【新人洗脳研修】心がキレイすぎて一週間で完全なる社畜が完成した話

屈託のない輝きを宿した目でこんにちは。

人生のほとんどのことは「根性論」でなんとかなると思っている三十路男子、ぼりです。

 

そんなぼくの根性論を形成しているのは、某大手運送会社で過ごした超肉体労働期間です。

 

ぼくは、20歳から4年間、超大手の運送会社でドライバーを務めていました。

そして「某大手運送会社」には、以下のような話が噂として流れています。

 

  • 3年続けばどんな仕事でも通用する根性がつく
  • 新人研修がハンパない
  • トラック降りた瞬間から走らなきゃいけない

 

これ、ぜーんぶ本当です。実際に4年間働いた身として実感しています。

しかし、この根性にも基盤がなければ続けることはできません。

その基盤はどうやって形成されるのか。

 

 

「新人洗脳研修」です。

 

 

今回、地獄の新人研修についての実体験報告を、ここ社畜祭りにて紹介させてください。

 

運送会社への入社試験

ぼくが入社した運送会社には入社試験が一応存在しました。

筆記試験で、記憶に強烈に残っているのは「日本には都道府県はいくつあるでしょう?」というほど”一応”用意された試験です。

ちなみにこの回答に「48」と書いた同期も合格していました。

かなりイージーですね。

 

筆記試験自体はめちゃくちゃ簡単なのですが、面接はスタートから印象的でした。

 

面接官:「で、いくらほしいの?」

 

 

 

「で、」って。

 

怖いよ。

 

そんなこと聞かれるとは一切思ってなかったぼく。「20万円くらいあれば…」と言ったら

「夢ちっちゃいなー」

って言われました。

 

うるせぇよ。

 

これで合格です。イッツイージー。

 

1週間に渡る新人洗脳研修のすべて

入社したらすぐにトラックに乗って荷物を配達できるわけではありません。

月に1度開催されている1週間の新人研修を修了しなければいけないのです。

 

ちなみに参加者全員が合格できる訳ではなく、最終試験に合格しなければまた翌月の研修に強制参加。

 

新人研修に行く前から「落ちて帰ってきたらすごく恥ずかしいよ」と、上司からプレッシャーもかかります。

ここでプレッシャーがかかるのもそのはず。

 

会社全体の決まりとして、新人研修を修了しないとトラックに乗ってはいけないと固く決められているので、雇った営業店からしても合格してもらわないと、都合が悪いんです。

トラックにも乗れない人間を1ヶ月間雑用させるほど、会社も無駄にお金をかけていられないので。

ぼくはというと

ぼく
(主席で卒業して帰ってきて、びっくりさせてやるぞっ)

とか思ってました。

ここまでのポイント:事前のプレッシャー

【初日】外界との関わりを全てシャットアウト、山奥の宿泊施設へ

新人研修は、各支店から数名ずつまとめて新人が集められ開催されます。

 

電車で揺られ、駅に到着。お迎えの車に乗って山奥の研修施設へ。

この辺りで気づきました。

 

ぼく
(これ、自力で帰れなくね?)

 

全く知らない地域の山奥に車で連れて行かれるので、逃げることができないんです。

 

そんな恐怖を心に感じながら、30分ほどの山道を越え到着したのは割とキレイな宿泊施設。

現地には既に、各営業所から集められた15人くらいの新人がいました。

 

  • 大学を卒業した方
  • 土木業を退職された方
  • 結婚を期にアルバイト生活を卒業した方
  • 別の運送会社から転職してきた方

 

みんな条件はさまざま。

荷物を置き、軽い挨拶を済ませた後、早速初日の研修に入ります。

初日では、自己紹介を含め

「なぜここに入社したのか?」

みたいなことを一人一人みんなの前で喋るオリエンテーリング程度のことしかしませんでした。

食事を終えると、みんなで寝るための大部屋に案内されます。ちょっと安心して1日を終了。

 

ぼくは

ぼく
「宿泊体験学習みたいで楽しいな」

とか能天気な事を思ってました。

 

ここまでのポイント:期間中は逃げられない、1人になれる時間がない

 

【2日目】新人研修本格化

2日目から急激に空気が変わりました。研修本格化です。

まずは研修期間中は毎日行われた朝イチのランニングとラジオ体操についてご紹介します。

 

掛け声移動

朝7時に合宿所玄関に集合し、1km先くらいの場所にある広場にランニングで移動。

このランニングにも決まった掛け声があります。

先頭の人「イッチニ!」

全員「〇〇っ(社名)!」

到着までエンドレスループです。

 

ぼくは

ぼく
(部活みたいでウケるw)

っておもってました。

 

エンドレスラジオ体操

掛け声ランニングで広場に到着したら、ラジオ体操を全員で行います。

ここでの原則は

「誰一人として一切の行動を間違ってはいけない」

というもの。

この記事を読んでいる方で、ラジオ体操を最初から最後まで覚えてらっしゃる方はいますか?

コレです。

 

一挙手一投足全て。

この、左足と右足の開く順番までとかも全て。

 

手先は伸びてるのかとか、首はどっち向いてるのかとかぜんぶ、ほんとのぜーんぶです。

 

無理じゃないですか?

 

これを、15人全員がピッタリ息を合わせて最後までやりきらないと「朝のラジオ体操」が終わりません。

 

当然、最初からうまくいくわけはありません。

 

誰かが間違えた時点でまた最初からやり直し。

整列した15人を四方から「指導員」がミスチェック。

失敗の度に集中力が落ちる中、新人全員のイライラも増幅。

ミスをした新人は全体への申し訳無さに萎縮し、次の体操で恐怖心から再びミスをするという負の感情のエンドレスループ。

1分のラジオ体操を終えるのに2時間以上かかりました。

 

「朝の日課」を終えたところでようやく朝食、その後は「座学」へ。

ここでは日常業務において必要な知識をちゃんと教えられます。

こちらは最終日の筆記試験で全ての確認作業が行われるのでみんな必死。

入社試験の「日本の都道府県の数」とか、人をバカにしたような内容の勉強じゃありませんでした。

ぼくは

ぼく
(みんなで頑張ってひとつのゴールに向かうって素敵なことだな~)

っておもってました。

ここまでのポイント:連帯責任

【3日目】社是、社訓、社歌の暗記

このあたりから精神的なところを徐々に詰められ始めます。

会社でかかげている社是や社訓、それに加え社歌(会社の歌)が存在し、アカペラで覚えなければいけません。

「朝日を受けて、エンジンの音軽やかだ」

などの意味不明なフレーズをアカペラで覚えます。

「エンジンの音、爽やかだ」って間違えた人が

講師
「軽やかだろうが!!」

とかって怒られます。

今思い出せば完全に笑ってしまうのに、その場にいる人たちめっちゃ本気。

 

人里離れたところで、施設のスタッフ以外は関係者しかいない状態なので、完全に「空気」が出来上がります。

 

講義が終わっても、寝る寸前まで各々個人での時間を暗記にあてます。

 

  • ラジオ体操を何度も繰り返し反復練習
  • 意味不明な歌詞の暗記&鼻歌
  • 社是、社訓を暗記

 

施設の廊下や雑魚寝部屋は上記のような人で溢れ、立派な新興宗教軍団が確立していました。

 

ぼくは

ぼく
(みんなよりも早く覚えられるようにがんばろう)

っておもってました。

ここまでのポイント:連帯責任+逃げ出せない+個人の時間がない=違和感を感じるスキがない

 

【4日目】大声を出せ!!

ようやくラジオ体操を1発で終わらせられるように。みんなの一体感も高まってきます。

この絶妙なタイミングで、洗脳新人研修では「恥」と「プライド」を潰しにかかります。

 

「(事務所に)入りますっ!」

「(事務所から)失礼しましたっ!」

「(挨拶はいつでも)おはようございます!」

「(目上の人間全員に)おつかれさまです!」

 

などなど、挨拶の全てを「全力の大声で出せ」と指示されます。

 

講師「会社にいる先輩たちは事務所に入るとき、大声で挨拶してるか?」

ぼく
「いえ、してませんっ!(大声)」
講師
「みんなかわいそうだな、新人の頃の熱い気持ちを忘れて斜に構えてる」
ぼく
「はいっ!!!(先輩たちはかわいそうなんだ)」

事務所に全力の大声で挨拶して入らないなんてまあ、当たり前なんですが。

ぼくは「事務所に入るときに大声を出していない先輩は全員悪」と認識しました。

 

他にも

講師
「今まで何かひとつでも人生において必死になったことはあるのか!!」

と、仕事とは関係のないことを責められまくります。

 

ぼくは

ぼく
「高校のときの部活でも、どこか頑張りきれてなかったかもな」
ぼく
「今、ここで頑張るんだ!」

っておもってました。

ここまでのポイント:今ここで教えられていることが絶対的正義

 

【5日目】社訓、社是、社歌の集中暗記

そろそろ、個々のメンタルは限界に近づいてきます。

最終日前日となる5日目は、軽い座学と卒業試験に向けた自習。

また、講師の方々のドライバー時代の美しい思い出話も伺うことができました。

 

「寒い日にかじかんだ手で配達してたらお客さんからあったかい缶コーヒーを買ってもらえた」

「終わらない配達に嘆いていたら先輩社員が手伝いにきてくれた」

 

とか、そんな感じだったと思います。

最終日前日ということで、晩御飯の時間にビールが出たのが印象的でした。

ぼく
「明日の試験、ぜったいに受かってドライバーになろうなっ!」

って同期と酒を飲み交わしました。

ここまでのポイント:たまにガス抜きさせるの大事

 

【6日目】「卒業試験」大声発表。叫べっ!!

最終日の試験は、筆記と発表。

筆記試験が終了したあとはひとりひとりが個室に呼ばれ、3人の講師の前で暗記した

「社歌」「社訓」「社是」

を全力の大声で発表しなければいけません。

 

ここで一番大きなポイントが存在します。

 

人間は全ての意識を「大声」に向けたとき、頭で考えることができないんです。

つまり、つい最近暗記した文章を全力の大声では出せないということ。

 

  • 大声に集中すれば、文章に詰まる
  • 文章を意識しながら声を出すと、最大音量ではなくなる

 

この2つを完全に理解している講師陣は、新入社員を容赦なく落とします。

「声が小さいっ!!!」

「まだおぼえてねぇのかっ!!!」

「出直してこいっ!!!」

部屋から漏れる罵声の後、次々に肩を落として戻ってくる同期。

どんどん迫ってくる終了時間の中で、出発前に

「落ちて帰ってきたらものすごく恥ずかしいよ」

の上司の言葉が更に拍車をかけて焦りを生みます。

精神が崩壊して涙ながらに叫ぶ同期と、険しい講師陣しかいない空間には恥とプライドが存在しませんでした。

 

当然ながらぼくは大号泣です。

 

なにが合格基準なのかわからず、不安が限界を突破して涙を流していたぼくは、なぜか急に合格をもらえました。

今思い出せばなのですが、合格の基準は「本気で泣いてたかどうか」だったような気がします。

新人みんなで泣きながら抱き合い、新人研修最終日を終えました。

 

ぼくは「この気持を一生忘れない」って思ってました。

ポイント:「恥」と「プライド」を捨てたら合格

 

【7日目】研修修了後の出勤

ようやく、1週間の新人洗脳研修を経てそれぞれの営業所に戻るべく旅立ちます。

「お互いがんばろうな!」

そう言いながら一人一人減っていく同期の背中はすごく輝いて見えました。

 

研修から戻り、営業所に到着したとき、立派になって帰ってきた自分をアピールしたくて、事務所に入るなり

 

ぼく
「入りますっ!!!」

 

って全力の大声で言ったら、クスクス笑われました。

 

ぼくは

ぼく
(みんな新人の頃のこの熱い気持ちを忘れてるんだな、かわいそう)

って思ってました。

ポイント:「周りがおかしい」と事前にちゃんと刷り込まれている

 

ここで、当時ぼくが書き記したmixiの日記の一部を切り取ってご紹介します。

完全に洗脳されてますね。

 

こうしてぼくは新人研修期間を修了し、無事1人の社畜として立派に4年のお勤めを果たしましたとさ。

 

めでたしめでたし。

 

合格できなかった2人の共通点

本文中に書かなかったのですが、最終日の試験を最後まで合格できなかった人は2人いました。

2人とも、おそらく「洗脳されなかった」のが原因です。

ブラック企業において、洗脳にかからない人間はこの先も扱いにくい。だから受け入れない。

この考え方が1番恐ろしい。

洗脳の為に、「新人研修で落ちたやつ」という1ヶ月の屈辱に耐えさせ再度洗脳研修を受けさせるか、辞めてもらう。

洗脳しにくい社員かどうかはここでふるいにかけられるのだと思います。

 

人は考えることを辞めさせられたとき、洗脳される

ぼくがこの研修を時を経て思い出すことで、洗脳に必要な条件は4つ。

  • 考えるスキを与えない
  • 恥を捨てさせる
  • 連帯責任
  • 「周りがおかしい」と刷り込む

 

当時のぼくは一切気付かずに過ごしていたのですが、この4つの条件はそのまま新興宗教や集団犯罪にも使われる手法です。

 

ぼく自身の実体験として、洗脳されて乗り切ったことで得た経験や自信は確かに大きかったです。

しかし、まわりの人には勧められません。

ぼくがこの4年を乗り越えられたのはきっと「たまたま」だから。

もしこの期間に潰れてしまっていれば、ぼくの自信は今もズタボロになっていただろうし、実際にそういった方が多いのも事実。

 

ぼくは、友人や知人のつながりのおかげでブラック企業以外の価値観に触れており、転職に踏み切ることができました。

「選べる自由がある上で、辞める気持ちを塞ぎ込まれない」

という環境は絶対に自分で確保しておかなければいけません。

 

新人研修自体は、会社にとっての必要な知識や技術、考え方を習得するのに必要なものです。

しかし、自分が受けているのは研修ではなく洗脳だと少しでも感じたときは、必ず逃げ道を確保してください。

洗脳は「済んでから」はもう気づくことができません。

 

ぼりでした。

この記事を書いた人

著者:ぼりさん (@borilog) | Twitter

全国をフラフラしてる三十路。

書いたり喋ったり飯作ったりして生きてます。

痛風対策でビールを辞めてハイボールに切り替えたのが最近のハイライト。

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ラジオ体操のgif動画、なんか知らんけどすげぇむかつよなぁ……

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