外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情

技術は世界一、ではサービスは?

新幹線の技術は日本という国の「宝」なのに…「もったいない!」と、アトキンソン氏が主張する理由とは?(撮影:今井康一)
安倍晋三首相肝いりの「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」委員や「日本政府観光局」特別顧問としても活躍しており、著書『世界一訪れたい日本のつくりかた』を上梓したデービッド・アトキンソン氏に、日本の「新幹線」が抱える問題について寄稿してもらった。

いちばん大切な路線にWi-Fiがない意味

先日、JR東日本とJR西日本が2018年の夏ごろまでに、新幹線の車内で訪日外国人向けのフリーWi-Fiを整備して、順次サービスを開始していくと報道されました。

これまでは2020年までに整備するという話でしたから、このようにスピード感をもって観光対応がなされていくのは、非常に喜ばしいことだと思っています。

しかし、残念なことが1つあります。それはJR東海の対応です。

「東京、京都、大阪」は「ゴールデンルート」と呼ばれ、訪日外国人観光客に最も人気のある、極めて重要なエリアです。実はこれらを結ぶ東海道新幹線をもつJR東海では、フリーWi-Fiが整備されていないのです。

日本の新幹線には、安全面や運行面において世界屈指の技術が用いられていることは言うまでもありません。では、なぜその強いこだわりを、「ユーザーの快適さ」を高めることに用いられないのでしょうか

私には、JR東海という企業が「つくり手がいいと思うものをつくって消費者へ提供する」という、プロダクトアウトの発想が強すぎるからとしか思えません。要するに、自分たちが誇りに思っているスピードや正確性などという基礎的な技術は高度に磨き上げていますが、新幹線のユーザーの快適さなどは軽視しているのです。

世界一の新幹線をつくれる会社が、フリーWi-Fiの整備くらい、できないはずがありません。要は優先順位が低いだけです。

訪日外国人観光客のためにフリーWi-Fiを整備しないだけで、ずいぶん厳しい批判だと思う方もいるかもしれませんが、これは消費者軽視どころの話ではありません。実は、日本を代表する高速鉄道が「国策」にブレーキをかけているという、極めて深刻な問題でもあるのです。

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  • NO NAME86c9880be84f
    ジャパンレールパスののぞみ排除は営利企業としては当然の判断ではないか?
    そもそも不当に安く、JR東海への配分も少ない、政治も絡んで値上げも廃止もできない。これでのぞみにバンバン乗られては、JRとしては減収になるし、席を取れなくなる日本人客にも迷惑だ。
    そもそもジャパンレールパスが廉売されている分を、正規料金で利用する日本人が負担していることを認識すべきだ。観光振興は結構だが、その費用を一民間企業に負担させ、ツケが日本人客に回ってくる事実をスルーしてはならない。
    up47
    down4
    2017/11/23 09:36
  • NO NAME5e0edf68ee90
    外国人観光客なら飛行機を使わず現地の売りの電車に乗ろうとする事も多いし、飛行機では不要でも、新幹線位の所要時間下なら確かにWiFi環境は期待されるところ。但しJR東海側のコメントも載せず一方的で、勝手に興奮している記事に感じる。ここまで調べてるんなら、何故に会社側にインタビューしない?
    up32
    down6
    2017/11/23 09:14
  • phj047497a94775
    防災は私の専門

    コラム氏へ
    新幹線に限らず、日本にはいわゆる消防斧(fireaxe)がありません。欧米を主体として多くの国のビルに設置されている斧のことです。

    これは実は日本の法律は「非常時の緊急行動を殆ど認めない」ことから来ています。非常時でも新幹線の窓や他人のビルの扉を壊すことができるのは「消防官など公権力だけ」なのです。

    もし個人が勝手に新幹線の窓を壊すと「それが妥当な行動であったかどうか」について器物損壊罪と併せて審理されるのです。

    今回のコラム、多くの点で賛同いたしますが、斧については「法律の根幹」に関わることですので、なかなか難しいでしょう。

    なお、新幹線にも消火器などの設備は設置されています。
    up19
    down0
    2017/11/23 09:48
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