ねぇ、知ってる?
あの子のお母さん、PTAの会長さんとできてるらしいのよ
ねぇ、知ってる?
あの子の家の弟さん、やっぱり変なんですって
ねぇ、知ってる?
あの子のお母さんの出処、どうも橋の向こうの地区らしいのよ
ねぇ、知ってる?
あの子のお父さんの会社、噂通り倒産したんですって
ねぇ、知ってる?
あなた達の話、全部聞こえているよ
ねぇ、知ってる?
あなた達が笑ってしている話、全部おかしくも何ともないんだよ
おい、知ってる?
あいつ、昨日もヤられたんだってよ
おい、知ってる?
一緒に殴れば、金がもらえるんだってよ
おい、知ってる?
あいつ、授業中に血を吐いたらしいぜ
ねぇ、知ってる?
あなた達の話、全部聞こえているよ
ねぇ、知ってる?
あなた達が笑ってしている話、全部面白くも何ともないんだよ
あなた達が知りたいと思っている話を、私は聞きたくない
あなた達が笑ってしている話を、私は全然面白いとは思えない
あなた達の興味があることを、私は知らない
「何にも知らないんだ」ってあなたは言うけれど、私だって知っていることはある
ねぇ、知ってる?
誰もいない校庭に横たわると、月面にいるように感じるんだよ
ねぇ、知ってる?
夜中プールに忍び込んで、ずっと水面を見ていると、急に光る瞬間があるんだよ
ねぇ、知ってる?
デパートの屋上にある看板をのぼると、黄色と赤と青黒い空が迫るんだよ
ねぇ、知ってる?
早朝、日が昇る少し前に神社に行くと、拝殿がやけに白く見えるんだよ
あなた達が知っていることと、私が知っていることが、目の前に揃った
お互い、これ以上、隠していることはないはずだよね
だったらもう、「おあいこ」にして帰ろうよ
知らない間に、外はもう真っ暗だ
さぁ、もうやめにしよう
これ以上、違いを求めたら、どちらかが消えなきゃいけなくなっちゃうから
***
〈文〉高岡ヨシ
〈絵〉ミチコオノ
ミチコオノ氏に、感謝。
fukaumimixschool.hatenablog.com
今回の詩は、こちらに収録されています。
読んでいただけたら、嬉しいです。