11月も下旬になると、季節は徐々に秋から冬へ。色鮮やかな紅葉が散るころには、街の様子も一変し、どこか「慌ただしさ」を強く感じるようになる。
つい数日前まで見られた、色づいた街路樹に向かってスマホを構える人の姿はどこへやら。街歩く人たちは皆、背中を丸め、足早にどこかへ向かって歩いていく。すっかり寒くなったからか、はたまた師走を前に忙しいのか。あるいは、クリスマスを前に浮き足立っているのかもしれない。
そんななか、せかせかと歩道を行き交う人たちの姿をぼーっと眺めつつ、喫茶店のカウンター席で作業に取り組む自分もまた、なんとなく落ち着かない気持ちでいた。
必要な仕事をこなしつつ、それでもなお、次々と積み上がっていくタスク。「やるべきこと」はなんとかできていても「やりたいこと」ができていない現状に、胸の内のモヤモヤは大きくなるばかり。最近は集中力が持続せず、疲労感もたまりつつあるように感じる。
……このままではいけない。何か気分転換になりそうな活動をして、このモヤモヤをどげんかせんといかん。気持ちをリフレッシュして、年末を乗り切りたい……!
そう、「遠くに行きたい」。
己の今の欲求を一口に表すなら、まさしくこれに他ならない。慌ただしい都会の日常からは物理的にも精神的にも距離を置いて、自然豊かな非日常の空間でのんびり過ごしたい……!
――というわけで、キャンプ生活、始めました。
※以下、『どうぶつの森 ポケットキャンプ』のざっくりとした感想です。
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「かわいい」の無限ループを楽しめるキャンプ場生活
遠路はるばる訪れたのは、どこぞの寂れたキャンプ場。施設の手入れもろくにできていないらしく、肝心のキャンプ場はほとんど更地の状態。これはこれで、ある意味では「自然」な空間であるけれど……おい、話が違うぞ!
人の管理が行き届いた緑豊かな空間でまったりと羽根を伸ばすことができるのかと思いきや、とんだ「自然」である。ワイルドなライフがのさばっていそうな場所じゃないか。……え? キャンピングカーはあるから問題ない? 「ここをキャンプ地とする!」ってか? わぁい!
しかもそこには、見慣れた顔がいるじゃありませんか。
しずえ氏! しずえ氏じゃないか!
過去、引っ越し先の某村で半強制的に村長にさせてくれやがった確信犯ではあるものの、いざ一緒に働いてみれば、24時間フルタイムで役場勤務かつ秘書もこなすというあまりの有能社畜っぷりに同情し、オフィスラブにも発展しかねなかった、愛しのしずちゃんじゃないか!
聞くところによれば彼女は現在、このキャンプ場の管理をする立場にあるとのこと。そして今日、こうして訪れた自分が「管理人」となった暁には、キャンプ場の発展のための手伝いをしてくれる――との話らしい。……あれ? 既視感? 前もこんなことなかった? ってか、村は?
……まあいっか! しずちゃんの頼みだし!!
しかし「キャンプ場の管理」とは言うものの、何ら難しくはない様子。
というのも、キャンプ場周辺の自然が育む果物・魚介・虫などを掻っ攫い、それを偶然に通りがかったカワイコチャン(どうぶつ)たちに提供し、キャンプ場への滞在を促進するだけなのだ。……うむ、 “村” での経験が生きている。
ただし、彼ら彼女らの勧誘は一筋縄ではいかない。単にモノを贈り、好感度を上げるだけではダメで、長期滞在を誘発する「きっかけ」が必要なのだ。
そのためには、まずアイデアを生み出し、コンセプトを定め、顧客の好みをリサーチしたうえで商品開発に取り組み、実績を示す必要がある。ユーザー目線のマーケティングなくして、結果にコミットすることはできない――ここでもやはり、村での経験が生きている。
なるほど、俺の嫁……じゃなかった、しずちゃんがいるのにも納得できる。
しかし、この規模のキャンプ場、管理費はどうしているのか――と思いきや、なんとキャンプ場内に鉱山があり、採掘場としての機能も備わっているらしい。……なにそれすげえ!
採掘の効率はさほどではないものの、金銀にルビーやサファイアもざっくざく。換金作業はすぐに済むため、資金には事欠かない。それにおそらく、僕らがキャンプ場でキャッキャウフフしているあいだにも、ハニワくん親方が採掘作業に取り組んでくださっているのでしょう……。
ここで採れる素材を使い、ピッケルをクラフトして効率を高められないものか……と思ったけれど、「そういうゲームじゃねえから!」という声が天から聞こえてきた。……はて? ゲーム?
ところ、そのように「管理人」として資金を気にしていると、「結局は都会の生活と変わらないんじゃね?」とふと思うこともある。
「キャンピングカーをカスタマイズしてくれるの? わぁいよろしく!」と頼んだら、作業終了後に「支払いは10,000ベル、ローンでよろしこ」と言われる、この感じ。……契約内容はしっかりと確認しないとダメだぞ! たぬきちと約束だ!(ぽんぽこ)
というか、そもそもが「管理人」である。休暇で訪れたつもりのキャンプ場だったけれど、やっていることはビジネスだ。降って湧いた最高責任者の職務ではあるものの、資金を運用し、商品を開発し、ユーザーを増やし、収益の最大化を図るのは必然。今日も1日がんばるぞい。
それでも結局、村の発展にせよ、キャンプ場の管理にせよ、笑顔のしずちゃんに頼まれたら、それをやらないわけにはいかないのだ。そのように、この世界は回っている。
もちろん、この世界ならではの魅力もある。どうぶつたちとの交流があり、笑顔があり、和やかで楽しい(かわいい)コミュニケーションが巡り巡っている。物々交換ですらない、贈り贈られを繰り返す善意の経済圏が、このキャンプ場を形作っているのだ。
考えてみれば、ここは「キャンプ場」であるにもかかわらず、「利用料金」が明示されていない。管理人自らが他のキャンパーを勧誘し、場所を用意してあげており、「いくら払え」とは言っていない。はたから見れば、慈善事業である。
たまに金品のやり取りはあるものの、それは何らかの契約に縛られるものではない(ように見える)。良い物があったから、余っていたから、いつも頑張っているからという理由でプレゼントをくれる彼ら彼女らは、もはやユーザーではなく、「友達」と呼べる存在なのではなかろうか。
もしかしたらあのお金が「料金」なのかもしれないし、「寄付」という可能性もあるし、あるいは「クラウドファウンディング」的な何かであってもおかしくないとは思うけれど。……まさか、「友達料金」なんてことはn
まだ1日しか経っていないはずなのに、もう長い時間、この場所で過ごしているようにも感じるから不思議だ。わずか1日でこんなにもモノが増え、キャンピングカーが豪華になり、それぞれ100匹近くも魚と虫を捕まえ、18人ものどうぶつと出会い、交流した。
当初こそ、まるで「おつかい」のような作業の繰り返しに、あまり長続きしないと思っていたキャンプ場生活。けれど、しばらくするとそれも慣れて、どうぶつたちと話すのが楽しくなってきた。……だって、みんな、むちゃくちゃかわいいんだもの!!
こうして文字にすると、あまりにも濃密過ぎる1日。だけど、まだはじまりの1日目。
なんともゆるく、和やかで穏やかなキャンプ場を、かわいいどうぶつたちのためにも発展させるべく、明日もまたがんばろう。管理人の朝は早いのだ。