ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路

鉄道事故裁判に詳しい弁護士の佐藤健宗氏に聞く

2017年11月24日(金)

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だとすれば、裁判をやる価値があるとすれば、故人に多額の賠償金を払えるだけの遺産があるのに遺族が応じないといったケースのみになります。

佐藤:そういう事例は極めてレアケースと言えるでしょう。

だとすれば、JR東海の裁判はどう取れえればよいのでしょう。

佐藤:JR東海の裁判は、電車にはねられ死亡した本人は認知症で、民法709条での責任を問えない可能性が高いと思われます。実際、裁判の争点も、認知症などで責任能力がない人が損害を与えた際、「監督義務者」がその責任を負うとする民法714条を巡るものでした。今後、高齢化社会が進展すれば、同様の事故が多発しかねません。JR東海は、賠償金目的というより、認知症者による鉄道事故の責任を誰が負うべきか社会に訴えかけるため、この裁判を起こしたとも考えられます。

なるほど、よく分かりました。考えてみれば、鉄道自殺の場合、ただでさえ大切な人をなくして打ちひしがれて遺族に裁判を起こすのは、鉄道会社としても気が引けるのでしょうね。

佐藤:社会的なイメージもありますからね。

抑止力として都市伝説には意味がある

それに、喧嘩による遅延などはどちらが本当に悪かったのか、見極めにくくはありませんか。以前、JR東海道線で車内で目が合って喧嘩を始めた2人の中年男性がホームに降り立った後、もんどりうって共に電車に接触し、両方死亡して電車が止まった事件がありました。これなど、2人とも死んでしまった後となっては責任の所在をなかなか追及しにくいです。

佐藤:ただ一方で、私は、「列車を大きく遅延させると、鉄道会社から億単位の莫大な賠償金が本人や遺族に請求される」という考えは、鉄道自殺の抑止効果という意味で、それはそれで意味があったと思うんです。鉄道事故の処理は本当に大変なんです。条件次第では何十万人に影響を与えます。ご遺体の扱いも想像を超える大変な仕事です。しかも一刻も早く運行を再開せよと言われます。

実際、相当なスピードで復旧するケースもよく見かけます。

コメント6件コメント/レビュー

私も、億単位は眉唾でも、それなりの賠償請求はあると思っていたので、大変参考になる記事でした。
ただ、JR東海が提訴した事案については、誤った風評・理解が広まりかねないと危惧しています。
あの判決は、賠償責任を否定したものではなく、本人は責任無能力者で、代わって責任を負うべき監督者は存在しないという内容です。(個人的にはあの判例には疑問を覚えます。相手が大企業だからいいですけれど、認知症患者が交通事故を起こして相手を死傷させた場合の被害者救済に問題が生じます。)
提訴の理由も、最初に遺族が JR東海に逆に賠償を求めたのでやむを得ず、という話も聞きました。真偽は分かりませんが。(2017/11/24 11:15)

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「ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路」の著者

鈴木 信行

鈴木 信行(すずき・のぶゆき)

日経ビジネス副編集長

日経ビジネス、日本経済新聞産業部、日経エンタテインメント、日経ベンチャーを経て2011年1月から日経ビジネス副編集長。中小企業経営、製造業全般、事業承継、相続税制度、資産運用などが守備範囲。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私も、億単位は眉唾でも、それなりの賠償請求はあると思っていたので、大変参考になる記事でした。
ただ、JR東海が提訴した事案については、誤った風評・理解が広まりかねないと危惧しています。
あの判決は、賠償責任を否定したものではなく、本人は責任無能力者で、代わって責任を負うべき監督者は存在しないという内容です。(個人的にはあの判例には疑問を覚えます。相手が大企業だからいいですけれど、認知症患者が交通事故を起こして相手を死傷させた場合の被害者救済に問題が生じます。)
提訴の理由も、最初に遺族が JR東海に逆に賠償を求めたのでやむを得ず、という話も聞きました。真偽は分かりませんが。(2017/11/24 11:15)

最後の最後まで、なんの関係もない大勢の人に迷惑をかけて自殺する人はどういう業を抱えているのかと思うけれども、飛び込み自殺を含めて、意図的に人に迷惑をかけて自殺すると地獄に落ちるという都市伝説も広めてほしいです。(2017/11/24 10:32)

 記事にも書かれているように、これは多くの人が気にしていますが、あまり広めない方が良い情報ですね。レビューにも、それが反映されていると思います。

 鉄道自殺は、自殺者の氏名や勤務先を公表して、マスコミが悪人として扱い(現に違法行為をしています)、ネットで大いに叩くべきだと考えます。
 そうすれば、後に続く人は激減するでしょう。
 死者に鞭打つというのは、日本の文化に合いませんが、生きて毎日電車に乗っている人の方が大事です。(2017/11/24 09:33)

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