「新たな民主主義が生まれつつある」 ジンバブエ次期大統領
ジンバブエの政変で大統領を辞任したロバート・ムガベ氏に代わって就任する見通しのエマーソン・ムナンガグワ氏(71)が22日、亡命先から帰国した。ムナンガグワ氏は、「新たな民主主義が生まれつつある」と国民に呼びかけた。
ムナンガグワ氏はさらに、一部推計で約9割が失業しているとされるジンバブエで雇用創出に取り組むと約束した。
首都ハラレに戻ったムナンガグワ氏は、歓声を上げる群衆の前で「我々の経済を成長させたい。我々は平和を希望する。我々は仕事が欲しい。仕事、仕事だ」と語った。
国営テレビによると、2週間前に南アフリカに退避していたムナンガグワ氏は今週24日に大統領に就任する予定。
ムナンガグワ氏が今月6日に第1副大統領を解任された後、国軍が蜂起し、ムガベ大統領の37年にわたる政権を終わらせた。
与党・ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)の本部に集まった支持者らの前でムナンガグワ氏は、自分に対する暗殺計画がこれまでに数回あったと語り、ムガベ氏の退陣「手続き」を平和裏に進めた国軍に感謝すると述べた。
現在93歳のムガベ氏の辞任が発表されると、21日の深夜まで盛んに祝う人々の姿がジンバブエ各地で見られた。
21日の議会で、ムガベ氏による辞任表明の書簡が読み上げられ、同氏に対する弾劾手続きは急きょ停止された。
与党の広報担当者は、ムナンガグワ氏が来年9月に予定される選挙までのムガベ氏の残りの任期を代わって務めると語った。
政治的な抜け目なさから「ワニ」のあだ名が付けられているムナンガグワ氏は、南アフリカを離れる前にジェイコブ・ズマ大統領と面会している。
ジンバブエの政治危機は、今月6日のムナンガグワ氏の解任がきっかけとなった。ムナンガグワ氏が解任されたのは、ムガベ大統領が夫人のグレース・ムガベ氏を後継者に据えるためだとみられたことから、国軍指導部が強く反発。兵士らが蜂起しムガベ氏を自宅軟禁下に置いた。
憲法の規定によれば、現在も副大統領の座にあるフェレケゼラ・ムフォコ氏が新大統領になる。
しかし、ムフォコ氏はグレース夫人の支持者として知られ、与党はムフォコ氏の党内での職を解いたばかり。同氏は現在国内にはいないとみられている。議会の議長は、ムフォコ氏が不在のためムナンガグワ氏を指名したと述べた。
ムナンガグワ氏が新たな指導者に就いても国に変革は起きないのではないかと指摘する声も一部ある。
1980年のジンバブエ独立後の対立で多数の市民が死亡した際、ムナンガグワ氏は治安当局のトップを務めていた。ムナンガグワ氏は市民殺害への関与を否定している。
野党指導者のモーガン・ツァンギライ氏はBBCに対し、自由で公正な選挙を含む「新たな軌道」にジンバブエが乗るのを期待すると語った。同氏はムガベ氏が「立ち去り、最後の日々に休息できるように」すべきだと話した。
ジンバブエの著名な野党政治家デイビッド・コルタート氏はツイッターで、「暴君は排除されたが、独裁政治はまだ存在する」とコメントした。
アフリカ連合のアルファ・コンデ議長はムガベ氏退陣のニュースを受けて、「心から喜んでいる」と述べたが、退陣の形については遺憾の意を表明した。コンデ議長は、「彼(ムガベ氏)が裏口を通って出て行かなければならず、議会に見捨てられたのは残念だ」と語った。
街中で歓喜する人々
ムガベ氏は辞任するまで世界最高齢の国家指導者だった。ムガベ氏も自分を辞めさせられるのは「神のみ」だと語ったことがある。
議会でムガベ氏辞任の書簡が読み上げられると、与野党の議員は大声を上げ喜んだ。
活動家で議員に立候補しているビムバイシェ・ムスバブリ氏は、BBCとのインタビューで涙を流して喜んだ。「我々はこの男(ムガベ氏)に飽き飽きしている。いなくなって本当にうれしい。戻ってきたりしてほしくない。そう、きょうのこれは勝利だ」。
ムガベ氏の略歴と統治時代の主な出来事
- 1924年 英領南ローデシアのクタマに生まれる
- 1964年 ローデシア政府によって投獄される
- 1980年 ジンバブエ独立後の選挙で勝利
- 1996年 グレース夫人と結婚
- 2000年 国民投票で敗退。しかし、ムガベ氏を支持する民兵が白人所有の農場を襲い、野党支持者を襲撃
- 2008年 第1回投票でモーガン・ツァンギライ氏に敗れる。ジンバブエ全土でツァンギライ氏の支持者が襲われるとツァンギライ氏は決選投票から撤退
- 2009年 経済が崩壊状態のなか、ツァンギライ氏を首相に任命。同氏はその後4年間にわたって国民統一政府の困難な舵取りを強いられた
- 2017年 ムナンガグワ第1副大統領を解任。グレース夫人を後継者に据える準備だとみられた。国軍が介入し、ムガベ氏の辞任を要求した
(英語記事 Zimbabwe's Mnangagwa promises jobs in 'new democracy')