10月22日の総選挙で与党が3分の2の議席を維持したことを受けて、改憲論議が再び活発になる。果たして、どのように改憲すべきなのか。議論は百家争鳴の様相を呈すにちがいない。「個別的自衛権に限定して自衛権を行使できると明記する」と主張する山尾志桜里・衆議院議員に聞いた。同氏は立憲民主党の会派を代表して衆議院憲法審査会に席を得て、今後の改憲論議をリードする。
(聞き手 森 永輔)
山尾さんは、憲法9条を変えるべきか、変えないべきか。変えるとすれば、どのように変えるのがよいと考えますか。
山尾:私の考える憲法議論は、立憲主義を貫徹し、その価値を強化する「立憲的改憲論」です。9条に関連して大切なのは、憲法に「自衛隊」の3文字を明記することではなく、国民意思で「自衛権」に歯止めをかけることです。私は、2014年7月の閣議決定までの「武力行使の三要件」、いわゆる武力行使の旧3要件に基づいて、自衛権の範囲を個別的自衛権に制限することを、憲法上明記すべきだと考えます。
【旧3要件】
わが国に対する急迫不正の侵害があること
この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
ただし、条文の文言を議論する前に、より大切なことがあります。
より大切なこととは何ですか。
山尾:テーマ設定です。憲法の要諦は「権力の分立・均衡」により「人権を保障」すること。この観点から政府が持つ権力を国民意思によりコントロールできているかが改憲を議論する時の大きなテーマであるべきです。現行憲法は、安倍政権下の現状において、このコントロールの役割を十分に果たしているでしょうか。権力を縛り、人権を保障しきれているか。
自衛に関する権能は、自衛隊という実力組織を伴う、政府が持つ権力の中でも非常に強力なものの一つです。自衛隊が肥大化すれば、人権をないがしろにする可能性がある。それは私たちが先の大戦から得た教訓です。したがって、国民の意思に基づいて、しっかりコントロールしなければなりません。
明文化されていない歯止めは崩れた
現状は、そのコントロールができていますか。
山尾:残念ながらできていません。不全状態にあると思います。
現状が不全であると考える理由はどこにありますか。
山尾:やはり、安倍政権が安全保障法制を成立させたことです。日本は自衛権を、憲法に明文化されていない様々な解釈・不文律・規範を通じて統制してきました。私たちは、そのスキを安倍政権に突かれてしまったのです。
例えば、我が国は戦後70年間を通じて、専守防衛に徹し、集団的自衛権は行使できない、という憲法9条の解釈を国家も国民も共有していました。安倍首相はこれを「集団的自衛権は行使できない」とは書かれていないとして突き崩してしまいました。
内閣法制局の人事に首相は関与しないという不文律もこうした統制の一つです。しかし安倍首相は法制局の人事に手を突っ込んだ*。そして、歴代法制局の解釈を180度転換することで、違憲の安保法制を成立させる土台を作りました。
一連の動きによって、明文化されていない歯止め、統制の手段は外されてしまいました。こうした事態を避けるため、自衛権とそれを統制する手段を明文化する必要があります。そのために憲法を改正する必要があると思います。
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