「高い」と保護者らから指摘が出ている制服代について、公正取引委員会が全国450校の公立中学の制服代を分析した調査報告書をまとめたことをハフポスト日本版は11月22日に報じた。だが北海道には、公立中学の制服代を1人でこつこつ集めて分析している男性がいる。
■1人で自治体に情報公開請求
北海道帯広市の図書館司書、大平亮介さん(28)。
もともと地域の課題に関心があり、勉強会などに参加するうち、帯広市は低所得世帯が受ける教育費の補助「就学援助」を受けている子どもが約4人に1人いることを知り、「子どもの貧困」というテーマで、自分が何ができるかを考えるようになった。そのなかで、制服代すら払えない困窮世帯がいることを新聞報道で知り、衝撃を受けた。
図書館司書は高い調査能力が求められる専門職だ。利用者から質問されたことを文献から見つけ出し、回答する専門業務「レファランス」を担う。大平さんは、このスキルを使ってたった1人、オフの時間に調べ始めた。
制服代がいくらか知りたい。手始めに道内の市教委に問い合わせると、「制服代などの情報は把握していない」と言われた。だが、情報公開制度で請求すると、「把握していない」と答えた自治体を含め、大半が資料を公開してきた。
この1年近くで、北海道、秋田、岩手、山形県内の市に、
■価格以外の課題がみえてきた
集めたデータからは、学校ごとに制服の価格差が大きいという課題のほか、別の課題も見えてきた。その一つが、次の3つのタイミングがあっていないという問題だ。
1.制服代を初めて知るタイミング
2.購入するタイミング
3.公的支援の支給のタイミングなど収入のタイミング
制服代は学校によって違うが、一揃えすると5~7万円かかる。これだけのまとまった額を低所得世帯が用立てるには、1~3も大事になってくる。1は早めに知ることができたら準備が早めにとれる。2や3が近いほど、
こうした観点で、大平さんが自治体ごとに改善点を探ると、
●制服代を知った時期から買う時期までの期間がとても短い
帯広市の中学校の大半は2月中旬に保護者向けの入学説明会を開く。指定品の項目や価格の詳細が初めて分かるのはこの時期だ。一方、制服や体育着の販売時期は2月下旬に集中している。
図)帯広市立中の制服・ジャージの購入時期と入学説明会の時期(判明分のみ)
「帯広市では小学校の卒業式に中学校の制服を着る『伝統』がある。
●入学説明会まで制服代を簡単に知ることができない
一番手っ取り早いのが、学校のホームページで価格情報を常に載せておくことだ。一部の自治体ではすでに始めているが、大半の学校はこうしたことすらやっていない。大平さんも帯広市で探したが、見つけられなかった。
図)帯広市立中学のホームページの掲載情報
大平さんは「
●入学準備金なのに支給時期が夏
低所得者向けに自治体が援助する「就学援助」
図)北海道の就学援助の支給額(道内35市のうち31市の把握分)
入学準備金の支給額は、
■議論にはデータが不可欠
大平さんは、分析で見えた課題をレジュメにまとめ、地元のメディアや
写真)石狩市の中学の制服の課題をまとめた資料
また、10月1日には、地元で開かれたミニ講演会で、「教育費クライシス」と題し、これまでの分析で分かったことを住民たちと共有した。
一連の取り組みが最近、実を結んだ。
地元の帯広市議会9月定例会の一般質問で、
「土台となるデータがあれば、建設的な議論ができる。