(C)DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
2017年12月8日(金)より全国で公開される、ユダヤ系アメリカ人の歴史学者とホロコースト否定論者の歴史的裁判での闘いを描いた『否定と肯定』。この映画のおすすめポイントを、映画ライター中島もえが「4コマ漫画」で分かりやすくご紹介します。映画を英語で説明できるフレーズもありますよ。
『否定と肯定』のあらすじ
4コマ漫画でざっくり説明してみるとこんな感じ
1994年、アメリカ。ユダヤ系アメリカ人の歴史学者デボラ・E・リップシュタットが講演をしているところに、イギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィングが突如乗り込んできて、彼女に抗議します。「ナチス・ドイツによる大量虐殺はなかった」と主張するアーヴィングのことを、リップシュタットは自著で「ホロコースト否定論者」と呼び、非難していたのでした。
1996年2月、リップシュタットの元に、アーヴィングがイギリスで彼女を名誉毀損(きそん)で訴えたという知らせが届きます。リップシュタットは、アメリカとは異なるイギリスの司法制度の下であっても、敏腕弁護士たちと共にこれに応戦しようと決意します。そして2000年1月、多くのマスコミが注目する中、王立裁判所で歴史的な裁判が開廷したのでした……。
実際にあったホロコースト否定論者と歴史学者の闘いを描く法廷ドラマ。レイチェル・ワイズ、ティモシー・スポール、トム・ウィルキンソン、アンドリュー・スコットなど名優たちによって繰り広げられる、緊張感に満ちた法廷シーンが見どころです。
予告編はこちら!
映画の見どころと映画を語れる英語フレーズ
「ホロコースト否定論」って?
(C)DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
この映画に出てくる「ホロコースト否定論」というのは、「第2次世界大戦中にナチス・ドイツによって行われた大量殺戮(ホロコースト)はなかった」というものです。
今回リップシュタット(レイチェル・ワイズ)と闘ったアーヴィング(ティモシー・スポール)もホロコースト否定論者の1人です。彼は独自に歴史の研究をしている学者で、たくさんの資料の中から自分の主張に有利な部分だけを抜き取ったり、外国語の資料を自分に都合のいいように翻訳したりして「ホロコースト否定論」を裏付ける証拠にします。
裁判中、アーヴィングはリップシュタット側の弁護士からの攻撃をのらりくらりとかわし、自身の正しさを堂々と主張するのですが、このティモシー・スポールの演技はとても迫力があります。
この映画は、「ホロコースト」という歴史上誰もが無視できない事例を通して、真実を伝えることの難しさだけでなく、「人には事実でなくても自分が信じたいことを信じようとする傾向がある」「たとえねつ造された情報であっても、何らかの権威がある人物・有名人が主張した場合には世間がそれを信じてしまうこともある」という危険性も指摘しています。
ちなみにこの映画の原題は『DENIAL』で、意味は「拒絶」「否定」「否認」。denialには相手の主張に対する「否定」という意味はもちろん、受け入れがたい状況を認めようとしないというちょっと強めの「否認」の意味もあります。
使ってみて!この映画を語るときに使える英語フレーズ(1)
David Irving is a famous Holocaust denier.
デイヴィッド・アーヴィングはホロコーストの否定論者としてよく知られた人物だ。
アメリカとは違うイギリスの司法制度
(C)DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
この映画の舞台はイギリスの法廷です。イギリスの司法制度はアメリカのものとは異なり、名誉毀損訴訟では訴える原告側ではなく、訴えられた被告側が「原告の訴えは間違っている」と立証しなければならず、こうした制度の違いがアメリカ人であるリップシュタットを苦しめます。わざわざアメリカまで行ってリップシュタットに喧嘩を売り、彼女が不利になるイギリスの王立裁判所に提訴するというところにアーヴィングの悪賢さが出ています。
アーヴィングの「ホロコースト否定論」に、リップシュタットと彼女の弁護団はどうやって立ち向かうのか? アーヴィングとの法廷での攻防はとても見応えがあります。イギリスの名優たちによる迫真の演技に見入ってしまうところですが、字幕版を見る人は、このシーンの字幕は特にしっかり読むことをお勧めします。相手の発言のわずかな矛盾を突き、早口でまくし立てるので、気を抜くと何がどうなったのか分からなくなってしまいます!
そして、映画を見る前にイギリスの司法制度やこの裁判について少し勉強しておくと、より深く作品を理解できて楽しめると思います。
原作はこちら
Denial: Holocaust History on Trial
- 作者: Deborah E. Lipstadt
- 出版社/メーカー: Ecco
- 発売日: 2016/09/06
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日本語版はこちら
否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)
- 作者: デボラ・E リップシュタット 訳:山本やよい
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歴史ドラマが好きな人だけでなく、法廷ドラマが好きな人にもおすすめの作品です。
使ってみて!この映画を語るときに使える英語フレーズ(2)
To think that there are people who deny it.
それ(実際に起きたこと)を否定する人がいるなんて(驚きだ)。
次はどんな映画を見ようかな~♪
英語フレーズは「1000時間ヒアリングマラソン」の映画コーナーからの抜粋です。映画を英語音声で聞き取れるようになるための練習や、ネイティブスピーカー同士の映画を見た感想なども「1000時間ヒアリングマラソン」に教材として収録されているので、興味があるかたはぜひ!
映画情報
『否定と肯定』は2017年12月8日(金)から全国で公開です!
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1982年に開講して以来、アルク人気No.1の通信講座。生きた英語を聞き取り、多彩なトレーニングによって「本物の英語力」を身につける教材です。ネイティブスピーカーが使うリアルな会話やニュース英語、映画のセリフなどさまざまなジャンルの素材がたくさん収録されているだけでなく、トレーニングで力が付くようしっかり導き、細やかなカリキュラムに沿って学習を進めます。
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文・イラスト:中島もえ
イラストレーター・編集者・ライター。面白い映画を探して試写会を渡り歩く。映画鑑賞のほか、動物園や水族館、美術館めぐりが趣味。野菜作りも好きで、東京・三鷹の菜園インストラクターの資格を取得。Website、Instagram。
構成・編集:Natsue Tanaka(GOTCHA!エディター/ライター)