中国人から見たXperia
日本ブランドで有数の国内シェアを持つXperia。先日、「中国人から見た、日本のケータイ・スマホ衰退史」で「いまではソニーだけが僅かにグローバル展開の影をとどめているだけで、中国で日本の携帯電話はほぼ絶滅した」との話をお伝えしましたが、世界最大のスマホ市場・中国でXperiaはどういう扱いなのか?
北京商報でXperiaの中国での「戦況」について、詳しい分析記事が報じられていたので、ご紹介します。
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反攻のきっかけを掴めないXperia
ソニーの2017年度上期の決算報告によれば、営業収入は前年同期比22.1%の増収で、全体の事業から見れば復活しているように見えます。しかし北京商報の記者は、ソニーの携帯電話事業が依然として赤字状態なのを発見。
以前は一貫してミドル・ハイエンド市場に集中していたソニーのスマホは、新製品発表会でもコストパフォーマンスを強調するようになりましたが、中国市場でブランド力のある「ソニーのXperia」は、ずっと反攻のきっかけを掴めずにいると指摘します。
「平民化」するXperiaの価格
ソニーが発表した2017年度第2四半期の決算報告(連結)によると、当期のソニー営業収入は2兆0,625億円、前年同期比で22.1%の増収。株主に帰属する四半期純利益は1,309億円と、前年同期比で2,602.4%の増益になりました。
しかし、ほかの事業の綺麗な「成績表」と比べて、携帯電話事業は依然として泥沼の中にあると指摘します。ソニーのモバイル・コミュニケーション(MC)分野 は前年同期比1.9%の増収となりましたが、営業利益は25億円の赤字でした。
ソニーは「スマートフォンの販売地域ミックスの変化、主要部 品の価格の上昇、及びコストの米ドル建て比率が高いことによる米ドル高の悪影響などによるもの」と説明しています。これについて、北京商報の記者はソニーのスマホ部門担当者に質問の連絡をしたものの、回答は得られなかったとのことです。
ソニーは最新フラッグシップ機「XperiaXZ1」の中国版定価は3,999元(1元=約17円)でした。概ね、中国国内メーカーのフラッグシップ機と同等の価格設定です。
ところが、ソニーの高級Xperiaとして見ると、どうでしょうか。これまでXperiaのフラッグシップ、さらには準フラッグシップも、4,299元を下回ったことはありませんでした。しかも、4,299元はXPERIA SLT26iの販売価格です。中国の物価上昇率が毎年2%程度で推移していることを合わせて見れば、当時の4,299元と今回の3,999元との差は、さらに大きくなります。
しかも、今年以降スマホ価格が相当上昇していることを加えれば、ソニーモバイルが今回発表したXperia XZ1の定価は、国際ブランド「Xperia」が「平民化」したものと分析します。
ファンはいるが、下がる人気
過去のXperiaは常にハイエンドの地位を占めていました。北京商報の記者が市場調査をしたところ、北四環(北京の環状四号線北側)の家電モール、順電店内の店員は「ソニーのスマホは取り扱っていない」と答え、店内の買い物客も「アップルとサムスンを除き、多くの人が国産(=中国産)スマホを選択するようになってきている、ソニーはもう歴史になった。自分も、まだこんなブランドがあったなんて、思いあたらなかった」と、述べたとのことです。
ちなみに私も9月に上海・蘇州・南京などのスマホショップを20件以上のぞきましたが、Xperiaは影も形も見当たりませんでした。昔々は、ソニーエリクソンの携帯電話はけっこう売ってたんですけどね。
朝陽大悦城のソニー直営店では、Xperiaが2機種のみ取り扱われていたそうです。店員によれば、「普段Xperiaを購入するお客さんは少なくない、最新機種も発売と同時に売り切れて、在庫切れ」だとのことです。ちゃんと中国でも、ソニーファンは生息しているものと見られて、安心ですね。
大手ECサイト「京東商城」では、発売から11月11日までのレビュー数が僅か1,100件でした。ちなみに、華為P10は1万9,000件です。北京商報の記者がネット上で発見するに、Xperiaの技術など、特徴への評価は高いものの、実際に購入した人は多くないようです。
販売数の低迷
ソニーの昨年度決算報告によれば、ソニーの全世界でのスマホ販売台数は1,460万台。Huaweiの1億3,900万台とはもはや比べるべくもありません。「はあ、億ですか」って感じですね。
ソニーは中国市場での販売台数を明らかにしていませんが、今年初め西電建通がソニーを特許侵害で起訴した際の賠償請求額から推察するに、中国での販売台数は200万台程度と見られます。
プレミアム路線上手くいかず、進退窮まる
現在のような市場状況に対して、ソニーも改革策を出しています。ソニーモバイルは今年の4-6月季から調整に入りました。今年5月の投資者大会にて、ソニーモバイルはミドルエンドスマホの放棄を宣言、フラッグシップモデルの開発に注力すると発表しました。
あるスマホ業界関係者は、こう指摘します。「ソニーモバイルはハイエンド路線を推し進めているが、利潤の確保を優先しており、出荷台数を過度に追求していない。しかし、ソニーモバイルの現行フラッグシップの製品力はそこまで強くなく、下降を続ける販売台数は、高い利潤率を長期にわたって維持することが難しい状況を招くだろう」。
また、中国市場でソニーモバイルは、「Xperiaの中国国内シリーズは、ローカライズの方向で改良を続ける方針。たとえば節電性能や、人気ゲーム《王者栄耀》への対応がある」、「しかし、製品自体こそが企業逆襲のカギになる。ソニーのほかの事業が発表している製品と比べて、XZ1はそう見るべきものがない」とも言います。スマホ競合製品ではなく、ソニーの他の製品と比べて、というところも気になります。
また、中国の大手通信系ニュースサイト、「融合網」のCEO呉純勇氏による、「ソニーはスマホ販売事業を放棄して、主要部品生産に集中した方が、会社の発展のためだ。しかしソニーモバイルの十時祐樹CEOは以前、スマホ製品はソニーがインターネット時代に入る主要な武器だと言っていたので、簡単に放棄はしないだろう」とのコメントを紹介しています。
優れた技術を如何にして販売実績につなげるか、これこそXperiaが中国国内市場で越えられなかった難関。中国スマホ市場が限られた大ブランドによって壟断され、ソニーが既に陣地を失った今日、復活するのはさらに難しくなったの指摘で、記事が終わります。
雑感:革新的な一手を
「ソニーは部品メーカーになれば?」とは身も蓋もない言いぐさですが、たしかに、中国国内メーカーがここまで成長した今、再度中国市場に攻勢をかけるのは不可能に近いです。中国メーカーに負けているようでは、他の地域で勝つのも至難。何か、革新的な一手を繰り出してくれればと思うばかりです。
編集部雑感:Xperia Hello!やXperia Touchといった製品が、次代を切り拓く種蒔きとなるのだろうか? |