相撲協会、貴乃花親方外しで反撃開始 冬巡業帯同させず、NHK解説は交代…敵対的姿勢看過できず
横綱日馬富士(33)による平幕貴ノ岩(27)への暴行問題で、騒動の影の中心人物と目される貴乃花親方(45)に、日本相撲協会が全面反撃に出た。巡業部長としての責任を問う形で冬巡業に帯同させない方向で調整、NHKの相撲中継の解説からも急遽(きゅうきょ)外れることになった。協会は、貴乃花親方の一連の不可解な行動や執行部への敵対的な姿勢を看過できず、「排除」に乗り出した形だ。
日馬富士は鳥取県警の事情聴取に「(現場となった鳥取市内のラウンジでの)貴ノ岩の態度に腹が立ち、殴った」という趣旨の説明をしていることが分かった。「素手で殴った」などと暴行を認めているが、ビール瓶での殴打は否定している。県警は、食い違いがみられる同席者らの証言と合わせて分析した上で、日馬富士を再聴取する方針。同席した横綱白鵬の聴取は、九州場所の後に行われるとみられる。
県警の捜査が進むなか、協会の「貴乃花親方外し」も動き出した。12月3日から始まる冬巡業に、貴乃花巡業部長と玉ノ井巡業副部長(元大関栃東)を帯同させない方向で調整している。暴行問題について危機管理委員会による調査を優先させるという名目だが、事実上の協会側の懲罰的な対応といえる。
貴乃花親方は巡業部長として巡業中の力士を管理し、問題が生じた場合は協会に報告する責任がある。秋巡業中の10月25日夜から26日にかけて起きた貴ノ岩への暴行について、師匠でもある貴乃花親方は29日に鳥取県警に被害届や診断書を提出するなど迅速に動いたが、協会には報告していなかった。
協会には11月2日に県警から連絡が入り、貴乃花親方は3日に鏡山危機管理部長から聞き取り調査を受けたが、「よく分かりません」と回答。14日の協会による事情聴取では「(第三者を)立てなきゃいけないようになるかもしれない」と代理人を立てたうえでの民事訴訟などの法的手段を検討する意向まで示した。
暴行の事実や背景をめぐる「情報戦」でも貴乃花親方側は巻き返されている。当初は「ビール瓶で殴打した後、馬乗りになって30発ほど殴った」など日馬富士側に不利な内容が中心だったが、その後、「ビール瓶では殴っていない」と否定する発言が相次いだ。協会に提出された貴ノ岩の「2通目」の診断書に記載された頭部の骨折は「疑い」でしかなく、相撲を取れる状態だったことも協会が暴露した。
日刊スポーツは、9月下旬に東京・錦糸町のバーで、貴ノ岩が「俺は白鵬に勝った。これからは俺たちの時代だ」と発言したことが白鵬側に伝わり、鳥取市内のちゃんこ店と2次会のラウンジで白鵬の注意を受けたと報じた。その最中に貴ノ岩がスマホを操作し、「誰とだ?」と尋ねた日馬富士に貴ノ岩は「彼女です」と答えたことで、日馬富士がブチ切れたという流れだという。
県警はラウンジでのトラブルだけでなく、それ以前の2人の関係を含め、暴行に至った経緯の確認を慎重に進める。他に横綱鶴竜や、照ノ富士らモンゴル出身力士と、日本人力士や鳥取の相撲関係者も同席していた。
協会の危機管理委員会は、貴乃花親方と、日馬富士の師匠、伊勢ケ浜両親方の事情聴取を場所後に実施する意向だ。
14日に執行部の聴取を受けた際の貴乃花親方は不機嫌そうな言動で、被害届を撤回して日馬富士側と示談しなければ横綱の引退に発展するケースがあると告げられても「そのつもりはありません」と突っぱねた。八角理事長(元横綱北勝海)は相当な怒りを抱いているという。
多勢に無勢という状況の貴乃花親方だが、協会幹部は「まともにコミュニケーションを取るのも難しい状況だ」と嘆息するなど協会との溝は深まるばかり。協会の思惑通り、年内に問題が決着するかは見通せない。