入園式終えた夜に読み聞かせした『からすのぼうや』【幼稚園入園をめぐる家族の物語⑭】

ご訪問いただき、またいつもお読み下さりありがとうございます。

引き続き、園生活で、HSCのたけるだったからこそつまづいた出来事やその都度の対応、親子の気持ちの変化や成長を描いていきます。

今日は、入園式を終え、明日から初登園という節目の夜の、読み聞かせのお話しです。

 

初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→第一話  来年から幼稚園』

 

  HSC(Highly Sensitive Child)=人一倍敏感な子

“たける”のように、繊細さや感受性の豊かさ鋭さ、敏感さを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)=人一倍敏感な子と言います。

HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思案・行動することを好みます。これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。

また、HSCは些細な刺激を察知し、過剰に刺激を受けやすいせいもあって、家や慣れている人や場所では絶好調でも、新しい人や場所、人混みや騒がしい場所が極端に苦手なのです。

さらに他の子は問題なくできることを怖がったり、小さいことを気にしたりしがちですので、「内気」とか「引っ込み思案」とか「臆病」とか「神経質」などとネガティブな性格として捉えられ、「育てにくい子」として扱われてしまう傾向にあります。

これらはHSCの、微妙な刺激や変化を敏感に感知する繊細さ(先天的な気質)にあるのです。

5人に1人は、HSCに該当すると言われています。(*HSCはアメリカのエイレン・アーロン博士が提唱した概念です)

HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴

①刺激に対して敏感である。ちょっとした刺激でも感知してしまう。すぐにびっくりする。

②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒され、人より早く疲労を感じてしまう。新しいことや初対面の人、人の集まる場所や騒がしいところが苦手。誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にしたりするだけでつらい。慣れた環境や状況が変わるのを嫌がる。不快な状況や圧倒された状況にいると、冷静さを失いやすい。

③人の気持ちに寄り添い深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。

④自分と他人との間を隔てる「境界」がとても薄く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。

⑤直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。

⑥モラルや秩序を重視する。正義感が強い。不公平なことや、押しつけられることを嫌う。

⑦自分のペースで思案・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。

⑧静かに遊ぶことを好む。集団より一人や少人数を好む。1対1や少人数で話をするほうがラク。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。

⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、敏感な気質ゆえに求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかったりした場合に自信を失いやすい。

⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応)が出やすい。感受性が強すぎ、繊細すぎるために、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。

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入園式が終わった日の夜

「そろそろ寝ますか~。今日は何を読もうかな~」

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(そうだ、「からすの親子」のお話、今だったら興味持ってくれるかも)

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f:id:kokokaku:20171105140253j:plain「ねぇ、前にママがお話作ったの覚えてる?『からすの親子』の」

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f:id:kokokaku:20171105140253j:plain「ほら、隣の森でからすが子育てしてたでしょ」

f:id:kokokaku:20171105142349j:plain「うん。木から飛べなくてねぇ」

f:id:kokokaku:20171105140253j:plain「そうそう!たけるが小さい時ね。『からすの赤ちゃんえーんえーん』してるねって言って見てたもんね。それでママがお話つくったんだけど、あんまり覚えていないか」

 

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うちの横にある森では毎年春から初夏にかけてからすが子育てをするのが見えます。

子どもが巣から出られるようになったばかりの頃は、茂みで遊ぶ子どものからすのそばで、親のからすがカァカァカァカァ言っているのがうちの窓から見えるのです。

 

f:id:kokokaku:20171105140253j:plain「たけるが3歳くらいだったの頃に書いたお話しだけど、今日、それにしてみない?」

f:id:kokokaku:20171104145658j:plain「うん、読んで」

 

『からすのぼうや』

「じゃあ、読むね」

 

『からすの ぼうや』

 

からすの ふうふに
あかちゃんが いちわ たんじょうしました。
かわいい かわいい おとこのこです。

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ぼうやはとってもさみしがりやであまえんぼ。

からすの おとうさんと おかあさんはそんなぼうやをたいせつにていねいに そだてました。

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ぼうやが さみしがるので いつも おかあさんが そばに います。
おとうさんは しんせんな えさを せっせと はこんできてくれます。
それに おとうさんは、あらしやきけんからかぞくを ゆうかんに まもります。

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もりには そろそろ すだちの きせつが ちかづいてきました。
あっちでも こっちでも こどもたちが はばたきの れんしゅうを しています。
いちわ また いちわと こどもたちは すから とびたちます。

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とびたっていない こどもは とうとう ぼうやだけに なりました。

「ねえ ぼうや ぼうやも そろそろ とびたってみないかしら」
「いやだよ おかあさん ぼくは このままで いいよ」
「どうしてかしら」
「ぼくは ずっと おかあさんと いっしょに いたいもの」
「あらまぁ」
「だいいち どうして とびたたなくちゃ いけないの?」

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こまったおかあさんは、おとうさんとおはなししました


「おとうさん ぼうやは とびたちたくないというの」

「そうかいうかい、 それは どうしてだい?」

「おかあさんと いっしょに いたいのですって」

「それは わかるような き がするなぁ」

「 わたしは どうだったかしら・・・ おとうさんは どうでしたか?こどものころ」

「うん  よく おぼえて いないけれど おそろしくて ふあんだったと おもうなぁ」

「そうですよねぇ。どうして とびたたないと いけないのかしらね・・・」

おかあさんは おとうさんと たくさん おはなししてかんがえました。

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ある よる おかあさんは ぼうやに いいました。


「ぼうや、おかあさんね おもいだしたのよ。 ぼうやと おなじ きもちだったこと」

「おとうさんも おなじだったよ」

「おとうさん おかあさんが こどもだった とき?」

「そうよ。 おそろしくて ふあんでね、 ずっと おかあさんと いっしょに いたいと おもったわ」

「ふぅん」

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「 ねぇ ぼうや、 みてごらん ぼうやの つばさは こんなにおおきくなって、はねもこんなに たくさんに なったでしょう。
これは、 もう あなたは とびたっても だいじょうぶですよ っていう
しょうこなんですよ。

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これまでは この す のなかと おとうさん おかあさんだけがぼうやのせかいだったわ。
つぎは ぼうやの あたらしい せかいを ひろげるときが やってきたのじゃないかしら。
ぼうやの め には あたらしい せかいが どんなふうに みえるのかおとうさんとおかあさんに はなして きかせてほしいと おもうの」

 

「いやだなぁ」

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「そうね しんぱいよね。 このまえぼうやはどうしてとびたたなくちゃいけないの?っていってたでしょ。おかあさんかんがえてみたのよ」

「うん、どうして?」

「おかあさんね、 はばたくことは よろこびじゃないかしら っておもったの。
ちょうせんする よろこび。
ふあんだけど、 えいっ! てゆうきが だせたとき、『あれ? できた! ぼくにはできた!』 って よろこびになるとおもうの。 ゆうきは じしんに かわる。
いままでは みえなかったものや しらなかったことが どんどん わかるようになる。
おとうさんや おかあさんの ほかの なかまとでも ふれあえることがわかる」

「ほんとうかな」

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「でも、おとうさんもおかあさんも、それは ゆっくりで いいとおもってるわ。 あなたから とびたちたい っていうきもちが わいてきたときで いいとおもう」

「うん おやすみ」

「おやすみなさい」

 

「ぼくは いったい なんのために はばたくのかな」

ぼうやは かんがえて みました。

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つぎのあさ ぼうやは もりの ようすを ながめてみました。

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こどもたちが おしゃべりしながら たのしそうに とびまわっています。

とおくには そらや うみが ひろがっています

「そらからは なにが みえるんだろう」

ぼうやは はばたきの れんしゅうを してみました。

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つぎに おそるおそる す から えだに でてみました。

だけど やっぱり こわいのです。どうしても こわいのです。

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ぼうやは おかあさんと おとうさんに いいました。

「やっぱり こわいんだ。 ぼくひとりじゃ だめなんだ」

すると おかあさんは いいました。

「わかったわ ぼうや。ちゃんと こわいって いってくれて よかった。
おかあさんね、 ぼうやが 『ぼく もう だいじょうぶだよ』
っていうまで ぼうやと いっしょに れんしゅう するわ」

おとうさんもいいました。

「おとうさんと おかあさんは おまえが たすけを もとめるときは
かならずまもる だいじょうぶだ」

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ぼうやは ほんとうに ほんとうに ほっとしました。

そして、それからなんにちも、おかあさんにたっぷり あまえました。

それから おはなしや はばたきのれんしゅうも たくさんしました。

 

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ぼうやはすこしおにいちゃんになりました。

あるあさ おきると、あおい そらが キラキラして みえます。


「ぼく なんだか いつもと ちがうな。 もう きっと だいじょうぶだ。

ぼくの なかに ゆうきが ある! ちょうせん できる!」

ぼうやは とびたとうと けっしん しました。

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ぼうやの ようすに きづいたのか、 いつのまにか、 こどもたちが あつまってきました。

「いっしょに はばたこう」 「あそぼうよ」 「あっちに いいところが あるんだ♪」

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ぼうやは なんだか うれしくなって もっとゆうきが わいてきました。

そして

「よし!」

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「 えいっ!」 パタパタパタパタ

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「できた!ぼくには できた!」

 

ぼうやは もう だいじょうぶです

おともだちと あそんだり 

じぶんで たべものを とったり

すきなところへいって

みたもの きいたもの あたらしい せかいのことを

きょうも おとうさん おかあさんに はなして きかせます。

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「おしまい」

 

読み終えた後、何も言わないたけるの頬は少し火照って見えました。

そして膨らませた小さな胸からふぅっと息が吐き出されるのがわかりました。

 

明日は初登園です。

 

 

次回につづく・・・

 (*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)

 (*次回第15話は『初登園』の予定です)

 

ー著書紹介ー

~幼かったあの日の私を抱きしめに行こう。

本当の私(ママ)になるために。~

というキャッチコピーの本、『ママ、怒らないで。』を出版しています。

ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病

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