日本人のライフスタイルの象徴だった通勤電車に異変が起こっています。これからの社会は人口減少によって人の動きが大きく変化するといわれています。鉄道会社は新しいビジネス・モデルを模索することが必要となりそうです。
ペイレスイメージズ/アフロ
このところ、首都圏を走る大手私鉄の決算において、通学定期による収入がマイナスになるケースが増えています。直近の2017年4~9月期決算では、京王は前年同期比でほぼ横ばい、東武、西武、小田急の各社はマイナスとなりました。直接的な理由は大学のキャンパスが相次いで都心に移転し、これによって通学定期収入が減少したというものです。
かつて大学は、都心部における大学設置が法律で制限されたことなどから、次々と都心から郊外に移転しましたが、現在はこれとは逆の動きが加速。都心にキャンパスを戻す大学が増えています。大学がなくなってしまえば、当然、鉄道に乗る学生の数も減りますから、通学定期収入の減少につながるわけです。
しかし、この動きは単なる大学の場所の問題だけにとどまるものではありません。各大学が都心にキャンパスを戻しているのは、マクロ的な人口減少と深く関係しているからです。
人口が減ってくると、広域に分散して生活するのは効率が悪くなります。このため人口減少が進むと、人口動態が変化し都市部への人口集約が進むというのが一般的な理解です。大学は学生の募集というビジネス上の問題がありますから動きが早いですが、もし都市部への人口集約が進むのだとすると、次にやってくるのは通勤収入の減少です。
実際、郊外から都市部に転居する人は増えていると言われ、都心部の賃貸マンションは非常に好調です。これに加えて政府は働き方改革の一環として、在宅勤務なども推奨する方向性ですから、これも通勤利用者の減少を引き起こします。通勤客は首都圏の私鉄各社にとってまさにドル箱ですから、通勤客が減少してしまうと各社にとって大きな打撃となるでしょう。
私鉄各社はこのところ座って通勤できる有料車両の導入などを行っていますが、これも定期収入の減少を見越した動きといえます。
郊外の宅地開発を進め、大量の人員を鉄道で輸送するという昭和型のライフスタイルはそろそろ限界に来ています。このところ首都圏の通勤電車で遅延トラブルが発生するケースが増えていますが、もしかすると、一連のトラブルもこうした状況と無関係ではないかもしれません。
(The Capital Tribune Japan)