こんにちは、Circulation-Cameraです。
今日はカメラの豆知識をお送りします💡
前回、紅葉写真の記事を掲載しましたよね。
その中で、こんなことを書きました。
ただし、風景にも使用する場合注意が必要です。
135mmの中望遠レンズなので多くの場合、
ピントが合った部分とアウトフォーカスの部分
が出現します
今日はこの部分について深読みしてみたいと思います!
なるべくシンプルにまとめましたが、そこそこややこしい話なので興味のある方は時間のある時に読んでみてください💦
それでは行きますね!
まず、写真を撮るときは、基本的にピントをどこかに合わせます。
当たり前ですな ( ̄▽ ̄)
そしてピントを合わせた場所がカメラに近ければ近いほど背景はボケますね。
例えばこの写真は、近くの花にピントを合わせているので背景は大きくボケています。
一方でこの写真は手前の茂みから、遠くの木々まで概ねピントが合っています。
さて、ここで問題です!
「ピント位置をカメラから何メートル以上離すと、無限遠にもピントが合うようになるでしょうか!?」
<図説>
~答え~
先に答えを言ってしまいますと、その距離を「過焦点距離」といい、以下のように求められます。
過焦点距離 = (焦点距離)^2 / (許容錯乱円) × (f値)
はい!
難しい数式が出てきましたが、ページを閉じないでください💦
ちゃんと解説しますから💦
~具体的に計算してみよう~
とりあえず許容錯乱円は話すと長くなるので、このページの最後に解説を載せておきます。センサーサイズによって変わる数字くらいに思っていて下さればOKです。
ざっくりですが、古典的には、フルサイズセンサーでは0.03くらい、APS-Cでは0.02くらい、4/3では0.015くらいと言われています。
※センサーサイズについてはこちらをご参照ください。
例を出します!
この写真は、フルサイズ一眼レフに135mmのレンズを装着して撮影したもので、F値は4で撮影しています。
手前のカップルにピントを合わせているので、無限遠はボケています。
では、同じ条件でピントが無限遠に合うようにするにはピントをどこに置けばいいか計算してみましょう💡
過焦点距離 = (焦点距離)^2 / (許容錯乱円) × (f値)
なので、
過焦点距離 = (135)^2 / (0.03) × 4 = 151875mm
すなわち、約152mです!
なるほど、
「152m以上向こうのカップル」
にピントを合わせれば無限遠にもピントが合うんだね!
・・・
・・・
・・・
スナイパーか!
( ゚Д゚)
ないない。
そもそもこのレンズ、10m以上遠方は無限遠になりますしね💦
あ、この計算式をよく見ると、F値を大きくすれば、過焦点距離近くなるじゃないか💡
10mは10000mmだから、
100000 = (135)^2 / 0.03 × f
これを解くと、f ≒ 60
そんなに絞らないだろ、常識的に考えて。。。
orz
つまりこのレンズの場合、無限遠以外にピントを合わせようとすると、基本的にこのレンズは無限遠がボケます。
これも結構遠くにピント合わせていますが無限遠ボケてますでしょ?
ですから、冒頭の記述が成立するのです💡
ただし、風景にも使用する場合注意が必要です。
135mmの中望遠レンズなので多くの場合、
ピントがあった部分とアウトフォーカスの部分
が出現します
ご納得いただけましたか?
~中望遠レンズはよくボケる~
言い換えると、中望遠レンズは、無限遠近辺にピントを合わせない限り基本的に背景がボケます。例として85mmのレンズでF4で計算すると、過焦点距離は
85^2 / 0.03 × F値 ≒ 60 メートル
どうでしょう?
遠景は十分にボケそうですね。
一方で広角レンズほど、容易に無限遠までピントが合います。
次の項で説明しますね♪
~パンフォーカスとは?~
過焦点距離 = (焦点距離)^2 / (許容錯乱円) × (F値)
という式を、せっかく紹介したのでもうちょっと味わってみましょうか。
過焦点距離は焦点距離の2乗に比例するのですから、広角レンズほど短くなります。
例えば、フルサイズのカメラで20mmのレンズでF4で撮影したとしましょう。
過焦点距離 = 20^2 / 0.03 × 4 ≒ 3.3 m
つまり、3.3m以上遠くにピントを合わせればそれより遠方には全てピントが合う計算になります。
これなら現実的ですね♪
例えばこの写真は24mmで撮影しています。
手前の車から奥の雪山までピントが合っています。
手前から無限遠までピントが合っている写真のことを、
「パンフォーカスである」
と表現します。
パンフォーカスの写真は広角レンズほど容易に撮影でき、望遠レンズでは難しくなることは、この過焦点距離の計算式から証明できるわけですね!
~補足:フルサイズ以外では?~
今日ご紹介した式において、「焦点距離」はレンズの実焦点距離を代入します。
ここは間違えやすいですのでご注意ください。
例えば、50mmのレンズを装着すると、NIKONのAPS-Cでは35mm換算で75mmの画角になりますよね?
でも計算するときは75mmではなく、あくまで50mmを代入して計算してください。
※許容錯乱円は0.03ではなく0.02のように小さめの値を代入します。
例えば、NIKON D5500のようなAPS-C機種に28mmレンズを装着すると画角は42mm相当になりますが、過焦点距離の計算はあくまで28mmで計算します。f値を仮に8で撮影すると仮定すると、
過焦点距離 = (28)^2 / 0.02 ×8 = 4.9 mとなります。
~練習問題です💡~
<練習問題1>
このような写真をフルサイズカメラで15mmのレンズで撮影したいと思います。
手前の信号にも奥のビルにもピントが合うようにするには信号から最低何メートル離れて撮影したらいいでしょうか?F値は8で撮影します。
※許容錯乱円は0.03とします
答え:
この場合、過焦点距離は 15^2 / 0.03 × 8 で求められます。これを解くと約0.93mです。したがって1メートル程度離れれば、計算上ですが、信号機も遠くのビルにもピントが合うことになります。
<練習問題2>
この写真では敢えて遠景をボカしています。逆に女性にも遠景にもピントが合うようにしたければ、フルサイズカメラで焦点距離35mmの場合、F値はいくつ以上にすればいいでしょうか?女性との距離は5m離れていて、許容錯乱円は0.03とします。
答え:
女性との距離が5メートルなので、5メートル以上遠方にピントが合えばいい。すなわち過焦点距離が5メートル (= 5000 mm) ならいいので、
5000 = 35^2 / 0.03 × F
これを解くとF ≒ 8.1なのでF 8程度で撮影すれば背景もある程度くっきり映ることになるわけです。
~まとめ~
ということで今回のまとめです。
(1) 撮影をする場合、「これ以上遠くにピントを合わせると無限遠までピントが合うようになる」という距離があり、これを過焦点距離といいます。
(2) 過焦点距離は (焦点距離)^2 / (許容錯乱円) × F値 という式で計算できます。
(3) したがって、望遠系のレンズほどパンフォーカスを得るのは難しいのです。
逆に言えば、望遠レンズほど背景がボケやすいことになりますし、広角レンズほど無限遠に容易にピントが合う説明にもなりますね💡
さて、肩がこる話でしたので次回は軽くビール話でもしてみましょうか。
お酒の話題は久々ですね~。
それではまた、よろしくお願いします m(_ _)m
※計算間違えや勘違いしている点があればコメントで御指摘ください💦 訂正いたします💦
~おまけ:許容錯乱円~
最後にマニアックな話を載せておきます。
これは本当に興味がある方以外はスキップしていただいて結構な項目です。
許容錯乱円はそもそも、古典的には「八切り (216mm×165mm) に35mmフィルムをプリントし明視の距離 (25cm) 離れて点が点とみなせる最大の大きさ」とされていたと記憶しています。
この許容錯乱円はセンサーやフィルムサイズに依存して変わります。
古典的には、上述したように、
・フルサイズで0.03
・APS-Cで0.02
・フォーサーズで0.015
程度といわれてきました。
ただ、最近はデジタルカメラの高画素化が進んでおり、写真も高い倍率で鑑賞する機会も増えているためこの許容錯乱円はもっともっと小さい値だと言われています。実のところ、この許容錯乱円を代入して計算してもリアルな過焦点距離は得られません。実際は0.03ではなく0.004くらいの値で計算しないといけないようです。
厳密に許容錯乱円を現在のデジカメで計算する場合、画素ピッチまたはエアリーディスク径の大きい方を選択します。
画素ピッチは 「(センサー面積 (mm^2)) ÷ 画素数」 の平方根です。
エアリーディスク径は、F値が大きくなるほど回析という現象が生じるため、レンズを通ってきた点光源が点として解像せずボケてしまうのですが、その直径を指します。
計算式は2.44 × λ × (実効F値) で求められます。
λは光の波長ですから300-700 ㎚を代入します。中間値の550 nmあたりを採用することは多いかもしれませんね。
※この式はこちらから引用しました:
http://www.toshiba-teli.co.jp/products/industrial/info/t/files/t0005_Lens_Terminology_j.pdf
それぞれ計算して大きい方を許容錯乱円として採用します。
ややこしいですね ^^;
現実問題、こんなこと計算しながら撮影する人はいないと思いますからトリビアとして興味のある人は知っていれば充分だと思います!
私は好きですけどね、こういうマニアックな話 (笑)