財政的な幼児虐待:『シルバー民主主義の政治経済学』
日本の政治が老人偏重の「シルバー民主主義」だと批判されて久しい。安倍政権はそれにこたえて「全世代型社会保障」を打ち出したが、本書は「日本の政治はシルバー民主主義ではない」という。もっとも深刻なのは、いま生きている世代と将来世代の格差なのだ。
図のように、いま80歳以上の世代は生涯純負担率がマイナスだが、45歳以下はそれほど大きく負担は増えない。それは社会保障の赤字が国債発行でまかなわれるからだ。大きく負担するのは0歳以下の将来世代で、所得の半分以上を(税・社会保険料として)負担する。その債務は926兆円に達し、彼らの生活は生まれる前から破綻している。
これが財政的な幼児虐待と呼ばれる現象である。老人が若者を搾取しているのではなく、生きている世代が結託して、まだ生まれていない世代の富を「共有資源」として消費するのだ。被害者である将来世代には選挙権がないので、彼らはこれに抵抗できない。
「教育無償化」や「子ども保険」などの若年層むけの再分配は、むしろ将来世代の負担を増やす。安倍政権のいうように「成長で負担を減らす」ことも「インフレで負担を減らす」ことも理論的には可能だが、図のようにその効果は微々たるものだ。最大の問題は受益と負担のルールである。
これは民主主義の「生物学的限界」で、政治で是正することは不可能だが、この極端な不平等が今後そう長く続けられるとは思えない。この問題が「解決」するのは、金利上昇などによって国債の新規発行ができなくなる財政破綻のときしかない。それがいつかは予測できないが、それほど遠くない将来だろう。
本書の論旨はおもしろいが、話が未整理で重複が多い。数字がたくさん出てくるが、図がほとんどないのでわかりにくい。政治家に理解してもらうには、コンパクトな図解版があったほうがいいのではないか。
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