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第十三話 未来への決意
「バカな……《菱毘眼》の力を……?」
『これは推測でしかありませんが、オリザスはかの《三大魔眼》と呼ばれる力を持っていると思われます』
聞き慣れない言葉に多くの者が眉を寄せる――が、説明をアヴォロスがしてくれる。
「《創剣の魔眼》、《菱毘眼》、そして――余の《黄泉の眼》を総称して《三大魔眼》と呼ぶのだ」
「! それを一人で扱えるってことか? その白髪の男は?」
「ペビンの見解通りならそうだろうな」
「……その力を使えるのは三人だけじゃないのか?」
日色の問いにアヴォロスが「うむ」と答えて、
「確かにこの世に存在する魔眼と呼ばれる代物は多かれ少なかれ存在する。しかし《三大魔眼》を冠する瞳を宿すのは、余とアクウィナス、そしてテリトリアルだけであった。これは魂に受け継がれるようなもの。つまりはユニーク魔法と同等だ。故に二つと存在せぬはずなのだが……」
「……恐らく、だが」
そうして語り出したのはシリウスだ。
「オリザスは元々この世界の住人ではない。つまりその瞳を持つわけがないのだ。だとしたら一つ。――――《三大魔眼》を造り出したのだろう」
「バカな! そのようなことは有り得ぬ! ユニーク魔法を創り出すような所業だぞ!」
アヴォロスが彼の考えを否定するが、シリウスは至って平然とした様子で言う。
「それがオリザスという男の才だ」
「!? し、しかしどのようにして……?」
「我々には《クドラ》という力があるのは知っているな? ペビンには《強奪のクドラ》、私には《活性のクドラ》があるように、オリザスにもまた存在している」
「なるほどな。一体どんな《クドラ》なんだ?」
日色の問いにシリウスが若干目を細めつつ言葉を発す。
「――――《叡智のクドラ》。オリザスがその力を使えば、不明なことなど一切存在しないだろう」
また厄介そうな力を持った敵が現れたものだ。
「あらゆる観点から物事を考察し、物事の道理を見極め、真理を導き出す力だ。その《三大魔眼》という力もまた、《叡智のクドラ》にて解析され、同様の代物を造るに至ったのだろうな」
「それは……とんでもない力だな」
サタンゾアが恐れるのも分かる。その気になれば、ユニーク魔法と同格の魔眼でさえ生み出せるというのだから。
「しかし、何故奴の傍に『クピドゥス族』が?」
尋ねたのはアヴォロスだ。彼の質問の答えも確かに気になる。
「『クピドゥス族』を『神族』が生み出したのは知っているだろう? 実際に造り出したのはサタンゾアやハーブリードだったが、元々の創造製法を編み出したのはオリザスだ。故に奴が傍に『クピドゥス族』を置いているのは別段不思議なことではない」
つまり絶滅したはずの『クピドゥス族』を、再び創造し傍に控えさせている可能性が高いということだ。
(まさか命まで創り出せるなんてな。しかも一人で)
まるで神の所業である。
「いろいろ奴のことは分かって来たが、やはり放置はできないことは確かだ。もしかしたら今も兵器を開発しようとしているかもしれないからな」
日色は皆の前でオリザスに対して危険性を口にする。
「なら早々に再調査に向かうべきだな。ヒイロよ、余はもう行く」
「ああ、頼んだぞアヴォロス」
「フッ、貴様に言われるまでもない。この世界の安全は余が望むところだからな」
そう言うと、彼は日色にペビンからの紙を託して部屋から出て行く。
「ちょっと待てアヴォロス、三枚目に書かれている地図を持っていかなくていいのか?」
「必要ない。もう頭に入っておる」
嫌味なことを。この短期間で、地図に書かれている情報をすべて暗記するとは、やはり曲がりなりにも王を背負っていた人物だけはある。
アヴォロスが出て行ったあと、日色はアクウィナスに声をかけた。
「アクウィナス、来てもらって悪いが……」
「いや、こちらも大した情報を伝えられずにすまないな。さっそく今の話を陛下に伝えておく」
彼もまたそれだけを言うと、その場から去っていこうとするが。
「まだ二枚目に書かれた内容を全部読んでないぞ?」
「いや、先程一瞬見えたのでな。もう憶えた」
またまた嫌味なことをパート2。
瞬間記憶能力まで見せつけてくるとは……。
日色もそこそこに暗記力に対して自信はあるが、アヴォロスやアクウィナスと比べると見劣りするだろう。
彼らの才能に少し嫉妬を覚えつつも、まだ確認していない二枚目に目を通していき、周りにいるリリィンたちにも聞こえるように声を出す。
『ヒイロくんに忠告しておきます。恐らく彼はこの世界に災いを招く存在でしょう。弟として僕自身が止めたかったのですが、もうヒイロくんたちにお任せするしかありません。ですが彼と戦う時は十二分に注意を払ってください。あのサタンゾアたちや僕にも悟られずに死を偽装し、隠れ住んでいたのです。虎視眈々と何かを成すために。ですから侮ってはいけません。あっさりと殺されてしまった僕が言える立場ではないですが。まあ、もし死んだらあの世で会いましょう。ヒイロくんとなら、あの世でも楽しめると思いますので。ではあしからず』
何だか最後まで本当に殺されたのかと思うほど明るい奴だった。
しかし彼の残した言葉は今後に十分役に立つ。
ペビンが死んでしまったのは日色にとってほんの少しだけだが物足りなさと寂寥感を覚えるが、それでも日色は……。
(コイツらを守らないといけないしな)
周りを見渡し、集まってくれたミュアたちを見る。
もしこの世界を破壊するような兵器を本当にオリザスが造っているとしたら、これは確実に止めなければならない。
(この世界はもうオレが住む世界だ。絶対に壊させたりはしない!)
次回更新は5日です。

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