"Fur For The Animals"(動物たちのための毛皮)は、「孤児となった、あるいは傷を負った動物たちのリハビリのために、しまいこんでいる毛皮を役立てよう」というスローガンのもと、使わない毛皮を寄付してもらい、その毛皮を傷ついた動物にぬくもりと安らぎを与える為に使用するいうキャンペーンだ。
このキャンペーンは、アメリカの非営利のアニマル・アドヴォカシー(動物の権利擁護)団体、"Born Free USA" が、アメリカ国内16ヶ所の野生動物リハビリセンターと提携して行っている。
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傷ついた動物たちに、毛皮のもたらすぬくもりと安らぎを
毛皮はアメリカ国内のみならず、世界各地から続々と届いている。
集まった毛皮はリハビリセンターに送られ、保護された野生動物のベッドや毛布として利用されるのだ。
野生の子ウサギ
毛皮の上で給餌を受ける、ケガをしたリスの子
image credit: Nicholas Alexiy Moran, Urban Utopia Wildlife Rehabilitation in New York via Born Free USA.
大反響を呼び3年で800点以上の毛皮が集まる
キャンペーンが始まったのは2014年。だが年間を通じて行われているわけではない。動物たちの防寒が特に必要となる時期を控えた、9月~12月の4ヶ月間だけなのだ。
にもかかわらず、既に800点以上の毛皮製品が集まった。市場価格にすれば、1億7千万円弱になると見積もられている。
そればかりではない。現在(11月23日)のところ、毛皮の寄付が集まりすぎて処理が追いつかず、今年のキャンペーンは延期されているという。
寄付されてきた毛皮
image credit: Chris Yurek via Born Free USA.
毛皮を使用する動物たちは、他の動物の毛皮をどう感じているのだろうか?フェイクファーや毛布との違いを感じているのだろうか?
しかし、公開された写真や映像を見る限りでは、毛皮のベッドはとても心地よいものであるらしい。
アカオオヤマネコのレジーと毛皮
image credit: Fund for Animals via Born Free USA.
母親のぬくもりを思い出させるのか、それとも単に暖かくて安全な避難所だからだろうか?
一枚のキツネのコートで、28匹のコヨーテがくつろぐこともできるのである。もちろん同時には無理だが。
image credit: Fund for Animals via Born Free USA.
寄付に込められた思い
寄付された毛皮には、手紙が同封されていることもある。
私宛のEメールで、動物たちを心地よく暖かくしておくために毛皮を集めていると知りました。孤児となった、傷ついた野生動物に手を差し伸べる助けになりたいと思います。
このミンクのコートは、保存状態はよいのですが、私には使い道がありません。母が所有していたもので、まだ人々があまり(毛皮について)知らなかった何年も前のことです。今では私は知っています。このコートのために死んだ動物たちのことを悔やみます。しかし、彼らのためにも、このコートが今からは他の動物たちのために使われてほしいと思います。それは良いことです。
クロゼットの中を見ていく間に他のものも見つけましたが、少なくともこのコートがあなた方の目的にはよく適うと思います。あるいは、そうであることを願います。
これが動物たちに安らぎをもたらしますように。
image credit: Born Free USA.
この毛皮は、私の祖母のものでした。何の動物の毛皮かは分かりません、多分キツネでしょうか?
(毛皮を着るという)考えは好みませんが、センチメンタルな理由から、これを捨てたくはありませんでした。
そして、あなた方の団体のことを聞き、これを送ることにしたのです。どんどん活用していただきたいと望みます。ありがとう。
image credit: Born Free USA.
そう、上の世代から毛皮を受け継いだものの、使い道もなく、かといって捨てることもできない、という人はたくさんいたのである。
その毛皮を動物たちのために使ってもらうことは、毛皮の以前の所有者にも、また毛皮を生み出した動物たちにとっても本望であろう。
毛皮を「野性に返す」ということでもあるのだ。
オポッサムのきょうだい
image credit: Fund for the Animals via Born Free USA.
"Born Free USA" の最高責任者で、このキャンペーンの発案者であるアダム・ロバーツ氏自身も、祖母の遺した毛皮を寄付した。
「祖母は私の強い味方でしたが、別の世代の人でもあったのです」とロバーツ氏。大恐慌を経験した世代の人々にとっては、ステーキや毛皮のコートといったものは、不況を脱することができたという証だったのだ。
「自分の毛皮に良い使い道ができたことを、祖母は誇りに思ってくれたでしょう。毛皮を所有してはいましたが、動物保護や環境保全の真価も認めたはずです」
キツネの毛皮でくつろぐスカンクの赤ちゃん
image credit: Fund for Animals via Born Free USA.
象牙はゾウのもの、毛皮は動物のもの
ロバーツ氏が "Fur For The Animals" のアイディアを思いついたのは、コロラドでアイボリー・クラッシュ(象牙粉砕)に参加したときのことだ。
アイボリー・クラッシュとは、象牙の密猟をなくすため、象牙製品を効果的に市場から排除し、また、「ゾウ以外の何者も象牙を所持・使用してはならない」というメッセージを広めるためのデモンストレーションである。
とはいえ、製品となってしまったものでも元々は動物の一部だ。それを壊したり、捨てていくのも心が痛む。
野生動物からつくられる製品は市場から取り除くべきであるが、それを再利用できないか?商取引の対象にしてはならないという象徴にはできないか?
その時にひらめいたアイディアが毛皮を動物たちの為に利用するという"Fur For The Animals" の活動につながったのだ。
ロバーツ氏が望むのはそれだけではない。嗜好品としての毛皮を着るという文化に終止符を打ちたいという。毛皮産業自体が消えていってくれることを望んでいるそうだ。
毛皮のマットでヨガをするクマの子
image credit: Fund for Animals via Born Free USA.
時代と共に価値観は変わる。おしゃれで毛皮を着る時代は終焉を迎えつつある。最近では大手アパレル企業でも、毛皮を使わずフェイクファーを使用するところも多い。また、寒さ対策であれば、毛皮よりも防寒に優れた化学繊維が開発されている。
かつて、数え切れないほどの動物たちが、毛皮のために死んだ。その過去をなかったことにはできないが、未来は徐々に変わりつつある。
via: Upworthy / Born Free USA など / translated by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
俺はまぁ人の皮のベッドでは寝たくないかな
2. 匿名処理班
昔、人間が落とした手袋にたくさんの野生の動物達が入って
寒い冬を越す…みたいな絵本あった気がする
お気に入りだったのに名前忘れちゃったけど…
3. 匿名処理班
う~ん・・・ちょっとシュールな関係性かなあ。
まあ、利用するのが毛皮と同じ種というわけじゃないから考え過ぎかも知らんけど。
4. 匿名処理班
これを全部人間に置き換えると中々、ブラックジョークが利いてる気がするわ
5. 匿名処理班
これ、ものすごくいいアイデアですね!
世界的に広がってくれる事を望みます。
6. 匿名処理班
普通に良い取り組みでしょ。ブラックやシュールに見る意味がわからない
7. 匿名処理班
動物の皮の上に動物を寝かせるなんて皮肉のつもりかって意見も分からなくもないけど、犠牲の上に生まれた製品がそれこそ何の意味もなくただ処分されるぐらいなら、どんな形でも最後の最後まで活用して欲しいと思うな。
8. 匿名処理班
自分も昔買ってきたばかりのハムスターを育てるときに安心してもらおうと、安く売ってた露天から毛皮のマフラーをちょびちょび切って(汚れたら新しいのに交換)与えようとした。が、オカンがそのマフラーを身につけてしまい、ペット用だとは言えなかった・・・
9. 匿名処理班
毛皮を使って動物愛護をするのはな・・・
10. 匿名処理班
※2
まんま「てぶくろ」だよ。
あれ、四次元ポケット化してて人間が落としていった手袋の中にオオカミやらイノシシ・クマまで同居しだすんだよね。
巨人か?
11. 匿名処理班
イイハナシダナァー
と言い切れないところがなぁ
12. 匿名処理班
鶏肉は鶏のもの。牛肉は牛のもの。
13. 匿名処理班
これはええな。ちゃんと寄贈された毛皮を使ってる写真もあるし、信頼できるね。多数の毛皮が寄贈されるのも納得ですわ
14. 匿名処理班
フェイクファーは本当に増えたなと思う
毛皮がステータスにはならない時代なんだろうな
15. 匿名処理班
癌とかで毛をウィッグ用に提供する人も貰う人もいるから別に関係としては問題ないんじゃない…?
16. 匿名処理班
うーん、心の底からいいね!!と言えない自分がいるのだが、
それもまたエゴなんだろうか。
17. 匿名処理班
毛皮をとるだけのために動物を殺すのは確かに気分がよくないな。
命に感謝して、肉も骨も毛皮も余すところなく使わせていただきます、ならわかるんだけど。
18. 匿名処理班
※2
エウゲーニー・M・ラチョフの「てぶくろ」かな
19. 匿名処理班
心が汚れている自分には怪しく感じてしまう
20. 匿名処理班
自分も高価な嗜好品やステータスとして毛皮や象牙を殺して奪い取る文化は好きじゃないけどこういうのもなんだかなぁ…うまく言えないけど。「神の子である特別な人間」とそれ以外の自然、動物って価値観があるように感じてな。捨ててしまうのは余計に申し訳ないのもわかるしだからといって着て歩けば羨む人も出てきて結局毛皮文化や密猟は無くならないだろうし。
21. 匿名処理班
うん、いや・・・リサイクルの精神はいいんだけど自然に対してこれほど見事な偽善というか皮肉はそうそうお目にかかれないだろう
例えば子猫が寒がってるから殺した親猫の皮でベッド作ってやったらもう最高にぶっ飛んでるよな
人間に例えるとどれだけエグいことか
22. 匿名処理班
動物愛護もいいけど、それはもしかしたら淘汰されるはずだった動物たちを人間のエゴで無理やり生かしてるだけなのかもしれない
23. 匿名処理班
※2
タイトルはズバリ 「てぶくろ」だよ。あの絵、とっても好きで今でも部屋に飾っている。
※3
理想は同じ動物の毛皮なんだと思う。
日本だとチンパンジーの人工保育に初めて成功した時のエピソードで、ミルクを飲ませても吐き出してしまうのを、毛皮に赤子を包んでミルクを与えたら飲むようになったそうだ。母親の胸にしがみついて母乳を飲むことからのアイデアなんだけど、それ以降類人猿の人工保育の際は毛布など母の感触を思わせるもので子を包むやり方をするようになったらしい。
仔猫を保護した時なんかも縫いぐるみなど母を思わせるものに寄り添わせるけど、それと同じ感じなんじゃないかな。
24. 匿名処理班
うーん
素直に換金して保護費用に充てた方がまだ良い様な…
25. 匿名処理班
……?
もしかして……ママ…?
26. 匿名処理班
遠い昔、先祖の命をつないだであろう毛皮
27. 匿名処理班
表層だけ見たらいいことしてる風に見えるけど
この行為ですべての動物に対する罪が帳消しになる気もしないし
人間のエゴここに極まれりって感じだな
28. 匿名処理班
動物たちの知能が高かったら出来ないことだね
29. 匿名処理班
コートを買うと、もれなくフードに付いてきちゃう。
むろん外して使うのだが、年月と共にクローゼットに
鎮座する毛皮は少しづつ、増えて行く~。
日本でもこの取り組みがあったらいいな!
30. 匿名処理班
※2
ロシア民話の確か、手ぶくろって話だと思う。
まだ家にもあるかも知れん。こっくりした絵が良かったな。
31. 匿名処理班
手入れして使うならいいけど明らかにアメリカの行き過ぎた毛皮批判活動の一環だから使ったらゴミみたいに捨てそうなのが心配だなぁ
32. 匿名処理班
斜めから見て皮肉を言いたくなるのも分からなくは無い。
でも現実的には毛皮産業がなくなる事も無いし、それならば寒さ対策の必要がある所で、必要な生き物に再利用するのは良い取り組みと言えるんじゃない?
誰も貴方にヒトの皮で作ったランプシェードを使えと強要はしてないんだし。
33. 匿名処理班
普通の毛布で良くない?
34. 匿名処理班
昔ヨーロッパに狼が遠吠えするのは寒いからだと羊毛のベストを作って着せさせてた王様がいたような
35. 匿名処理班
全然ブラックじゃないと思う。
記事にもあるように、毛皮は豊かさの象徴だった。老いも若きもこれまでにない豊かさを前に、動物のことなんか考える余裕なんて無かったはず。
それをただ責めるだけじゃ、お互い後味が悪いだけ。
毛皮を買ったことは間違いだったけど、でもただ捨てて燃やされるより動物たちの手助けになればいいよね、っていうそれだけの話。
36. 匿名処理班
「嗜好品としての毛皮を着るという文化に終止符」
大事なのはここだと思う。
他の生物の命を糧として生きるのは人間の必然だからね。