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【大相撲】

稀勢ギブアップ 「休場していいですか」

2017年11月22日 紙面から

◇九州場所<10日目>

白鵬は上手投げで逸ノ城を下す=福岡国際センターで(三笘真理子撮影)

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 (21日・福岡国際センター)

 横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=が腰と左足の負傷のため休場した。3連続を含めて計5個の金星を配給し、9日目まで4勝5敗と苦戦していた。休場は4場所連続5度目。来年初場所での再起を目指すが、体調を万全に整えることができるか懸念される。優勝争いは横綱白鵬(32)=宮城野=が逸ノ城を上手投げで下し、全勝を守った。

      ◇

 「出るか、出すか、投げるか」。変幻自在の白鵬が選択したのは上手投げ。206キロの逸ノ城を豪快に転がし、初日から10連勝だ。余裕はあったかと聞かれると「まー、そーだね」。全くすきは見当たらない。

 2人で引っ張っていくとしていた稀勢の里が、この日から休場した。「(稀勢の里は)前半よかったけどね」と、どこか寂しそう。稀勢の里が横綱に昇進した春場所から、これで5場所連続で対戦がなくなったが「早かれ遅かれ、いつかあるんじゃないですか」と、実現の日を楽しみに待っている。

 4横綱のうち3人が休場。責任の重さは増すばかり。それでも、「(一人横綱は)初めてじゃないからね。責任は一緒。10年の間、いろんなことがあったし、経験、実績じゃないかな」と何ら変わることはない。

 9日目を終えて6人だった2敗力士は2人に激減した。残りが5日間あるとはいえ、史上初の大台となる40回目の優勝はほぼ間違いないだろう。八角理事長も「優勝するにはこういうとこをきちっと勝っていかないと、と分かっている人。そつのない相撲を取っている」と早くも太鼓判を押している。 (岸本隆)

◆4場所連続「腰部挫傷、左足前距腓靱帯損傷」

 全休明けで万全を期したはずの稀勢の里が、千秋楽を待たずに土俵から姿を消した。師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)によると、3日連続で金星を配給した9日目の取組後、横綱本人が「すみません。明日(10日目)から休場していいですか」とギブアップ宣言。4場所連続休場が決まった。

 診断書の内容は「腰部挫傷、左足前距腓靱帯(じんたい)損傷で約1カ月の安静加療を要す」。春場所で負った左の上腕部と胸部の負傷は休場理由から消えたが、新たに腰への不安が発生。名古屋場所で痛めた左足首とともに、安定感を支えた下半身を揺るがしているようだ。

 場所前から不安の芽はのぞいていた。7日の二所ノ関一門連合稽古では申し合いをわずか7番で切り上げている。その後は稽古休みを通常よりも1日多く取るなど、調整は目に見えてペースダウンしていた。

 歴代最多に並ぶ1場所5金星を配給した後での休場。昨年までの休場は2014年初場所千秋楽の1日しかなかっただけに、八角理事長(元横綱北勝海)は先輩横綱として「ずっと休んだ経験がないから、出れば何とかできるという甘い考えがある」と指摘する。

 角界の看板を背負う人気横綱だけに、一日も早く万全の状態を取り戻してほしいと誰もが願っている。同理事長も「(復帰場所は)優勝うんぬんより、勝ち越すくらいでいい。まず15日間、闘える体をつくること。まだやってくれる。やらないといけない」とエールを送る。これも、満身創痍(そうい)の稀勢の里を思いやるあまりだろう。

 負傷をおして劇的な優勝を遂げた春場所後は4場所のうち3場所が途中休場。田子ノ浦親方は「気持ちも体も闘える状態で、皆さんの前に立てるように」と完治を優先させる考えを示唆する。稀勢の里は、一から出直す覚悟で2018年を迎える。 (志村拓)

 

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