今日はクリスマス。夕方に駅中のフジヤでケーキを買おうと思ったが、なんだか物悲しい気分になったので、買わずに帰ってきた。ことさらにクリスマスを意識する必要なんてないのだ。それはわかっている。毎年そう思う。でもやはり意識してしまう。高島屋の前の街路樹に施されたイルミネーションがすこぶるきれいだった。こんな場所を恋人と歩けたらどんなにいいだろう。
春から社会人だ。うすうす覚悟はしていたが、やはり童貞のまま大学生活を終えることになりそうだ。就職できたのが唯一の救い。内定が決まった日を思い出す。部屋で小躍りしていたら、メリー(チワプー・牝)が僕の足にまとわりついて、ぴょんぴょん跳ねながら一緒に喜んでくれた。あの日が今年のピークかもしれない。
夜はメリーを膝に乗せながらガイアの夜明けの巨大ホームセンター特集をぼーっと見た。ケーキどころか酒すら飲まなかった。味気ないクリスマス。メリーだけが元気。
2013 12/25(水)
今日はクリスマス。帰宅後すぐにメリーをゲージから出した。実家ではほぼ放し飼いだったが、この春からゲージを使うようになった。引っ越して僕とふたりだけで住むようになったので、野放しにしておけなくなったのだ。メリーはチワワとトイプードルのミックス犬だが、この犬種にしては異常なぐらいよく動く。とにかく落ち着きがない。誰もいない時に変なものを口に入れたらまずいし、過度に体力を消耗させるとかえってストレスになってしまう。だからかわいそうと思いつつも、ゲージを使っている。今はメリーも慣れてくれたようだ。
メリーを飼ってから今年で9年になる。気づけば、クリスマスは必ずこいつと過ごしている。うれしいやら悲しいやら。毎年思うのだが、メリーはクリスマスという日を把握しているような気がする。イブの夜辺りから普段よりもテンションが高くなり、やたらとちょっかいをかけてくる。あるいは孤独な僕に同情しているのだろうか。だとしたら情けない。メリーが無印のトートバッグで遊んでいたので、猪瀬の五千万円の鞄のパロディ動画を撮って妹に送った。妹はそれをネットにあげてツイッターで拡散した。
2014 12/25 (木)
今日はクリスマス。生まれて初めて恋人とクリスマスを過ごせるはずだった。でもその夢はあえなくつぶれた。前にも少し書いたが、先月末にいきなり別れを切り出されたのだ。何の兆候もなかった。というか、僕には気付くことができなかった。最初は冗談かと思ったが、彼女が泣き出したので、本気なのだと悟った。交際期間8ヶ月。初めての恋人だった。そして最後の恋人になると信じていた。何がいけなかったのか、明確な答えは分からない。それがいちばんつらいかもしれない。僕のどんな部分に幻滅したのか、ハッキリと伝えて欲しかった。どうせふるならもっと完膚なきまでに叩きのめして欲しかった。もし他に好きな人が出来たのだとしたら、正直に言って欲しかった。全てが謎であるがゆえに、全てを否定された気分だ。
ため息ばかりついていたら、メリーが僕の太ももを蹴った。結局は今年もこいつとクリスマスを過ごしている。
2015 12/25(金)
今日はクリスマス。でもそんなことどうでもいい。本当にもう限界だ。マジでつらい。部署が変わってから一気に老け込んだ気がする。友人からも心配される始末だ。とりあえず年が明けたら心療内科に行こう。不眠と急な動悸を何とかしたい。
結局、僕は開発の実務には向いていなかったのだ。誰が悪いわけでもない。僕に適性がなかっただけだ。能力が決定的に欠けていた。でもいまさら「やっぱり向いてませんでした」とも言えない。なかば志願するような形で今の部署についたのだ。もう戻れる場所もない。
やはり退職すべきだろうか。このままいけばいつかぶっこわれるという確信がある。今日は定時で上がって、現実逃避にスターウォーズを見に行ったが、予告で目眩がしてきて、汗が止まらなくなり、出てしまった。どうやら劇場という空間自体がダメになってしまったようだ。これはもう完全に病気だ。シャレにならない。
帰宅してメリーをゲージから出したら、ふいに涙が出てきた。こういう風に 咄嗟に泣いてしまう症状も、最近はよくある。メリーが僕の頬をペロペロとなめて、涙をぬぐってくれた。惨めなクリスマス。悲しいクリスマス。
2016 12/25(日)
今日はクリスマス。初めて恋人と過ごすことができた。考えてみたら、昨年は史上最低のクリスマスだった。彼女もいなかったし、仕事では限界まで追いつめられていた。あの状態からよくここまで持ち直したと思う。やはり思いきって会社を辞めたことが正解だった。
今の会社で働くようになって、以前の職場がいかに異常だったかを認識できた。あの当時はひたすら自分を責めていたが、今思えば、明らかにおかしな環境だった。でも過去を振り返っても暗くなるばかりなので、今はとにかく前だけを見ようと思う。
僕と彼女とメリーでクリスマスを祝った。メリーが彼女になついている様子を見るとうれしくなる。
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このブログは今年の3月まで続けていた。ほとんど誰も読んでいない、完全な自己満足の日記だった。よくもこんなものを5年も書いていたものだとあきれる。
もうすぐクリスマスということで、過去5年間の12月25日の日記を並べてみた。なぜこんなことをしたかというと、僕がクリスマスに必ずメリーと過ごしていたことを、記録として残しておきたかったからだ。
メリーはこの夏に天国へ旅立った。ある雷の日に、やたらと怯えて、僕の胸に抱かれながらぶるぶると震えだしたのだ。ずっと震えが止まらないので、タクシーを飛ばして病院に連れていったが、ダメだった。お医者さんいわく、老化でずいぶん心臓が弱くなっていたのだという。死因は心臓発作。雷の音が引き金になってしまったようだ。そんな馬鹿な話があるものかと思ったが、お医者さんがそういうのだから仕方ない。
こうして犬が死んだことについて書いたりすると、お涙頂戴のポエムだと思われてしまうだろうか。別にそれでもかまわないが、僕はそんなつもりは微塵もないのだ。僕がここに書いたのは、自慢話だ。とにかくメリーのことを自慢したくて書いた。ノロケである。
僕は途方もない幸せものだった。今、日記を読み返すと、すべての文章から幸せがほとばしっている。恋人にふられたとか、仕事がつらいとか、色々書いていたが、それは本題ではなかった。僕はひたすら、メリーと共に在ることの幸せについて書いていたのだ。当時は自分でもそのことに気付いていなかったが、今はハッキリとわかる。
メリーは僕が14才の年の冬に、クリスマスプレゼントとして我が家にやってきた。だからメリーと名付けたのだった。長く一緒にいるうちに、そういうことも忘れかけていた。メリー、12/23にお参りに行きます。お参りというか、その日に一緒にクリスマスを祝おうぜ!