(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年11月17日付)
ベネズエラの首都カラカスの地元の公園に4歳の娘を連れて行き、真昼間に男が撃ち殺されるのを目撃した時、ディオミラ・ベセラさん(34)はもう国を去る時だということが分かった。
「あれが最後のとどめでした。翌日に発ちました」。元教師のベセラさんはこう話す。
急増する犯罪と壊滅的な不況で行き場を失い、日々、同じ決断を下すベネズエラ国民がどんどん増えている。
かつては中南米で最も豊かだった国を逃れ、医師や技師、トラック運転手、理学療養士などとして働いていた人々が今、ロンドンのスーパーで働いたり、マドリードでメイドとして働いたりしている。
また、米マイアミでウーバーの運転手をする人もいれば、コロンビアの首都ボゴタで住宅の塗装を手がけたり、バランキージャで窓磨きをしたりする人も大勢いる。
国民の大量脱出は、ベネズエラの多重国内危機と、おそらく実現する1500億ドル規模の債務デフォルトの国際的人道危機の側面だ。
今週、ロシアから部分的な救済を受けた後、ニコラス・マドゥロ大統領の率いる社会主義政府は、債務再編戦略は「ベネズエラ国民の継続的な幸福」に貢献していると主張した。
数字は別のことを物語っている。人口3000万人のベネズエラ国民のうち200万人もの人が今、国外に住んでおり、ベネズエラがハイパーインフレと危機、権威主義へ陥っていくにつれ、その数が急増している。
「体系的に国民を抑圧し、恐怖を植えつけようとする」政府の政策を記録してきたと言う国連によれば、2017年には5万人近いベネズエラ国民が亡命を申請したという。過去3年間の合計に匹敵する数字だ。