューをいくつかやっており、それらの翻訳記事はまた遠くないうちに挙げます。


【Vlaada Chvatil の読み方について】
読めないですよね。一応ボドゲーマの記事では「ヴラーダ・フヴァチル」とされています。
BGGにPronunciation という記事があるくらい、英語圏にとっても難しいようです。
本記事ではリンク先の書き込みを基に「フラーダ・フヴァーティル」と表記しています。


前置きがやたら長くなりました!
本文に移りましょう!

インタビュアーの発言を黒字フラーダの発言を茶色で統一している
・意訳、改変行っている


ーーーー以下原文ーーーー

こんにちは、シリーズもとうとう第15回を迎えました。
シリーズが進行するにつれ、いろんなデザイナーの予備知識が増えてきた分、ここのところ私はどうしてもデザイナーへの要求が大きくなってしまうところがあります。

インタビューを終えて思うことですが、幸運なことに、フラーダは本当のゲーマーであり、ゲームデザイナーでした。私の要求や攻撃的な質問に、忍耐強く120%のパワーで応えてくれました。
「プレイヤーがゲームを好きになってくれて、楽しんでもらえる。これが自分の満足に一番つながる」と彼は言います。
フラーダのゲームをちょっとやったことがある人ならわかるかもしれませんが、彼の作風はドイツゲームのそれとは一線を画しています。実際、ドイツの作家でなく、彼はチェコのデザイナーです。
「僕にとって何より優先すべきなのはテーマだ。ルールやその他のメカニクスは二の次で、テーマを決めたあとに、できるだけフィットするものを選んでいる。だから、どうしてもテーマに沿わせるために、ルールやプレイヤーのアクションが煩雑になってしまうことはあるね」

訳注:テーマとメカニクス、ユーロゲームとアメリカゲーム
ユーロゲーム:メカニクス優先
アメリトラッシュゲーム:テーマ優先
→フラーダはチェコのデザイナーだが、設計思想はアメリトラッシュ寄り

そうはいうものの、Vlaadaの作品は傑作が多いです。
・コードネーム
・スルーザエイジズ
・王への請願
どれも名作揃いです。
最後の方には「僕はアーティストというよりは、ギーク(オタク)だろうね笑」とも言っています。
ちょっと長いインタビューですが、最後まで読んでもらえたら幸いです!
さっそく行きましょう!

[Liga]
こんにちはVlaada、インタビューを受けてくださって、感謝しています。
 Emiliano Sciarraが「L'Arte del Gioco」(The Art of Game)という本に書いたように、ゲームをデザインすることは、著作や映画製作に負けず劣らないアートの一形態だと私は考えています。この一連のインタビューの狙いは、各デザイナーの制作背景・設計思想から、一種の個人的なスタイルやサインを見つけようとすることにあります。

デビュー作の1997年のArena:morituri te salutantに始まり、キャリア全体で約20作のゲームをデザインしています。最近のゲームはヒット続きでよく知られていますし、特に「スルー・ザ・エイジズ」はメガヒットを飛ばしました。発売後数年経った今でもBGGランキングのTOP10圏内を固く守っています。(2017/11現在第2位)
①スルー・ザ・エイジズ以外の作品で特に誇りに思っているものはありますか?

 こちらこそよろしくお願いします。
最初の質問だけど、そうだなあ、「僕が自分の作品についてどう思うか」というのは、あまり意味がない問いだなあ、って思うんだよね。
それよりも、
・作品がどれくらい良いものか
・作品をプレイヤーの皆さんが、どれだけ好いてくれているか、楽しんでくれているか
の方が、僕にとっては大事かな。
僕のゲームが大好きだ、と言ってくれる人と会ったり、それを記事で読んだりすると、僕はいつも本当に嬉しいんだ。プレイヤーに楽しんでもらえることの方が、客観的なゲームの作りの良さよりも僕にとっては大事だよ。実際「煩雑さが目立ったり、ゲーム性としていくらか隙はあるものの、全体としては高く評価できる」というのは僕のゲームにはちょくちょく言われることだしね。
あとね、かなり昔の、ほとんどの人が忘れてしまったような古いゲームを、お気に入りだよ、と言ってくれる人がいると、本当に元気をもらえるね

1個のゲームに絞って良さをプレゼンして、というのは、ちょっと良くない質問でしたね。
まあ、やっぱり「フラーダ=スルーザエイジズの作者」として認識している読者が多いでしょう。この怪物的ゲームはBGGランキングで上位を独占し続けていますし、国際ゲーム賞も獲りました。
次の質問です。
②スルー・ザ・エイジズは、あなたのキャリアにとってやはり重要なものでしたか?


うーんと、そうだね。もちろん、Agesは僕にとってもチェコ・ゲーム・エディション(Czech Games Edition:以下CGE)にとっても非常に重要だった。
「スルー・ザ・エイジズ、ヤバい、面白い」という評価も有難かったけれど、それよりも「こんな面白いゲームを、ドイツの隣のチェコっていう小国で作ってるらしいぞ」と世界に知ってもらえたことが、大きな成功だったと考えている。 スルー・ザ・エイジズを出版したメンバーでCGEが結成された。「こういうことを仕事にして生きていきたいんだ」と僕たち全員が気づいたから、CGEを創設したんだ。
実は「Graenaland」という同年に出版したゲームも、Agesの成功に一枚噛んでいる。
Graenalandは「無名なんだけど一部熱狂的なファンがいる」という、そういう類のゲームだった。そのうちの一人が、幸運なことに当時Boardgamenewsの責任者であったRick Thornquistだったんだ。
リックがGraenalandとデザイナーの僕についての非常に肯定的なプレビューを書いてくれたので、エッセンの当日もうちのブースには関心が集まった。その前評判が、それがスルーザエイジズのヒットの起爆剤になったんだ。もしもそういう偶然や巡り合わせがなかったとしたら、スルー・ザ・エイジズは、「ただの無名出版社が出した意欲作、煩雑な重ゲーだが隠れた佳作」くらいの評価に終わっていたかもしれない。

Graenalandの話、非常に興味深いです。
「スルーザエイジズの驚異的な成功の陰に埋もれてしまった名作」といったところなのでしょうか。
まあ、これについては後で話しましょう。続けてください。

はい。
・スルー・ザ・エイジズとGraenalandを僕たちが発表した
・制作メンバーでCGEを結成した
まで話したね。
その後、CGEとしての処女作のGalaxy Truckerがある。これもかなり成功して、拡張が1つ出るくらいヒットした。このGalaxy Truckerを成功させるのは、CGEにとっての急務だった。スルーザエイジズの一発屋で終わらないために、失敗してはならないプロジェクトだったんだ。

その後の作品の、Space AlertGolden Geek Award for Most Innovative Board Game(もっともイノベーティブなゲームに送られる、ゲームギーク賞金賞)を受賞した。これは僕にとって驚きだった。
僕はギークのためにゲームを作っている人間だ。あまり一般受けはしないし、広く評価を受けることはなかったけれど、それでいいと思っていた。好きなゲームを作って、それを楽しんでくれる少数の人間がいることに、十分満足していた。
それがまさかSpiel des Jahres(ドイツゲーム大賞)の審査員から賞を得るなんて!想像もできないことだった。すごく嬉しかったよ。
SdJの審査員の方々の遊び心と、常識の枠の外で作品を評価する姿勢は称賛に値するよ。

訳注:各ゲームの大まかな説明
ギャラクシー・トラッカー/Galaxy Truckerについて
→面白そうですね。戦略性はあるが、時間制限があって盛り上がりそう。

スペースアラート/Space Alertについて
→読みやすいレビューです。「宇宙から生きて生還すること」というテーマはギャラクシートラッカーと同じで、協力型ゲームにした、という感じでしょうか。

素晴らしいお話でした。
次に移ります。
Vlaadaのゲームはどれもテーマ性が極めて高いです。
③テーマはデザインプロセスでどのくらい重要ですか?
テーマありきでデザインを始めるか、あるいはメカニクスから始めるか、どちらの方が慣れていますか?

その二つだとテーマだなあ。テーマは僕にとってすごく大事だね。
ときどきメカニクスやゲームフォーマットを一番最初に決めるときもあるけれど、だいたいいつもテーマをまず最初に固めるね。そして、一度決めたテーマは開発の途中では絶対に変えない。ここがブレてはダメだから。

ゲームデザインはさ、しょっちゅう分かれ道があるんだよ。
試せるメカニクスはもう、無限といっていいくらいにある。その中から選んで、決めていかなくてはならない。
これは大変な作業なんだ。気を抜くと、改良しているつもりがどんどんブレていってしまって、何を作っているかわからなくなってしまう。
だから、「ここは変えない」という軸になるポイントをいくつか決めておかなくてはならないんだ。デザイナーごとにその固定点は異なると思うんだけど、僕の場合は、テーマだ。テーマをブレずに固定して、それにフィットするものを探す。この組み上げ方が僕は得意なんだ。

ユーロゲームに慣れている人は、だいたいこう言う。
「テーマなんて、ゲームの形が全部できた最終段階で、どうとでも変えられるよ」って。
僕のゲームの場合は、そういうやり方はできないんだ。そんなことをしたら全部ダメになってしまう。
「誰にもまだ表現されていない魅力的なテーマ」が僕にとってのデザインの屋台骨なんだ。この芯を抜きにゲームを作ろうとすると、細かい仕様やルールが全部中空に浮かんで無に帰してしまう。「テーマが魅力的だから。テーマを再現するためには必要だから」という言い訳があるからこそ、多少煩雑なルールや設定も許容されるんだ。
たとえばもしだけど、設計の最初の段階で、メカニクスは同じだけど別のテーマの原案を2つ渡されたら、だいぶ別な2つのゲームを作り上げると思うよ。


あなたの設計思想の核心に触れるお話だったと思います。

・ゲームデザインは分かれ道の連続
・試せるメカニクスは無限
・その中から選ぶために、「ここは変えない」という軸になるポイントを定める必要がある
・Vlaadaの場合は、それはテーマ
・テーマを固定して、それにフィットするものを探す、という方法がVlaadaは得意

これはフラーダのスタイルをきれいにサマライズしていると思います。
あなたはテレビゲームの会社に勤めていた、と聞きました。
④PCゲームやテレビゲームの経験が、ゲームデザインや作品にどれくらい影響していると思いますか?

たぶん、みんな思ってるんじゃないかな。「フラーダはテレビゲームの会社にいたからこそ、こういう風に執拗にテーマにこだわったり、複雑なゲームを作ろうとしちゃうんだろう」って。
そう考えてない?

僕はね、それは逆だと思うんだよね。
テレビゲーム産業で働く前から、超複雑だったりテーマ性が激しいゲームを、友だちと一緒に作っていたんだよ。そういう背景が元々あって「ああ、PCというプラットフォームは自分の設計したいゲームを実現するのに最適だな」と感じたからテレビゲームの世界に入った。原因と結果が逆なんだね。
ただ、僕のゲームについての考えや好みについてはテレビゲーム業界からの影響はないけれど、ことゲームの設計手順については、テレビゲームから大きな影響を受けているね。

大規模のテレビゲームを1本制作するのって、ボードゲームとかと比にならないくらいコストがかかるんだ。
非常に大がかりで手間とお金と時間がかかる。
だから、ゲーム制作の場合は、まず企画段階で制作するためのツールやソフトに投資することで、できるだけ手間を省こうとする。苦労は最初にやっておくんだ。

これと同じことを、スルー・ザ・エイジズのような大規模なボードゲームの開発時でもやっている。
(ときどき、このアプローチで本当に良いのか、と迷うときもあるけど)

詳しく説明すると、ボードゲームの開発の最初の方で、まず僕は開発のシステムを組み上げるんだ。コンピュータ上でのゲームの試作品と、自動データ処理のプログラムをここで作る。そうすると後の仕事がぐっと楽になるからね。
ゲームデザインはコンピュータ上で進んでいく。
全データ(カードのテキストや、コストや全部)はエクセルのテーブルで管理される。エクセル上のデータは自動でヴァーチャル上のゲームの試作品に利用できるようにしてある。
スクリーン上で、何度も何度もそれをテストプレイする。ルールを変えて、カードのバランスを取って、視認性を良くしたりする。
ある程度形になって、実際に印刷するときは結構嬉しいんだよ。

ただデザインの終盤の印刷したあとでも、データ管理はずっとコンピュータ上で行う。それは開発の最初から最後まで一貫している。
このヴァーチャル試作品は、オンラインゲームに落とし込む際に、インターネット上でのテストプレイヤーにバランス調整を依頼するときに利用したりもする。
まあ、こういうところは他のゲームデザイナーとちょっと違うかもしれないね。
「前職のテレビゲーム会社での経験が活きている」と捉えられても、不思議ではないと思う。


良い話でした。Vlaadaに限らず多くのデザイナーは設計段階でPCのシミュレーションを利用していると聞きます。
Vassal Engineはデザイナーやテスターの手によって本当に素晴らしいツールになっています。

訳注:Vassal Engine について
を参照ください。8年前の情報ですし、今どれだけ役に立つのかはちょっとわからないですが…
私的メモ:「タンジブル・ユーザーインターフェース」と組み合わせたら、遠隔でコマを触ってのボドゲができるようになりそう

次の質問です。
⑤テレビゲームのデザインとボードゲームのデザインの間の主な違いは何ですか?

デザインの持つ役割の違いは大きいね。
PCゲームでは、デザインよりも、視覚的な映りを良くすること、マーケティングを大々的に行うこと、に予算の大半が投じられる。ここの部分の予算のかかり方が、PCゲームとボードゲームでは段違いなんだ。コストを投資しなきゃいけない分、投資した資金はしっかり回収する必要がでてくる。PCゲームのユーザー人口が多いのは、人気だからっていうのもあるかもしれないけど、それよりはそもそも多くの人口をターゲットにする必要があるからなんだ。必要に迫られて間口を広げているんだ。
僕たちテレビゲームの作り手も、ほんとは、ギークのためだけにあるような「自分がただ作りたいだけのゲーム」っていうようなアイディアも持っている。でもそれを自由に形にするのは、コンピュータゲームやテレビゲームでは難しい。確実にペイするという根拠を会議で示さなくてはいけないからだ。
テレビゲームのデザインに求められるのは、少し悪い言い方をするなら、いかにプレイヤーをだまして楽しませるか、売れるものにするかであって、ゲームのメカニクスの斬新さではない。

テレビゲームのデザインでは、リスクを取って新しい課題にチャレンジすることよりも、しっかりとした経験に基づいた外さないデザインをやる方が評価されるんだ

訳注:
先日のワールド・ビジネス・サテライトでのボードゲーム特集での、伊藤深氏(BakaFire氏)へのインタビューでも、同じ様なコメントがありましたね。
「ボードゲームはデジタルゲームに比べ、短時間でアイディアを形にできる」と。

そしてもう1つの違いは、ささいなことだけど、僕にとっては重要なことだ。ボードゲームのターゲットユーザーが、僕は本当に好きなんだよ。
ボードゲームのコンベンションは、テレビゲームのコンベンションよりも優しい雰囲気がある
BGGのウェブサイト上でのフォーラムには、ボードゲームを愛し理解するファンがたくさんいる。このような暖かい雰囲気は、確かにテレビゲームのフォーラムでは一般的ではないんだ。

訳注:日本のテレビゲームに関する掲示板やスレッドでも、アンチや対立煽りが多いイメージがありますね。逆にボドゲやTRPGのスレッドが和やかなのかもちょっとよく知らないですが…
あと、ボドゲデザイナーとテレビゲームデザイナーのデザイナーズノートは毛色がだいぶ異なります。
任天堂の岩田社長とか野上氏(スプラトゥーン)増田氏(ポケモン)桜井氏(スマブラ)のコンセプトノートやマネジメント戦略の話も僕は大好きなんですが、ボードゲームデザイナーよりはどうしても商業的な面が強いですね。「いかにしてとっつきやすく、触って面白く見せるか」を第一に考えています。それは必ずしも悪いことではないけれど。

次の質問に移ります。
あなたはゲームを共同制作することがあまりないようです。
⑥チームワークについてどう思いますか?
あなたの作品には個人製作が多いのはどうしてだと思いますか?

チームワーク…テレビゲームのころから僕に足りないものかもしれないね。
ぼっちには厳しい現実だね、というのは冗談で、僕はチームワーク自体は、大好きだよ。人と何かを作るのには興味はある。
ただ、残念ながら、僕の設計プロセスは共同設計にはあまり適していないんだ。
だって、僕はテーブルに座って「じゃあ今から、ゲーム開発を始めよう」とか言って始めるタイプじゃないからだ。
普段から、ずーっとデザインについて考えている。最初の原案に取り掛かる前に、ずーっと、長いあいだ、何週間、何か月、ときには何年もアイディアを頭の中で温めている。以下のようなことが頭の中を巡っている。

・テーマ
・テーマと合うメカニクスについて
・テーマ/メカニクスの組み合わせと相性
・実際のゲームの流れ
・プレイヤーがゲーム中何を考え、どのような体験をするか

こういったことを、実際に形にする前に長いあいだ考えている。かなり長い期間温めているアイディアの卵、形にならない下書きが、いくつも同時並行で存在するんだ。
旅行のとき、シャワー、買い物のとき、寝る前に、そういった頭の中の卵のことをずーっと考えて、手をかけて育てている。このプロセスがゲームデザインにおいて、本当に大事なんだけれど、この部分は他人と共有することは、どうやったってできない僕の頭の中身を共有することはできないからね。
だから個人製作がどうしても多くなる。
でも「絶対共同制作したくない」ってわけじゃないよ。チームでの作品はいつか作れたらいいな、と今も思っている。
まあ、同じ24時間一緒にいて同じ考えを共有するために、犯罪か何かやって収容所に押し込まれる、ということをせずに共同作業はしたいけどね笑
訳注:ちょっとチェコジョークはレベル高いですね、ここ笑うところなんでしょうかね‥‥

あと、僕は原作者をやっているだけじゃなくて、最後まで制作に携わることができている。これもCGEの一員だからやれることで、嬉しく思っているよ。
Petr、Filip、および他のCGEのメンバーと一緒に、膨大な時間をかけて編集作業をやっている。
・あらゆるルールの細部を詰める
・すべての能力や強さのバランスを取る
・ゲームボード全体の見せ方を洗練させる
・そして最終的な形に落とし込む
ここを真剣にやると、すごく時間と手間がかかるんだけど、絶対に妥協すべきではないんだ。他のパブリッシャーから出た新作を見ていると、ここの部分の詰めが甘い惜しい作品は、けっこう多い。「もっと詰めれば絶対良いものになるのに」って。そういう他社の作品を見るたびに、CGEの人的リソースの豊かさに感謝するね。

原案から出版までの話、すごく面白かったです。次は関連した質問です。
⑦テストプレイとゲームの微調整にはどれくらいの時間がかかりますか?

 最初にプレイできる形に原案を作ってから、出版段階に行くまでは、 9ヶ月から18ヶ月だね。
今思い返すと、もっと時間の短縮ができたかも、と思わないでもないけれど、やっぱりこれくらいかけるべきだよ。良いゲームを作るには時間が必要だ。

 本当に大事な考えだと思います。
私は多くのデザイナーや企業が「エッセン・リリース・シンドローム」に悩まされていると思っています。
つまり「エッセン~翌年のエッセン この間の1年でゲームを制作しなければならない!」と強迫観念に駆られる症候群です。

訳注:日本でもゲムマ症候群が冬場に流行してそうですね…


長くなったのでいったんここで切ります。

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「スルー・ジ・エイジズ」な。中学生レベルの間違いを…

2017/11/26(日) 午後 6:06 [ fmn ] 返信する

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