その相手は狩野英孝と神木隆之介を足して2で割ったような好青年。(想像しづらいかもしれない)素直でいい人というのが見た目ですぐわかる人だ。
地元の宮城で就職した姉は趣味のサークルで旦那さんと出会い、健全なお付き合いを経て27歳の誕生日にプロポーズされ、結婚に至ったとのこと。
両家、私以外は全員宮城生まれ宮城在住。お手本にしたいような地元結婚だ。
そして2つ年齢差のある2人姉妹の私たちは、常に容姿、学歴、進路、運動能力を毎日毎日比べられてきた。
私は姉よりブスだ。
小学生の頃「お母さんとお父さんの顔のいいところ、全部お姉ちゃんに持っていかれちゃったねえ〜!」と知らないおばさんに言われたことは忘れられない。(今でもたまに思い出しては凹む。)
姉は、身内目線でも、本当に美しかった。そのくっきりとした二重に黒目がちな瞳、小さく卵型の顔と形のいい鼻に憧れては同じ顔に産んでくれなかった母親を恨んだ。
更に色白でツヤツヤの肌と一度も染めたことのない黒髪で田舎を歩くもんだから、小中ずっと学校のマドンナとして君臨していた。
私は、両親ともに二重なのになぜか一重で生まれ落ち、加えて、父親のエラ張り顔と母親の丸い鼻という悪いパーツだけがピンポイントで似てしまった。
漫画のようなことだけど、中学に入学した時は中3の男の先輩が私の顔を見に来た。
「あの美人の妹だから、さぞや美少女だろう……」という期待をもって私の顔を見た瞬間、なんとも言えない顔をする。
そのあと、含み笑いをしながら「妹はブスだな」と。こんなことが日常茶飯事だった。
そんなこんなで鮮やかに容姿コンプレックスを患った私は、死ぬほど姉を羨ましく思い、自分を呪った。
その上、姉は心から優しく性格が良いのでコンプレックスからどんどん性格が歪む一方の私には、何ひとつとして勝てることがなかった…。
どうしても姉に勝ちたい。親に、周りに自分の価値を認めさせたい。だから、容姿で勝てないならと容姿以外の全てで姉に勝つべく努力を重ねた。
まずは運動部のレギュラーを勝ち獲り、周りを見返したい一心で狂ったように勉強した結果高校は県内トップ・大学は国立へ無事いくことができた。
就職も、姉の年収の倍を超える東京のIT企業から内定をもらうことができた。
社会人になって3年の25歳。元はブスでも稼いだお金で美容にこだわれば、東京カレンダーに載ってる店に誘われるくらいの、そこそこの美人になることもできたと思う。
ロクに勉強もせず地元の私立大学に通い呑気な大学生活を過ごし、
田舎にあるテキトーな小売り企業の社員をしていた姉に、もはやかつての輝くような魅力は薄れていた。
半年前、結納式のタイミングで会った姉は相変わらず綺麗なことには綺麗なのだが、
服も髪もメイクも地元のイオンモールに馴染む田舎臭さがあり、体型は少しぽちゃっとしてきたように見えた。
そして今日、東京から実家へ向かう新幹線に乗るために家を出ようとすると、姉から突然電話がきた。
「今度遊びに行ったらおすすめのお店を教えてね」
結婚式直前の相当忙しい日にする電話とは思えないような他愛ない会話が続いたあと、自信のない声で
「ねえ、私明日で結婚するよ。一生宮城から離れられない。東京で楽しそうなあなたが羨ましいよ……」
弱々しく薄れていく姉の声を聞いて、完全にこの女に勝ったという気持ちが湧き上がるのと同時に
結婚式の前夜に妹に電話するようなつまらない女。こんな人間に長年コンプレックスを持ち続けてきた自分の人生をしょうもなく感じた。
結婚式を前にして、自分がこれから送るであろう田舎での平凡な生活を選んだことが不安になったのか何なのかはわからない。
ただ、今まで何をするにもチラついた姉の影を、この電話で完全に払拭できたと実感している。
ギャハハ
とても頑張ったのだと思う。自分も家族に似たようなことを言われ、勉強を頑張り都会に出て、いまはファッションを頑張って見返そうとしてる最中だから、励みになった。ありがとう...