たとえば、体重が増えていてみっともないので、ダイエットしたいのだけれども、なかなかうまくいかない、という状況があったとしましょう。
このとき、どんな問題解決の方法があるでしょうか。
すぐに思いつくのは、「うまくいくダイエット法を知ること」でしょう。でも、本当にそれだけが問題解決の方法なのかな、ということを教えてくれるのが読書猿さんの『問題解決大全』です。
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技法1 「100年ルール」の実践
「これは100年後にも重要なことか?」
いいえ、違いますね。
というか、「体重が増えていてみっともない」という前提が、必ずしも正しいとは言えないでしょう。文化圏によっては多少恰幅がよい方が好ましく思われることもあるかもしれません。極端なことを言えば、そういう場所に引っ越せば、ダイエットしたいという欲求も消え去ります。
これにて問題解決。
というのは、いかにもごまかしというか言葉遊び(認識遊び)のように思われるかもしれません。しかし、認識によって「問題」が消え去る(≒問題でなくなる)ことはたくさんあります。それはつまり、逆向きにみれば、認識によって問題が生まれる、ということも意味しています。
状況をいかに捉えるか。実は、それが「問題解決」において重要となります。
技法9 「文献調査」の実施
それでもなお、体重を減らしたいとしましょう。
その際、次のステップは体重を減らす方法を探すことになります。2017年の現代ならば、「ダイエット」というキーワードをGoogle先生に放り投げることになるでしょうか。
実際やってみると、0.39秒で約242,000,000件の検索結果が返ってきました。非常に有能ですが、少しばかり情報の量が多すぎますし、広告もたくさん目につきます。体系だってもいませんし、効果のほどもわかりません。せいぜいわかるのは、食事になんらかの制限をかけるか、あるいは効率の良い運動を行うべきだ、ということくらいです。
とは言え、〈食事〉と〈運動〉という新しいキーワードが得られました。少し発展させると、〈食事〉は、〈調理〉と〈食材〉に、〈運動〉は、〈体操作〉と〈負荷〉に分けられるかもしれません。あるいは、〈習慣〉というキーワードを付け加えてもよいでしょう。
それらのキーワードで情報を探してまだ納得できなければ、さらにそれぞれの〈キーワード〉を分けていくこともできます。いろいろ調べていくうちに、「人類のダイエットの歴史」とか「人間と運動の文明史」みたいなものに辿り着くかもしれませんが、気にしてはいけません。そういうところにも、「ダイエット法」のヒントが眠っている可能性はあります。
ポイントは、最初に思い浮かぶキーワードの調査だけで終わらせずに、得た知識によってさらに調査を深掘りしていく点です。それによって、目につきにくい(≒掘り出し物)の知識と遭遇できる可能性も高まりますし、得た知識のネットワークによって新しい考えが閃くこともあります。さらに、状況の捉え方が変わってしまうこともあるでしょう。
技法24 「セルフモニタリング」の実施
いくつか方法に目処が立ったら、あとはそれを実践していくわけですが、いきなりうまくいくことはなかなかありません。継続的に実施していく難しさもありますが、「何が効果的なのか」がわからない点も調整を難しくします。
そういうときは、とりあえず記録です。
最低限、毎日の体重は記録に残しましょう。それがあるだけでもかなり違います。できれば、食事や運動の記録も残せればGoodですが、あまり記録行為の負荷が高くなると続きませんので、段階的に進めると良いかもしれません。
とりあえず、記録を続けていると、どんなことをすれば体重が(実際に)増えるのか、あるいは減るのかがわかるようになってきます。それがわかれば方法の実施にも調整が利くようになります。自分にとって何が効果的なのかがわかるのです。
記録をつけて自分をモニタリングしていくと、たとえば、ストレスの多い会議がある日はたくさん食べてしまい、運動もサボり、体重が増える、ということがわかるかもしれません。そうしたときは、「いかにストレスを減らすのか」という別の問題が立ち上がります。それは、問題解決について一歩前進したことを意味します。
さいごに
『問題解決大全』には、全部で37もの技法が紹介されていますが、そのどれか一つを習得すればOKというものではありません。むしろ上記のように、問題解決の技法を「道具箱」のように揃えておき、それらを使い分けたり、組み合わせたりして、実際の問題に挑んでいくというのが、現実的なアプローチとなりそうです。
小刀だけで大木を切り落とすのはひどく面倒ですし、のこぎりで細工をするのはほとんど不可能でしょう。
複数の道具を持ち、それらを使えること。
うまく道具が使えるようになれば、切り落とした木から、新しい木槌を作ることも可能となります。そうして、さまざまな領域へと問題解決の可能性は広がっていきます。
課題や困難に直面して、いかんともしがたいと感じている人は、ぜひ『問題解決大全』で道具箱を整備してみてください。新しい道が見つかるかもしれません。
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大全本がまるでブームのように続いていますが、強く実感するのはネット時代だからこそ、こうした「まとめ」が価値を持つ、ということです。バラバラに分散した、基準が統一されていない情報を渡り歩くのって、かなり疲れるんですよね。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
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