一般的には、「美味しそうに食べる男の人が好き」「食べ物を残す男の人はイヤ」という女性が多いけれど、私はどちらかと言えば、食べ物を残す男の人が好きだし、男の小食に関してはプラスなポイントでさえある。
「食べ物は粗末にしてはいけません」の理屈に納得いかない
私はフードファイターを目指していた時代があるほど大食漢で、どれだけ食べても「お腹いっぱいだ!」とは思ったことがなく、「もう食べられない」という時は、お腹が一杯だからではなく腹部の皮が伸びすぎて痛い場合のみなので、自分には満腹中枢がないような気がしている。
だから小食というのは不可解で「俺、小食なんだよね……」と、たかだか一人前も食べきれずに苦しそうな顔をして残している男性を見ると、もうミステリアスだし可愛いしでキュンとするしテンションが上がる。
しかしながら、私は結構、食べ物を残す。お腹的には全然食べられるのだけれども、私はすごく美味しいもの以外は食べたくないと思っているので、「食べるほどのものじゃない」と感じた時点で、「これは、生ゴミだ」と思うから、もう食べない。
「ごはんは残さず食べなさい。命を頂いているのだから、食べ物は粗末にしてはいけません」という一般論があるけれど、あれはかなり詰めが甘い理屈だと思う。
私が仮に、その豚肉になった豚の本人もしくは家族だったとする。どう考えても、豚肉にされた時点で物語は完結している。殺されてしまった時点で、食肉となった時点で、もうすでに最悪の事態だ。その後、調理されるかなど知ったこっちゃないし、知らない人に美味しく頂かれたところで、そんなことで「まあ、なら、仕方ないか」と思えるとは到底思えない。
誰かの胃袋に入ることと、ゴミ箱に入ること、彼らからしたら同じだ。 世間にとってもそうだ。私が食べて数時間後に便として出すことと、食べずに捨てて生ゴミになること、どう違うのだろう。その食べ物が私の分になった時点で、すでにそれは他人には食べられないものだ。
自分の胃袋に入れば価値があって、ゴミ箱に捨てるのは粗末にすることだ、と言う人は、どれだけ自分の命や身体を過大評価しているんだろうと思う。 私の胃袋もゴミ箱も、食べ物からしたら同じ、ただの行き先であり入れ物だし、美味しく頂けば大切にしていることになると思っているのなら、あまりにエゴだ。私が出荷された豚の家族なら「あなたたちの感想なんかどうでもいい。何も食べないで餓死して滅びてくれ」と思う。
人と一緒に食事をしたくない
しかしながら、私は空気を読める方のタチであり、もう26年間も人の顔色を第一に優先して生きてきたので、人前で食べ物を残すと「食べ物を粗末にしてる」と思われることは解っている。 だから、正直なところ、人と食事をすること自体が苦手だ。一緒に食べている人がいると、自分のタイミングで生ゴミ判定を下せないのがストレスだ。とくに手料理は困る。美味しい可能性がほぼないのに、残したいタイミングで残せないにも程がある。
また、料理人さんが作ってくれた本当に美味しいお料理の場合も、ますます人とは食べたくない。だって会話をしていると味がよく解らない。味わう時は視力さえも邪魔だと思っているのに。少しでも余計な情報があると味への集中力が落ちるから、美味しいものを食べる時は、目を閉じるか、無地の壁しか見たくない。目に入る情報を遮断し、息が漏れないようにして噛まないと、かなりの旨味が逃げてしまう。
美味しいものを食べている時に、話しかけないでほしいし、話したくない。それこそ、このタイミングで話し出す人は、こんなすごい料理をつくりあげたシェフの努力を粗末にしている、と思う。 人と食事をすると、必ず「旨味を感じ逃した」感があって、不完全燃焼な気持ちになる。
「皆で食べるごはんは美味しいね」なんて思ったことがない。皆で食べるごはんは楽しいけれど、美味しいかどうかでいうなら、一人で食べる方が絶対に美味しい(ちなみに、私が「美味しいものしか食べたくない」というと、「高級なものしか食べないの?」と訊かれたりするけど、ちゃんとレシピが極まっていれば安くても美味しいし、逆に火の入れ方や食材の扱いにベストを尽くせていないと高級店でも不満が残る。マックのアイスティーはある時期からとてつもなくクオリティが上がっていて、街で飲めるアイスティーの中で1番美味しいと思っているし、すき屋の三種のチーズ牛丼はすごく美味しいと思う。牛丼に関しては、鍋膳なら吉野屋、トッピング牛丼ならすき屋、ハンバーグ定食やカレーなら松屋がそれぞれ1番美味しいと思う。値段は関係ない。北海道のパーキングエリアのソフトクリームは神)。
そんな理由もあり、そもそも私は食事デートが苦手だ。だから私はデートするときはたいてい集合時間を遅く設定する。そうすれば、食事というプログラムをカットして、飲みからスタートすることができるから。
ケーキを食べた彼の衝撃の一言
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