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初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→『第一話 来年から幼稚園』
前回までの内容
来年幼稚園の入園を控えた息子“たける”は、超がつく繊細で感受性の鋭い気質の持ち主。
「ママが一緒でなくては幼稚園に行かない」と言う、たけるの気質に合った集団生活への移行方法を考えてきた。
幼稚園の入園説明会や面談を終え、持ち物や式用の服など、準備で入園ムードが高まってきた3月、
パパの心がざわつき始めた。
“たける”のように、繊細さや感受性の豊かさ鋭さ、敏感さを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)=人一倍敏感な子と言います。
HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思案・行動することを好みます。これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。
また、HSCは些細な刺激を察知し、過剰に刺激を受けやすいせいもあって、家や慣れている人や場所では絶好調でも、新しい人や場所、人混みや騒がしい場所が極端に苦手なのです。
さらに他の子は問題なくできることを怖がったり、小さいことを気にしたりしがちですので、「内気」とか「引っ込み思案」とか「臆病」とか「神経質」などとネガティブな性格として捉えられ、「育てにくい子」として扱われてしまう傾向にあります。
これらはHSCの、微妙な刺激や変化を敏感に感知する繊細さ(先天的な気質)にあるのです。
5人に1人は、HSCに該当すると言われています。(*HSCはアメリカのエイレン・アーロン博士が提唱した概念です)
HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴
①刺激に対して敏感である。ちょっとした刺激でも感知してしまう。すぐにびっくりする。
②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒され、人より早く疲労を感じてしまう。人の集まる場所や騒がしいところが苦手。誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にするだけでつらい。
③場の空気や人の気持ちを読み取る力『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。
④自分と他人との間を隔てる「境界」がとても薄く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。
⑤直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。
⑥モラルを重視する。正義感が強い。
⑦自分のペースで思案・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。
⑧静かに遊ぶことを好む。集団より一人や少人数を好む。1対1や少人数で話をするほうがラク。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。
⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、敏感な気質ゆえに求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかった場合に自信を失いやすい。
⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応)が出やすい。感受性が強すぎ、繊細すぎるために、学校や職場での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。
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フラッシュバック
「最近よく嫌な夢を見るんだ。起きた時不安が残ってそれが続くかんじ」
「どんな夢?」
「学校で精神的に追い詰められているような夢とか」
「何だろうね」
「たけるが幼稚園に行くイメージが、俺の記憶の中のネガティブなイメージを刺激しているのかもしれない」
「そっか。でもパパ、記憶あんまりないんだよね」
「幼稚園が小学校と同じ敷地にあるでしょ。学校という大きな建物をイメージするだけでも、フラッシュバックが起こっている気がする」
「中学3年の時に不登校で1年間学校に行けなかったのは知ってるけど、小学校もそこまでつらかったの?」
「記憶がね…思い出せないんだ」
「今度の休みに、見に行ってみようかな…幼稚園」
「そうだね、いいかも。3人で行ってみよう」
日曜日・・・
「学校だね」
「幼稚園はこっちだよ!」
「たけるはこの幼稚園に行くんだね」
その日の夜・・・
「パパは覚えていないというけれど、たけるぐらいの年の頃、幼かったパパは何を感じて、何を考えて、どんな気持ちで毎日を過ごしていたんだろうね」
「うん。覚えていないけど、たけるの色んな反応見てたら自分もそうだったのかなって、息が詰まるかんじがする」
「しかもパパの場合は代々続く医者家系だもんね」
「次男であっても跡継ぎの補欠候補として生まれたようなものだよね。常に医者になることを前提として、幼い頃から親が求める決められた道を歩むしかなかった。
小学生の頃から嫌で仕方なくても遠いところまで塾に行かされた。自転車で行ってたけど、長く続く、まわりは田んぼだらけの人気も街灯もない暗い夜道は本当に怖かった。でも成績はちっとも上がらなかった。
医者になるには良い高校に進学しなくてはいけないからと、地元の中学ではなくて、越境入学で、バスだけで約40分かかる、家から離れた隣の市の中心部にあるマンモス校に行くことが決まっていた。
田舎の小学校からひとり、自分の意志とは関係なしに、親やお家の都合や事情をもとに与えられた1学年12クラスもある中学校へ通わされ、馴染めず、3年になると学校へ行けなくなった。
当時はわからなかったけど、学校に行けなくなった原因の中核は、自分の気質に合わないところへ無理に適応しようとしてきたことや、自分の気質に合っていないにもかかわらず、親の期待に応えようと頑張ってきたための息切れであったことが今ならわかる」
(この時のことは、夫本人が記事にしています こちら)
(たけると同じように繊細で敏感で、超高感度ともいえるセンサーを持ったパパ。
新しい、慣れない場所やたくさんの数の人に、人一倍恐怖を感じてきたんだ。
純粋なパパは、今でもセンサーは高感度なまま。
でもきっとそのような気質を見極めて、受容してくれた人はいなかった。
むしろ、兄は社交的で友達が多いのにお前は内気だとか、で比較され、家にこもってないで外で遊びなさいとか、否定され、劣等感ばかりが植えつけられた。
そして、「どうして自分にはできないのだろう」、「どうして自分はこう弱いのだろう」、「どうして自分は他の子と違うのだろう」と焦ったり、プレッシャーを感じていた。
(*後にこれらは、親や重要な人物から、その子⦅人⦆が持つ気質を理解してもらえなかったり、他の子と比較されたりしたことで、HSC⦅HSP⦆が抱える、劣等感や自己否定感、低い自己価値などの苦しみそのものであるということがわかった)
だから、自分と同じ苦しみは味わわせたくないと、ずっと子どもを持とうとしなかった。
たけるは、私が望んだから授かったんだよね。
でもパパは、たけるのこと、とても大事にしてくれている…。
自分が苦しんだ分、たけるの気持ちやクライエントさんの苦しみが誰よりもわかる…)
入園式前日
「いよいよ明日だね。俺も行ってあげたいけど」
「仕方ないよ、山口さんはこの日時で固定してるクライエントさんなんだし。それにとにかく、私とたけるが慣れるまでパパは何もしなくていい。私に任せて!!」
「ありがとう。ママがいてくれて良かった」
「いや、これで償えるんだったら私の方がありがたい。
だって私、ホンっと傲慢で自己中で歪んでて、パパのこといっぱい傷つけてきた。パパはいつも真剣に私と向き合ってくれた。それがなければ私は変わろうとしなかったし、たけるに・・・幼い頃のパパのような心の傷を負わせていたと思うの。
私は、たけるだけじゃなく、あの頃の、子どもだった頃のパパを守ってあげたい!という気持ちになっているの!!
入園式、たけるの不安は私が責任持って受け止める!同じように不安だったはずの小さいパパの分まで、私絶対守ってくる!」
「ありがとう。よろしくお願いします」
入園式シミュレーション
「たける~、入園式、どんなかんじかちょっとだけ練習してみようか」
「うん」
「最初ね、きっと入場があると思うの。お父さんやお母さんは椅子に座って拍手しながら見てるの。そこへ、先生と幼稚園生とで並んで歩いてお部屋に入ってくるの。うまくできなくても全っ然良いんだけど、この時だけはちょっとママと離れないといけないかもしれない」
「えぇ?」
「大丈夫!どうしてもだめだったら先生に言ってなんとかするから」
「絶対?」
「絶対!あと、チューリップを歌うみたい。保育園の子は慣れてると思うけど、たけるはどうだったけっけ?」
「たける、わかるよ」
「じゃあ、一緒に歌ってみようか」
『慣れるまでママが一緒』
たけるはそれがあったから、入園に対する不安は心にも身体にも見られませんでした。
明日はいよいよ入園式。
次回につづく・・・
(*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)
(*次回第12話は『入園式』の予定です)
ー著書紹介ー
~幼かったあの日の私を抱きしめに行こう。
本当の私(ママ)になるために。~
というキャッチコピーの本、『ママ、怒らないで。』を出版しています。