これまでCTOやCFOの持株比率をまとめてきました。

スタートアップCTOは生株・ストックオプションでどの程度もらえているのか

スタートアップCFOは生株・ストックオプションでどの程度もらえているのか

今回は、最高経営責任者であるCEO、社内の取締役や従業員のほか、ベンチャーキャピタル(VC)や事業会社まで調査対象を拡大し、スタートアップの持株比率はどのように分配されているのか、そして一人あたりのストックオプションはどれくらいなのかまとめてみました。

調査の方法と対象

2015年から2017年に上場したスタートアップ計38社が対象を対象として今回の調査を行いました。持株比率及び公募時点資産価値の算出は、有価証券届出書(新規公開時)の株主状況に記載されている潜在株式数を含めた総株式数を基に算出することとし、株主が保有する株式数(潜在株式を含む)を総株式数で割ることによって持株比率を算出しました。また公募時点資産価値の算出は、株主が保有する株式数(潜在株式を含む)に公募価格(11月16日時点で公募価格未公表のクックビズのみ想定価格)を用いて算出しました。

また、有価証券届出書(新規公開時)の株主状況の中で、持株数が公表されている企業(社員)を基に、株主を代表取締役CEO、取締役(社外取締役を除く)、従業員(取締役等除く)、ベンチャーキャピタル、事業会社に分類しました。個人の資産管理会社が株式を所有している場合は、その株式をその個人が所有しているものとしました。事業会社に関しては、銀行や証券会社と行った金融機関やコンサルティング会社も含めるものとしました。詳細が不明な会社は本調査からは除外しました。

調査対象企業は下記の通り

シャノン、ロコンド、うるる、ビーグリー、オロ、ティーケーピー、ユーザーローカル、Fringe81、GameWith、UUUM、ウォンテッドリー、PKSHA Technology、マネーフォワード、クックビズ、キャリアインデックス、エルテス、ユーザベース、アトラエ、エボラブルアジア、グローバルウェイ、アカツキ、バリューゴルフ、はてな、マイネット、App Bank、ピクスタ、メタップス、イトクロ、アイリッジ、富士山マガジンサービス、マーケットエンタープライズ、ジグソー、Gunosy、レントラックス、Aiming、イード、ALBERT、ファーストロジック

スタートアップ1社の中で株式配分はどうなっているのか

下記は、持株比率に関して、スタートアップ1社の中でどのように株式が配分されているのかをまとめた表になります。(代表取締役が2名いたユーザベースはCEOをまとめて1名としてカウントしています。)

持株比率の中央値に着目すると、CEOが約40%と最も多くの持株比率を有しており、次点でVCが多くの株式を保有しているようです。加えて、取締役全体に割り当てられている持株比率はCEOよりもかなり低いようです。また、これらの平均値及び中央値を合計しても100%にならないのは、従業員持株会や自社保有株、非従業員、子会社役員等の値が含まれていないためです。

社員1人あたりどれくらいのストックオプションをもらえているのか

次に社員一人あたりどれくらいのストックオプションをもらえているのかについて、表にまとめてみました。(下記ではユーザベースの代表取締役を2名別々にカウントしているため、CEOの持株比率と資産価格が上の表の値からわずかに異なります。)

一人あたりの持株比率を見ると一目瞭然ですが、CEOがかなり多くの株式を保有しているようです。では、詳細について見ていきたいと思います。

CEOは自社株を約40%の株を保有している

CEOの持株比率の平均値は41.4%、中央値は40.1%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、平均値は48億4104万円、中央値は25億4985万円でした。またユーザベースは代表取締役が2名いたため、1社としてまとめて計算を行っています。

それぞれの分布は下記の通りです。

分布図を見ても、25-50%の持株比率が多いようです。各企業の資本政策や資金調達状況によって様々なケースが想定されるものの、CTOやCFOの持株比率が数%であることを踏まえると、かなりの割合を占めているようです。

取締役全員合わせて会社の10%弱の株を保有している

上場スタートアップ1社あたりの取締役全体の持株比率の平均値は10.7%、中央値は6.7%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、平均値は11億6708万円、中央値は3億7892万円でした。

それぞれの分布は下記の通りです。

10%弱の株を3人から5人程の取締役で分け合い、1人あたり2%前後の持分が与えられるように設計されていることが多いのかもしれません。

また今回調査対象とした取締役の合計人数は107人で、一人あたりの持株比率平均値は3.83%、中央値は1.44%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、一人あたりの平均値は4億2002万円、中央値は9560万円となりました。中央値は1億円弱となり、この値は以前まとめたCTO、CFOの公募時点資産価格に近い値でした。

従業員全員合わせて3%弱の株を保有している

上場スタートアップ1社あたりの従業員全体の持株比率の平均値は3.0%、中央値は2.4%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、平均値は2億5364万円、中央値は1億7298万円でした。それぞれの分布は下記の通りです。

従業員全体に3%前後のストックオプションを与えているケースが多いようです。持ち株公募時点資産価格に換算すると、1億円から3億円を従業員で分け合うことになるので、一人あたりがもらえる額はあまり多くなさそうです。実際、今回調査対象とした従業員の合計人数は898人で、一人あたりの持株比率平均値は0.14%、中央値は0.06%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、一人あたりの平均値は1690万円、中央値は520万円となりました。

スタートアップ1社に対してVCは20%弱の株を保有している

スタートアップ1社あたりのVC持株比率の平均値は20.8%、中央値は17.0%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、平均値は29億7387万円、中央値は12億930万円でした。また、VCからの出資を受けているスタートアップは全体の81.6%(38社中31社)でした。

それぞれの分布は下記の通りです。

分布を見ても、VCがおおよそ20%弱の株式を有しているケースが多そうです。

またスタートアップ1社あたりに出資するVC数は平均値で3.8社、中央値で2.5社であり、複数回の資金調達を経て上場を目指しているケースが多そうです。

スタートアップ1社に対して事業会社は10%弱の株を保有している

スタートアップ1社あたりの事業会社持株比率の平均値は10.6%、中央値は6.5%でした。これを持株公募時点資産価格に換算すると、平均値は11億5695万円、中央値は6億2494万円でした。また、事業会社からの出資を受けているスタートアップは全体の68.4%(38社中26社)でした。

それぞれの分布は下記の通りです。

またスタートアップ1社あたりに出資する事業会社数は平均値で2.6社、中央値で2.0社でした。

事業会社からもスタートアップへの投資が盛んに行われているようですが、VCに比べると持株比率が25%以上となるような投資は多くない印象を受けました。

まとめ

上場時の持株比率としてはやはりCEOとVCの比率が大きく、両社が事業を担っているといえる持株比率となりました。取締役について一人あたりで見ると1%少々と少なく、以前調べたCTO、CFOの持株比率に近いものでした。また従業員は全体としても2.4%の持ち分しかなく、一人あたりに換算すると0.06%という結果でした。優秀な人材を引きつける上では金銭的なインセンティブも非常に重要といえますが、今日の日本のスタートアップ関連の上場という点では、従業員がストックオプションで報われてるとは言い難い結果となってしまいました。今後も上場した企業の持株比率や平均年収などの各種データをまとめることで、スタートアップに関わる人の意思決定に貢献したいと思っています。