ソニーWF-1000X(左)とアップルAirPods(右) iPhone 7/7 Plusからイヤホン端子がなくなり、アップルが「AirPods」(1万6800円)を発売して、注目されるようになった完全ワイヤレスイヤホン。そこにソニーが、業界初のノイズキャンセル対応モデルである「WF-1000X」(2万4880円)を発売した。2機種を使い比べて、WF-1000Xを選ぶ価値があるかを検証してみよう。
■ずれる心配がないWF-1000X
まず、ソニーのWF-1000Xの外見からチェックしていこう。WF-1000Xを箱から取り出しAirPodsと並べてみると、サイズはWF-1000Xのほうが大柄で6.8gと重め。ただし、AirPodsは完全ワイヤレスイヤホンのなかでも超小型かつ軽量なので、WF-1000Xは中程度のサイズともいえる。
小型で耳にフィットしやすい形状のWF-1000X WF-1000Xはカナル型(耳栓型)タイプで、耳穴へのフィット感を決めるイヤーピースも素材別に2種類、サイズ含め合計7個が付属する。完全ワイヤレスイヤホンで心配な、耳からの落下を防ぐフィッティングサポーターも装着済み。実際に耳に付けてみると、首を振ってもズレる気配がない。
イヤーピースとフィッティングサポーターで固定できる AirPodsも装着時に落下することはあまりないが、冬場はコートの襟に当たってズレる心配がある。より安心して使えるモデルはWF-1000Xだろう。
■音質はWF-1000Xの圧勝
気になるWF-1000XとAirPodsの音質の違いをテストしていこう。
iPhoneの音楽再生アプリ「HF Player」でRADWIMPSの『前前前世 (movie ver.) 』を聴いて比べた まずは静かな室内で音楽を聴き込んでみた。AirPodsもナチュラルで聴き心地のよいサウンドだが、ソニーのWF-1000Xに付け替えてみると、曲冒頭のエレキギターの音の刻みの解像感などで圧勝。高域までダイナミックに響くし、ベースの低音の質感もタイトで歯切れよい。ボーカルの歌声もバンド演奏のなかで立体的に浮かび上がる。
映画『ラ・ラ・ランド』のサントラより『アナザー・デイ・オブ・サン』も聴き比べてみた ジャズの音源でも楽器の質感が表れ、音の情報量が多いソニーのWF-1000Xが優れていた。AirPodsは聞き疲れしないよさはあるが、改めて比較すると音の情報量を出し切れていないようだ。
騒音の響く電車や駅構内へ持ち出してみると、ノイズキャンセリングが働くWF-1000Xはなおさら有利だ。
まず、AirPodsは遮音性の低いイヤホンで外音が耳に届くが、WF-1000Xは元の遮音性の高さに加えてノイズキャンセルで電車の走行音の重低音をほぼカット。ほぼ無音の状態から音楽を鳴らせるので、元の音質差以上に音情報、低音の量感に差が出た。
また遮音性が低いAirPodsはボリュームを上げないと音楽を聞きづらいし、電車の車内で音量を上げるとシャカシャカ音が漏れる。一方、WF-1000Xはノイズキャンセルでボリュームを上げる必要がなく、しかもカナル型なので音漏れもしない。
遮音性の低いAirPodsは周囲の音が聞こえるから安全という面もあったが、ノイズキャンセリングのWF-1000Xは、本体ボタン一つで外音を取り込む機能も備えている。
イヤホンL側のボタンを押すと「外音取り込み」に切り替えられる
ノイズキャンセル関連の設定をできる「Sony Headphones Connect」 装着して街や駅を歩いていても、音楽の音量を上げすぎなければ車の走行音や人の話し声なら聞き取れる。駅のアナウンスを聞き取る、コンビニで買い物をする程度の会話なら、外音取り込み機能があれば問題ナシだ。
■携帯性やペアリングの簡単さはAirPods
携帯性やバッテリー駆動時間もチェックした。基本スペックとしてAirPodsは本体5時間、WF-1000Xは本体3時間なのでAirPodsが一枚上手。完全ワイヤレスイヤホンの付属品である充電ケースも、AirPodsとWF-1000Xで並べてみるとサイズ差がかなりあり、WF-1000Xのほうが大きい。
AirPods(手前)とWF-1000X(奥)の充電ケースを比べた WF-1000Xの充電ケースはスーツの胸ポケットには収まるが、厚みもあるので少々格好悪い。ただし、パンツのポケットに入れるスタイルなら問題ナシ。カバンに入れて持ち歩くつもりなら、どちらも大差ない。
スーツの胸ポケットに入れた状態。親指の位置がポケットの底なので収納自体は問題なし WF-1000Xの充電ケースは大きいぶん、バッテリー駆動時間が長いかというとそうでもない。WF-1000Xは本体のみ3時間、充電ケースに入れると6時間なのに比べて、AirPodsは本体のみ5時間、充電ケースに入れると24時間以上駆動できる。バッテリー関連は、あらゆる面でAirPodsが上だ。
なお、AirPodsを使っていて魅力と感じるのはペアリングの手軽さ。アップル自慢の「W1チップ」のおかげで、iPhoneの近くに置くだけで、接続の確認画面が表れる。またiPadやApple Watchなど複数のアップル製品への接続も簡単だ。一方、WF-1000XのiPhoneへの初回ペアリングは、イヤホン左側のみをケースから取り出し、iPhoneの設定画面のBluetoothの画面を開いてセットアップする必要がある。ただし、2度目以降はiPhoneのBluetoothがオンの状態で充電ケースから取り出すと自動で再接続する。
AirPodsならペアリングはワンタッチで済む
WF-1000Xのイヤホン左のみを取り出しBluetooth設定画面からペアリング
2度目以降はケースから取り出すと自動で再接続■どちらがおすすめ?
AirPodsとWF-1000Xを比べてみると、AirPodsは、携帯性やiPhoneなどアップル製品への接続のしやすさなどが良くできている。
だが、音質や耳への装着性はソニーのWF-1000Xのほうが上だし、電車によく乗る日本人のライフスタイルにマッチするノイズキャンセリング・外音取り込み機能があるWF-1000Xは実に魅力的だ。
WF-1000Xの価格はAirPodsと比べ約8000円高いが、差額以上の価値を感じられるはずだ。
(ライター 折原一也)
[日経トレンディネット 2017年10月27日付の記事を再構成]
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