新幹線のキセル乗車を手助けしたなどとして、警視庁保安課は24日までに、電子計算機使用詐欺の疑いで住所不定無職の山本孝太郎容疑者(35)を、建造物侵入の疑いで東京都東久留米市の私立大3年の男子学生(22)を逮捕した。逮捕は22日。2人は、アイドルグループのイベントなどで知り合ったファン仲間が上京する際、東京駅構内で入場券を渡す「迎え」と呼ばれる行為を繰り返していたとみられる。

 保安課によると、山本容疑者は9月11日、広島駅から新幹線に乗車した長野県上田市の会社員の男(22)ら2人に、東京駅で同駅の入場券を渡して改札を抜けさせ、運賃1万8040円の支払いを免れさせた疑いがある。「声優アイドルの追っかけ仲間の交通費を浮かせるためにやった」と容疑を認めている。

 一方、男子学生は9月17日、岡山駅から新幹線に乗車した岡山県津山市の会社員の男(26)に東京駅の入場券を渡し、運賃の支払いを免れさせる目的で、駅構内に不正に立ち入った疑いで逮捕された。同駅で入場券2枚を改札に通そうとした際、駅員が気付き、110番した。

 男子学生は「1回あたり2000~3000円の報酬で、150回くらいやった」と供述。さらに「ファンによるキセル乗車のネットワークは数百人に及ぶ。手助けする人物が福岡、大阪、名古屋などにもいる」と話しているという。東京地検は24日午後、男子学生を処分保留で釈放した。

 保安課によると、2人はそれぞれ、アイドルグループ「HKT48」や声優らのファンで、イベントなどで知り合ったファン仲間のキセル乗車を助けるため、東京駅で入場券を渡す「迎え」や、その隠語である「MK」と呼ばれる行為を繰り返していたとみられる。

 会員制交流サイト(SNS)を通じてファン同士で連絡を取り合っており、同課は全国のライブやイベント開催時に、同様の手口でキセル乗車が横行していたとみて調べている。

 2人の協力を得て運賃の支払いを免れていた会社員の男ら3人は、広島駅や岡山駅の改札を入場券で通り、新幹線の自由席を利用。車掌が検札のため車両に入ってきた際には、トイレに行くなどして逃れていたという。保安課は24日、鉄道営業法違反などの疑いで3人を書類送検した。

 ◆キセル乗車 鉄道などの運賃を免れようとする不正乗車の1つ。火皿・雁首(がんくび)と吸い口のみが金属製で、中間は竹などの円柱状の筒になっている喫煙具「キセル」が語源。両端だけが金属(カネ)を使用しているところから、乗車駅と降車駅付近だけ入場券などで運賃(カネ)を払い、途中区間を無賃乗車する方法を指す隠語になった。