おしりの拭き方から考える「冬の食中毒」対策

食品従事者も消費者も“そのトイレ”にご注意を

2017.11.24(Fri) 小暮 実
筆者プロフィール&コラム概要
冬場の食中毒リスクはトイレに潜んでいる。

「食中毒は夏場が本番!」と思いきや、近年は冬場の対策が大切である。というのも、食中毒事件数の3分の1、また食中毒患者の半数以上がノロウイルスによるものであり、その発生が11月から翌年3月にかけての冬場に集中するからである(参考)。食品従事者にとって、冬場はノロウイルスとの闘いの時期でもある。

月別のノロウイルスによる食中毒発生件数。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」より。
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生カキよりはるかに高リスクの糞便や吐物

ノロウイルスの感染リスク。下痢便や吐物などによるリスクが高い。

 ノロウイルスの感染リスクは図の通り、大量のウイルスが含まれた患者の糞便、吐物であり、また、そのウイルスを少量含む生カキなどの貝類である。ただし、生カキは内臓を含めて生食するために感染するので、十分に加熱調理すれば感染することはない。

 ノロウイルスの性質や予防対策を表に示したが、食中毒対策のメインは自身がノロウイルスの患者や保有者にならないことである。

ノロウイルスの性質。「GI」「GII」は、ヒトの感染症や食中毒から検出される主なノロウイルスの遺伝学的分類。ヒトに感染するものとしては他にGIVがある。またGIIIはウシやヒツジ、GVはネズミに感染する。
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1955(昭和30)年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒、雪印乳業(株)を経て、中央区保健所にて39年間食品衛生監視員として勤務。銀座、日本橋、築地などの飲食店や食品輸入業者の監視指導にあたり、多数の食中毒事件や違反食品の調査措置経験あり。現在、食品衛生アドバイザーとして活動中。


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