プロのイラストレーターに頼めば3万円の仕事を、一般の主婦が2000円でイラストの仕事を請けたことをNHKが「コストダウン」と紹介し、イラストレーター界隈が「価格破壊が起こるー!」「市場が崩壊するー!」「ダンピング(市場の健全な競争を阻害するほど不当に安い価格で商品を販売すること)だー!」と燃えている。
またコレだ。
『えんとつ町のプペル』を無料公開した時も、同じ議論が起こった。

無料公開された『えんとつ町のプペル』のヒットにより、無料公開に広告効果があることを知った出版社は、その後、さまざまな作品を無料公開したが、あの日あの時は、たしかに炎上した。 

この件については、『革命のファンファーレ』にも詳しく書いたが、
「無料にするとクリエイターが食いっぱぐれる!」
「無料は良くない!サービスの対価として、お金はキチンと払うべきだ!」 
「お金を払う習慣がなくなる!無料反対!」という声が、僕のもとに、“無料アプリ”のTwitterを使って何万件と届いた。
凄まじいブーメランだった。

こういった批判は、今に始まった話じゃなくて、たとえば世の中に『ブログ』というものが生まれた時も、やはり、「文章を無料で提供したら、文章を売っている我々が食いっぱぐれるじゃないか!」という批判が起こったんだよね。

「結果、世の中からライターがいなくなったか?」というと、いなくなったのは、『その程度でいなくなってしまうレベルのライターさんがいなくなった』だけの話で、
ブログで自分の存在を知られて、
ライターor作家に仕事を繋げた人が生まれ、
さらには、ブロガーという新しい職業が生まれた。

こういった変化は、インターネットが始まった日から宿命づけられていた未来だ。
『ダンピング』というのは、巨大な資金力をもったA社が、バチクソ安い値段で商品を提供し、資金の体力戦でもって、競合他社(あまり資金力のないB社とC社)を潰し、市場を独占する行為だが、
『えんとつ町のプペル』の無料公開しかり、今回の主婦の一件しかり、
これらは『ダンピング』じゃなくて、『時代の変化』なんだよね。

2000~3000円で仕事を請けた主婦も「世の中のイラストレーターさん達を駆逐してやろう!」なんて1ミリも思っていなくて、ただただ育児や家事の合間に、小遣い稼ぎでやっただけ。

それに対して、「お前は旦那の稼ぎがあるから、2000円で引き請けることができるけど、イラスト一本で生きている俺たちのようなプロのイラストレーターは、それができないんだ!だから、2000円で仕事を引き請けるのはヤメロ!!」とイラストレーターさん達が批判したところで、世間からすれば、知ったこっちゃねえ。

これは本当に厳しい話なんだけど、それがモノ作りの世界だ。
決定権は常に「お客さん」にある。

今後、副業(複業)は当たり前になり、今回のようなケースは方々で起こる。
そして、この流れは止めることはできない。
『イラストレーター』一本で生きることを決めたのなら、実力でブッちぎるしかない。
主婦が2000~3000円でイラストを売る中、それでも、10万円、100万円で買われるイラストを描ける自分になるしかない。

たとえば誰かが無料ライブ(路上ライブ)をしても、僕は全然オッケーなんだよね。
僕の有料ライブの集客には、まったく影響しないから。
まさか、「有料でライブをやっている俺が食いっぱぐれるだろ!」とは言わない。
プロを自称して生きるのなら、自分に圧倒的な価値を付けるしかない。
「ダンピング」という言葉に逃げちゃダメだ。
実力社会です。
だから面白い。