記者会見した愛知障害フォーラムの辻直哉事務局長(中央)ら。名古屋城の木造新天守へのエレベーター設置を求めた=名古屋市役所

写真拡大

 名古屋市が名古屋城の木造新天守にエレベーターを設けない方針を示したことについて、愛知県内の障害者や支援者らでつくる「愛知障害フォーラム」が21日、市に設置を求める公開質問状を出した。

 フォーラムは「あまりに一方的で、弱い立場の意見を無視している」と訴えている。

 市は、2022年末の完成を目指す天守木造化で、伝統的な材料や手法を用いる。16日の有識者会議で、江戸期の姿を「史実に忠実に復元する」として、エレベーターを設けない案を示した。代わりに5階までの階段に椅子付きのリフトを設ける方針だ。

 記者会見したフォーラムの辻直哉事務局長は「何百億円もかけて市が建てる公共の建物。すべての人が安心して楽しめるようにしてほしい。エレベーター以外に有効な設備があるとは思えない」と主張した。メンバーの宇佐美道(たお)さん(20)は特注した自分の車いす以外では座った姿勢を保てず、「リフトでは前や横に倒れてしまい、到底乗れない」と話した。

 河村たかし市長は、姫路城(兵庫県)や犬山城(愛知県)にエレベーターがないとして、新天守への設置に消極的だ。辻さんは「名古屋城は今の時代に建てるもの。歴史的価値のある復元には反対しないが、最新技術を生かして今の時代に沿った設備が必要ではないか」と訴えている。

 名古屋城の現天守は1959年、鉄筋コンクリート製で再建された。屋内2基、屋外1基のエレベーターがあり、地階から地上5階まで移動できる。(諸星晃一)