ミニ新幹線25年「フル規格」求める山形の今

地元で待望論加速「奥羽新幹線」の課題は

山形駅に停車する山形新幹線のE3系「つばさ」(筆者撮影)

北海道新幹線、北陸新幹線など「整備新幹線」が相次いで部分開業を迎える中、基本計画止まりの路線の着工を求める動きが活発化している。

四国新幹線の情勢については、この連載でもかつて取り上げた。一方では、「ミニ新幹線」の山形新幹線「つばさ」(東京―新庄間)が運行している山形県を中心に、全線フル規格の「奥羽新幹線」(福島市―秋田市)の実現、さらには「羽越新幹線」(富山市―青森市)の着工を求める運動が加速している。

筆者は9月、山形県庁の要請に応じ、奥羽新幹線の建設促進組織のセミナーで基調講演した。そして、これらの「ポスト整備新幹線」路線を検討する際に、どのような課題が存在するか、どのような世界観を持つ必要があるか、提起する機会を得た。

地元に建設を待望する人々がいる以上、筆者は「ポスト整備新幹線」路線の着工を否定する立場は採らない。しかし、調査・取材を通じて、開業済みの地域で続く模索や苦悩を目の当たりにしている経験上、建設を積極的に後押しすることにもためらいを感じる。着工を求める地域は、その準備をどう整えていくのか――。地元の現状を記しつつ、奥羽新幹線の課題と意義を考えてみた。

青森まで3時間なのに…

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「トップセールスで出かけた東京の大田市場で、若い人から、ビジネスで山形に行きたくないと言われてしまった。青森まで3時間で行けるのに、山形まで2時間40分もかかる、と。本当にショックを受けました」。9月20日、山形県新庄市で開かれた「最上地域奥羽新幹線整備実現同盟会」の設立総会で、吉村美栄子知事は力を込めた。

会場を埋めた1市4町3村、約240人の参加者がじっと聴き入る。東京からの時間距離は、山形市は今も青森市より近い。しかし、距離が倍もある本州の北端と、所要時間がさほど変わらない……釈然としない地元の思いが直に伝わってくる場面だった。名前が挙がった青森市から会場を訪れた筆者は、苦笑しながら、新幹線と「時間距離」、そして「心の距離」の関わりについて考え込んだ。

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  • NO NAMEc68b70dba623
    その“羽越・奥羽新幹線”とやらが延びてきても、少子高齢化の流れに歯止めをかけることにはならない。地域間競争にも不利を強いられ続けるだろう。
    そして平行在来線の運営とその負担は、間違いなく現在よりも格段に人口が減った子や孫の世代に降りかかるのだ。
    他地域に勝つのではなく、これ以上負け続けない算段をすべきだ。
    up19
    down1
    2017/11/25 06:39
  • NO NAMEc82d588dc99e
    もういい加減に新幹線建設を
    叫ぶのは、やめて欲しい。
    在来線廃止で困るのは,
    そこの住民であって
    フル規格で建設の土建屋、
    献金もらう政治屋らでは、
    ない。少子化で人口減の
    日本にフル規格で建設する必要性など全くない。需要予測大甘で建設した線路、国鉄時代の教訓を忘れたのか。
    up13
    down0
    2017/11/25 07:22
  • NO NAME053b4842a6f6
    その地元の連中。
    新幹線が来れば、高速道路が来れば自分たちは何もしなくても客が来てくれる幻想を未だに持っているんじゃ?
    ごちゃごちゃ書いてるけど、結局その勘違いが問題なのでは?
    up10
    down2
    2017/11/25 07:22
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