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石川

92歳 集大成のトキ 村本さん 7冊目の出版

「トキの保護活動の集大成に」と出版に込めた思いを語る村本義雄さん=羽咋市上中山町で

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「二度と絶滅させぬ」

 国際保護鳥トキの保護活動に人生の大半をささげてきた羽咋市上中山町の村本義雄さん(92)=日本中国朱鷺(とき)保護協会名誉会長=が、自身7冊目となる本「中国のトキを慕いて」を橋本確文堂(金沢市)から出版した。「活動の集大成に」とも位置付け「二度とトキを絶滅させてはならない。経験を生かしてほしい」と込めた思いを語った。(小塚泉)

 B6変型判で七十二ページ。「情熱は海を越えて」「中国との交流」など四章から成る。親交のある常秀雲・前中国陝西省野生動物保護協会副秘書長の撮影も交えて八十枚余りの写真で、中国の繁殖地を中心にトキの姿を紹介している。

 六十年以上になる保護活動。一九九三年に民間外国人で初めて中国洋県の繁殖地へ入ることを許されて以降、二十回余り訪中し、環境保護のために田植えを手伝ったり、小学生に机を寄付したりと草の根交流で信頼関係を築いた。トキが巣ごもりする奥山へも入り、警戒心を抱かせないようにテントを張り、トキの交尾や舞う姿、餌を運ぶ姿などを撮影した。

 トキの骨格のスケッチやコラム五本も収録。採取した羽毛が年月とともに白く退化したことを紹介し「解明された資料はなく、今後の研究のきっかけにしてほしい」と飽くなき探求心ものぞかせる。村本さんは「読みやすい。面白い写真を撮りましたねと評価をいただいています」と喜ぶ。山階鳥類研究所の尾崎清明副所長が序文を寄せた。羽咋市や新潟県佐渡市の小中学校、中国洋県の小学校のほか外務省や環境省、国会図書館、国立科学博物館などに寄贈した。

 トキの生息地に生まれ、トキのことを思わない日はない。伊勢神宮の式年遷宮ではトキの尾羽根を奉納し、九八年には叙勲を受けた。大病も乗り越えて「トキに生かされてきた」と常々口にする村本さん。あとがきをこう結んだ。「私の命を育てた中国のトキとともに」と。

 

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