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【社会】

森友国有地、ずさん算定 「適正」政府主張揺らぐ

 大阪府豊中市の国有地が、ごみ撤去費用として八億円を差し引いて学校法人「森友学園」に売却された問題で、会計検査院は二十二日、土地の売却額がずさんに算定され「慎重な調査検討を欠いた」とする検査結果報告を参議院に提出、公表した。ごみ処分量の推計根拠が定かでなく、実際の処分量は推計の三~七割だった可能性があるとした。

 この問題では安倍晋三首相の妻の昭恵(あきえ)氏が、国有地に建つ予定だった小学校の名誉校長に一時就任。行政側が忖度して不可解な値引きにつながったとの疑惑が浮上した。検査院は権限上、この点について踏み込んでおらず、首相に説明を求める声が一層強まりそうだ。

 検査結果を受け、自民党の岸田文雄政調会長は記者会見で「国民に疑念があるなら政府はしっかり答えないといけない」と述べた。財務省の担当局長として国会で「資料は破棄した」といった答弁を繰り返した佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官はコメントしなかった。

 土地売却には財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局が関与。土地評価額九億五千六百万円からごみの処分費用を差し引き、一億三千四百万円で売却された。二十二日の報告書では、値引き理由となるごみの処分量の推計方法は、ごみが埋まっている深さ、サンプルとした土壌にごみが含まれる比率などについて根拠が確認できなかった。

 検査院は過去に行われた調査の結果から、ごみの量を複数の方法で推計。最も少ない場合で六千百九十六トン。他の推計でも大阪航空局が算定した一万九千五百二十トンを下回った。

 最終的な値引き額である約八億二千万円はごみの推計量に一トン当たり二万二千五百円の単価を掛けて算出したが、そもそも単価をどのように決めたのかを示す資料が残っていなかった。検査院は検査の過程で撤去費用を二億~四億円程度と見積もり、値引き額が最大約六億円過大と試算していたが、報告には妥当な値引き額を盛り込まなかった。

◆真相解明 首相に説明責任

<解説> 森友学園への国有地売却額の算定をずさんとした会計検査院の検査結果報告で、「適正だ」と言い続けてきた政府の主張は大きく揺らいだ。第三者を入れた調査委員会設置を求めた野党議員らを、安倍晋三首相自ら「検査院が調査する」と突っぱねてきただけに、首相には真相解明と説明責任があらためて求められる。

 不可解な値引きが実現した過程に、行政側の忖度があったのではないか。学園を巡っては、安倍首相の妻の昭恵氏が小学校の名誉校長に就いていたことや、首相夫人付きの職員が国有地について財務省に照会した内容を学園側に伝えていたことなどから疑いが浮上し、加計学園問題とともに国民の関心を集めた。

 しかし、首相はこれまで、昭恵氏は関与していないと強調し、与党も国会での昭恵氏の証人喚問を拒み続けた。財務省の佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)は「適正な価格で売った」と繰り返す一方で、「交渉記録は破棄した」と根拠を示さなかった。

 検査院の報告でも、算定の根拠などを示す資料は残されていなかったとされる。「誰」の「どんな」意図が働いたのか、忖度はあったのか-。検査院はこの点には踏み込んでおらず、国民の最も知りたい疑問は依然、解消されていない。

 「適正な価格」という政府側の強弁が崩れた今、疑惑は深まった。市民団体からは佐川氏らに対する告発状が検察に出ており、今後は捜査の行方も注目されるが、まず必要なのは、安倍首相はじめ関係者が自らの口で、真実を語ることだろう。 (望月衣塑子)

<会計検査院> 国の予算が適切に使われているかをチェックする憲法上の機関。国会や裁判所に属さず、内閣に対しても独立している。中央省庁や国が出資する法人などの会計を調べて内閣や国会に報告する。不適切な経理を指摘するだけでなく、是正や改善も要求できる。法令に定められた国の決算などに関する検査の他、国会からの要請に基づく個別検査も行う。森友学園問題では参院が検査を要請していた。

(東京新聞)

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