三菱マテリアルの竹内章社長は24日午後、都内で記者会見し、子会社2社による製品の品質データ改ざんについて「お客さまや株主をはじめ、多くの皆さまに多大なご迷惑をおかけすることとなり、深くおわび申し上げます」と謝罪した。
三菱マと連結子会社の三菱電線工業、三菱伸銅の3社は23日夕、検査記録データ書き換えなど不適切な行為により、顧客の規格値や社内仕様値を逸脱した製品を出荷したことが判明したと発表した。不適合品を出荷した可能性がある取引先は航空・宇宙、自動車関連など合わせて258社という。
三菱電線では2月に、三菱伸銅では10月にそれぞれ社内で問題を把握。親会社の三菱マには10月25日と同19日にそれぞれ報告していた。
さらに公表まで時間がかかった理由について竹内社長は「不適合品を納入したお客さまが判明し、お客さまの協力を得て安全確認を進める必要があると考えた」と説明。11月8日の決算発表時にも公表しなかったことについては、その時点では納入先の全てが判明していなかったとし、「お客さま全てが判明してから速やかに公表するのが適切だと考えた」と述べた。
三菱電線の村田博昭社長社長は2月の問題把握後も製品出荷を10月まで続けていたことについては「全容把握に時間がかかった」として「特定せずに公表するとさらなる混乱とご迷惑をおかけする」と話した。
不正が起きた背景に組織的な関与があったかどうかについて三菱マの竹内社長は、社外弁護士を交えた調査委員会が調査中だとして「現時点ではお答えできる段階ではない」と述べた。調査は三菱伸銅が年内に終える予定で、三菱電線は来年以降になる見通し。問題解決に向けて三菱マが親会社として指導、全面支援することが経営責任だとして、「再発防止策の実行にも全力を尽くしたい」と語った。
問われる企業統治
データ改ざんの対象製品は、三菱電線で主にゴム素材の油や水、空気の漏れ止め用シール材で、不適合品として出荷が確認されたのは9月末までの約2年半に約2.7億個、概算68億円。三菱伸銅では、車載部品向け黄銅条製品や電子・電気機器・その他工業用分野向け銅条製品で、10月17日までの1年間に879トン分、6.7億円が不適合品として出荷された可能性がある。
不適合品の出荷先は三菱電線が航空・宇宙分野など229社、三菱伸銅が車載向けや電子・電機関連など29社としている。また、子会社の三菱アルミニウムでも昨年11月に不適合製品の出荷があったことが判明。出荷先は16社で不適合品が売上高に占める割合は0.3%程度だという。問題製品の出荷を停止し、顧客先と安全確認を終えた。
日本の素材産業では、神戸製鋼所で10月上旬に製品のデータ改ざんが発覚、自動車業界では日産自動車やSUBARU(スバル)で無資格検査の問題も浮上している。日本メーカーの製品の安全性やコーポレートガバナンス(企業統治)が問われる中、また目に見えないところでこうした不祥事が起きていたことが新たに分かった。
米ボーイングなどで使用
2社とも法令違反や安全性に疑義が生じるような不適合は確認されていないとしているが、三菱マが主導的に指導・監督し、不適合品の特定や安全性の検証、顧客への報告などを進める。今回の問題が同社の業績に与える影響は現時点で不明とし、2018年3月期連結業績予想を見直す必要が生じた場合は公表する。
航空機に三菱電線製のシール材(Oリング)を使用している米ボーイングは、今回の問題に関して、同社の製品で最も優先するのは品質と安全性だとし、必要に応じ適時、適切な対応を取る考えであると電子メールで答えた。
世耕弘成経済産業相は24日午前の閣議後会見で「新たな不正事案が判明したことは極めて遺憾」と指摘。三菱マや子会社に対して、事実関係の究明や適切な顧客対応などを速やかに求めるよう担当部局から指示を出したとして、「公正な取引の基盤を揺るがす不正事案であり、顧客のみならず、社会全体からの信頼回復に向けて最大限の努力を求めたい」と述べた。