ホワイトハンズ大学   


 2000年代:実践期

 「障害者の性」をテーマにした一般向けの書籍が数多く出版されるようになる。
 なかでも『セックスボランティア』は大きな話題を呼び、この問題の社会的な認知度を高めることに貢献した。

 この出版と前後して、「障害者専用」をうたったデリバリーヘルスが、全国各地で開業。
 「実践期」の幕開けとなるが、その多くは経営的に成り立たず、短期間で消滅した。

 2000年代終盤には、「性の介護」の普及を目指して、啓蒙の枠を超えて、実践的、かつ戦略的に活動する
 初めてのサービス事業体=ホワイトハンズが登場する。


●2000年

◆3月:『知的障害のある人の性とその周辺を理解する』(全日本手をつなぐ育成会)出版。

◆6月5日:朝日新聞埼玉版にて、埼玉県越谷市内にある「障害者歓迎」の性風俗店が紹介される。

◆7月3日:東京ウイメンズプラザにて、ワークショップ

 『バリアフリーな性教育ソフトをつくろう!~バイターズといっしょ。』開催。

●7月10日:『歴史と文化に見る身体障害者』(松尾智・明石書店)出版。

 第四章に、「身体障害者のセクシュアリティ―」(脊髄損傷者の結婚と性交渉に関するアンケート調査)収録。

 


◆12月1日:福岡県福岡市中央区にて、障害者専用の無店舗型性風俗営業(デリバリーヘルス)

 「ビアン」開業(代表:津野喜樹)。

◆12月16日:東京都障害者福祉会館にて、障害学研究会関東部会 第11回研究会開催。

 テーマ「セクシュアリティ研究の覚え書き~方法と課題」 発表者  旭洋一郎(長野大学)


●2001年

◆1月17日:東京都渋谷区にて、障害者専用のデリバリーヘルス「エンジェル」開業(代表:結城薫代)。

◆3月9日:山形地検が、酒田市の障害者作業所・つくしんぼうの元施設長と元指導員を、

 知的障害の利用者に売春をさせた容疑で起訴。

◆5月:『大阪ソーシャルサービス研究紀要』創刊に「障害者のマスターベーション介助をめぐる『語り』

 ~介助者への聞き取り調査から~」(大阪体育大学短期大学部 草山太郎)掲載。

◆夏:大阪にて日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会のミニシンポ「介護とセクシュアリティ」が開催される。

 (出演者:大阪体育大学短期大学部講師・草山太郎、大阪国際大学助教授・橋本義郎など)

◆8月13日:山形地裁が、酒田市の障害者通所施設・つくしんぼうの元所長と職員2名に

 売春防止法違反で懲役1年、罰金10~20万円の有罪判決を下す。

◆『ここまできた障害者の恋愛と性』(障害者の生と性研究会・かもがわ出版)出版。

 

●2002年

◆東京にて、障害者専門風俗店「エンジョイクラブ」開業(~2007年)。

◆2月:障害者の性をめぐるエッセイ集『UNIVERSAL SEX』(ホーキング青山・海拓社)出版。

◆6月1日:東京都中野区東中野にて、障害者の性をテーマにした映画「ナショナル7」上映。

◆10月:『素肌で語り合いましょう』(小山内美智子・エンパワメント研究所)出版。

◆11月9日:香川県高松市にて、ミニシンポジウム「クサいものにはフタ?~障害者の性の現状について」開催

 (進行役:松木完之氏)

   

●2003年

◆東京都にて、障害者専用のデリバリーヘルス「一心」開業。

◆長崎県にて、 知的障害者の出会い支援、交際支援や性教育、結婚支援や子育ての支援まで、

「愛する人との暮らし」を実現するために必要な支援活動を行う、南高愛隣会・結婚推進室「ぶ~け」設立。

◆4月~11月:大阪にて、「知的障害者と支援者の性のワークショップ」開催。

 主催:NPOエンパワメント・プランニング協会

 講師:黒瀬清隆(性教育の相談組織『ハートブレイク』)、黒瀬久美子(保健師)

◆7月4日:東京都日野市の七生養護学校に、土屋たかゆき都議(民主党)、古賀俊昭都議(自民党)、

 田代ひろし都議(自民党)、教育庁職員と河合龍司記者(産経新聞)が視察に訪れ、同校の職員が行っていた

 性教育(「こころとからだの学習」)を侮辱・誹謗中傷する事件が起こる(七生養護学校事件)。

◆7月5日:産経新聞朝刊において、「過激性教育 都議ら視察」「あまりに非常識 口々に非難」の

 見出しのもと、七生養護学校の性教育教材の写真を掲載した記事を掲載。

 同記事は、「都議らは『まるでアダルトショップのよう』と口々に非難した」と報じている。

◆7月22日:「七生養護学校事件」に対して、性教協などの民間教育団体や教職員組合をはじめ

 全都25の労働組合などの組織・団体の共催・協賛で、「教育への不当な介入を許さない7・22緊急集会」が開催。

◆10月:七生養護の関係者と日野市民による「七生養護学校の教育を支援する日野市民の会」発足。


●2004年

◆1月13日:鹿児島県出水市にて、「せせらぎの郷」に通所している知的障害の少女2名が、

 社会福祉法人稜雅会の理事によって強姦される事件が起こる。

◆1月31日:「七生養護学校事件」に関して、前七生養護学校長の不当処分撤回を目指して、

 「不当処分撤回!ゆきとどいた障害児教育の発展をめざす会」が結成される。

◆2月28~29日:国立オリンピック記念青少年センターにて、「第9回障害児性教育セミナー」開催。

 講演:田中良三『輝け青春!!~見晴台学園の実践の中から』

 特別報告:中川重徳(弁護士)『性教育への攻撃について』

◆3月:「七生養護の教育を壊さないで~日野市民からのメッセージ~」刊行。

◆3月21日:長崎市にて、デンマークの「障害者の性」に関する事例を学ぶ「障害者の性」講演会開催。

 (講演者:千葉忠夫氏、元オスロ大教授のビギャット・キャベック氏、

  長崎大学教育学部付属養護学校の川尻暁子氏)

◆3月31日:水戸地方裁判所民事部が、水戸事件民事裁判において、三人の原告が訴えていた

 「性的虐待」「日常的暴行」などについての事実を認め、赤須被告に対して合計1500万円の賠償支払いを

 命ずる判決を出す。

 ⇒「知的障害者の犯罪被害供述はあいまいであり、信憑性が無い」という通例を覆して、

 性的虐待を受けた知的障害者が勝訴した、画期的な判決であるとされている。


◆4月:東京都国立市にて、「知的障害者と支援者の性のワークショップ」開催。

 代表:安積遊歩

◆5月9日:茨木市市民総合センターにて、障害学研究会関西部会第21回研究会開催。

 報告者:松永真純(大阪人権博物館学芸員)
 
 テーマ:障害とセクシュアリティ~企画展「性的少数者の現在」を担当して考えたこと~

◆6月30日:『セックスボランティア』(河合香織・新潮社)出版。

 

◆8月17日:朝日新聞に「名古屋盲人情報文化センター」(名古屋市港区)が、

 視覚障害者向けの官能小説の朗読CDを発売した、という記事が掲載。

◆女性障害者への強制不妊手術を取り扱ったドキュメンタリービデオ

 『忘れてほしゅうない―隠されてきた強制不妊手術』(24分、制作・著作:優生思想を問うネットワーク)発売。

◆9月26日:ウイングス京都にて、『忘れてほしゅうない―隠されてきた強制不妊手術』上映会開催。

 (主催:優生思想を問うネットワーク)

◆10月30日:「ぼくに愛のチャンスある?~障害をもつ若者たちが語るセックスと恋~」(明石書店)出版

 


●2005年

◆知的障害者のための自立生活ハンドブック『性・say・生』(全日本手をつなぐ育成会)発行。

◆3月5~6日:日本福祉大学名古屋キャンパスにて、「第10回障害児性教育セミナー」開催。

 講演Ⅰ:河原正実 「『障害者が性と生を語り始めた』から10年 今、障害者の性と生は…」

 講演Ⅱ:小森淳子 「母として 女性として“自分”らしく!」

◆4月5日:中日新聞に「名古屋盲人情報文化センター」(名古屋市港区)が、

 視覚障害者向けの官能小説の朗読CDを発売した、という記事が掲載。

◆5月12日:「七生養護学校事件」で、教員ら27名が原告となり、東京都、都教委、3名の都議、産経新聞社を

 東京地裁に提訴。

◆6月:『セクシュアリティの障害学』(倉本智明・明石書店)出版。

◆7月24日:アピオ大阪にて、優生思想を問うネットワーク2005年度講座第1回

 「『放射線照射による不妊化』問題を考える」開催。

 講師・真野京子(種智院大学非常勤講師)

◆8月31日:『恋する車イス』(木島英登・徳間書店)出版。

 

◆9月10日:『お笑い!バリアフリーセックス』(ホーキング青山・ちくま文庫)出版。

◆11月:『検証 七生養護学校事件―性教育攻撃と教員大量処分の真実』(金崎満・群青社)出版。

◆12月:『私は障害者向けのデリヘル嬢』(大森みゆき・ブックマン社)出版。

       

◆障害者の福祉を語る志の会『障害のある人々の結婚・就労・くらしに関する研究』(代表者・高松鶴吉)発表。

 知的障害者の性や結婚が、周りの支援者によって大きく左右されている実態が明らかになる。


●2006年

◆大阪で、障害者・高齢者専門風俗店「ハニーリップ」開業。

◆3月18~19日:東京グランドホテルにて、「第11回障害児性教育セミナー」開催。

 記念講演「障害児者の性とコミュニケーション」土岐邦彦(岐阜大学)

◆7月20日:『人間発達と性を育むー障害児・者の性』出版(“人間と性“教育研究協議会編・大月書店)

 

◆8月:合資会社百識(東京都杉並区)が、要介護者への性介助情報サイト「ピーチ・ケア」を開設。

◆11月:『知的障がい児のための「こころとからだの学習」―七生養護学校性教育裁判で問われていること』

 (『知的障がい児のための「こころとからだの学習」』編集委員・明石書店)出版。


●2007年

◆3月1~2日:日本福祉大学名古屋キャンパスにて、「第12回障害児性教育セミナー」開催。

 記念講演「障害のある思春期・青年期の人たちの性と生」木全和巳(日本福祉大学)

◆4月13日:TBS『R30』マンスリー企画にて、セックスボランティアが取り上げられる。

◆12月20日:新潟県新潟市の「にいがた自立生活研究会」の勉強会(新潟青陵大学)にて、

 坂爪真吾がホワイトハンズの事業計画書を発表。


●2008年

◆1月17日:TBSにて、知的障害者の母親の子育てを描いたドラマ『だいすき!』放送開始(~3月20日)。

 

◆2月28日:東京地裁にて、「『ここから』裁判」(七生養護学校事件)の口頭弁論が行われる。

 同日、「金崎裁判」で勝訴の判決が出る。

 *七生養護学校の校長を1998年~2002年にわたって務めた金崎満氏は、

 「そこで行われていた教育が不適切である」として、03年9月に停職一ヵ月の懲戒処分と

 校長降格の分限処分を受けた(当時は、都立板橋養護学校校長)。

 「金崎裁判」は、その処分取消請求の裁判。

◆3月1~2日:埼玉県民活動総合センターにて、「第13回障害児性教育セミナー」開催。

◆4月1日:男性重度身体障害者の射精介助に特化した非営利団体「ホワイトハンズ」営業開始。

◆6月16日:上越タイムスに、ホワイトハンズ代表のコラム『障害者の性に関する尊厳と自立』掲載。

◆8月1~3日:第27回性教協全国夏期セミナー(あいち・ぎふセミナー)にて、分科会「障害者の性と生」開催。

◆8月9日:全国障害者問題研究会第42回全国大会in和歌山にて、分科会「障害のある人の性と生」開催。

◆10月7日:新潟インタビュー雑誌『Life-mag』に、ホワイトハンズの代表インタビュー記事掲載。


●2009年

◆福井県福井市にて、「障がい児・者の「性」を学ぶ会 《ゆいの会》」発足。

◆1月3日:新潟県のラジオ局:FMPORT「遠藤麻理のライフステーション」に、ホワイトハンズが出演。

◆1月6日:福岡県にて、高齢者・障害者介護デリバリーヘルス『さくら苑』開業。

◆1月25日:『完全「性の介護」バイブル』(ホワイトハンズ)出版。

◆2月24日:月刊誌『裏モノJAPAN』(鉄人社)2009年4月号に、脳性まひの障害者の風俗利用体験記が掲載。

◆2月28日:エドュカス東京にて、「第14回障害児性教育セミナー」開催。

◆3月12日:東京都立七生養護学校(日野市、現七生特別支援学校)の元教員ら31人が、

 学校で行われていた独自の性教育への厳重注意・教材没収を、教育への不当な介入だとして、

 都や都議3人(田代博嗣、古賀俊昭、土屋敬之)らに約3000万円の損害賠償などを求めた訴訟で、

 東京地裁(矢尾渉裁判長)が210万円の支払いを命じる判決を出した。

 矢尾裁判長は「都議らの行為は政治的な信条に基づき、学校の性教育に介入・干渉するもので、

 教育の自主性をゆがめる危険がある」と指摘。

 さらに「教育内容の適否を短期間で判定するのは容易ではなく、いったん制裁的な取り扱いがされれば

 教員を萎縮させて性教育の発展が阻害されかねない」と述べ、

 都教委が事前の指導や研修などをせずに教員を厳重注意したのは、裁量権の乱用に当たると判断した。

◆4月10日:新潟市市民活動支援センターにて、「性の介護」の理念・理論を講義する

 ホワイトハンズ大学【性機能ケア概論】開講(毎週金曜日開講~7月10日まで)

◆6月27日:「にいがた女と男フェスティバル2009」にて、ホワイトハンズが

 ワークショップ「性の介護はオンナの仕事?

 ~『性の介護』の現場からみる、男女共同参画社会の理想と現実~」を開催。

◆7月:「<しょうがい>のある子どもたちの思春期の豊かなセクシュアリティを育むために」

 (木全和巳・性教協障害児サークル編集)発行。

◆7月6日:新潟の地元紙:新潟日報に、ホワイトハンズの活動紹介記事が掲載。

 「障害者の性」問題に関して、地元の障害者施設の職員、福祉系大学の教授、自立生活センター、

 『セックスボランティア』著者の河合香織といった各方面の有識者・専門家のコメントを集めた、

 包括的かつ多角的な記事として掲載された。

◆7月17日:第1回「『性の介護』検定」開催(主催:ホワイトハンズ)。

◆8月1~3日:第28回性教協全国夏期セミナーin熊本にて、分科会「障害者の性と生」開催。

◆8月8~9日:全国障害者問題研究会第43回全国大会in茨城にて、「障害のある人の性と生」分科会開催。

◆10月15日:季刊「セクシュアリティ」にて、「障害のある人の性と生」特集が組まれる。

 

◆10月23日:東京新聞朝刊「この人」欄にて、ホワイトハンズ代表(坂爪真吾)の紹介記事が掲載。

◆10月27日:中日新聞「この人」欄にて、ホワイトハンズ代表(坂爪真吾)の紹介記事が掲載。

◆11月19日:信州大学医学部保健学科の講義「ヒューマンセクシュアリティ」にて、

 ホワイトハンズ代表の坂爪真吾が、「『性の介護』起業奮闘記 ~守れ!大切な人の射精(みらい)を~」と題して

 「障害者の性」の歴史と現状、課題と展望に関する講義を行う。

◆11月20日:長野大学社会福祉学部にて、 ホワイトハンズ代表の坂爪真吾が、

 「『性の介護』起業奮闘記 ~守れ!大切な人の射精(みらい)を~」と題して

 「障害者の性」の歴史と現状、課題と展望に関する講義を行う。

◆11月21日:「NHK社会福祉セミナー」2009年12月~2010年3月号で、

 「ありのままに 障害者の性」という巻頭特集が組まれる。

 

 執筆者:河原正実(「障害者の生と性の研究会」代表)、日暮かをる(元七生養護学校教諭)、

 玉木幸則(メインストリーム協会副代表、NHK教育テレビ「きらっと生きる」司会者)、

 坂爪真吾(ホワイトハンズ)

◆11月21日:新潟日報夕刊にて、共同通信(外信部・船越美夏)の記事で、オランダにおける

 売春と「障害者の性」問題が取り上げられる。障害者向けの性サービスを仲介する団体として、

 「社会性愛仲介所」が紹介された。2009年時点、顧客として約2,000人、セックスワーカーとして

 約1,500人が登録しているという。


 2010年代~

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