元文科官僚・寺脇研さん「教育無償化に放送大学の活用を」教育改革に疑問視
東京23区の私立大・短大の定員抑制、高等教育・幼児教育の無償化といった昨今の政権による教育改革について、元文科官僚の寺脇研さんは苦言を呈する。
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──東京一極集中を緩和するために文部科学省は9月、東京23区内の私立大学・短大の定員を抑制する告示を出しました。
過去にも第1次ベビーブームで大学志願者が急増した際、設置基準が野放しになっていた私立大学の大都市集中が問題となった。文部省(当時)が1975年から政令指定都市での大学新設を認可しないことがあった。八王子が大学街になったのも、それがキッカケだ。2002年に抑制方針が撤廃され、また大都市に大学が戻ってきた。その結果が今だ。
ただ、23区だけというのは理屈が通らない。政府の重要課題である地方創生が目的なら、東京23区を含めた大都市に規制をかけるべきではないか。一方で、疑惑の多い加計学園の獣医学部のような大学が愛媛県今治市に誕生する。地方なら何でもいいのか。日本の高等教育のグランドデザインが見えてこない。
選挙対策の面もあるだろうが、奨学金が問題になれば、給付型奨学金制度をつくるなど、すべてが場当たり的な対応に見え、一貫した理念が見えない。
──場当たり的とは?
06年の第1次、12年からの第2次安倍政権で、文科省は「ゆとり教育」が目指す方向とは逆の施策ばかり推進してきた。最近では大学入試改革に見られるアクティブラーニングの推奨など急転換している。
文科省のなかで議論がされていれば、首尾一貫した理念があるはずだ。例えば、ゆとり教育は小中学校で週5日制や総合的な学習が導入された02年の改革を指すと見る人が多いが、中曽根政権時代の87年に臨時教育審議会が出した答申「個性重視、生涯学習、変化への対応」を受けて段階的に進められてきたものだ。それが今や、改革の名の下に政府、官邸主導で拙速に教育が動いている。
──第2次安倍政権の教育改革について、近著『国家の教育支配がすすむ』で批判しています。