平成29年度賃貸不動産経営管理士試験を受験:自己採点は33点
2017年11月19日,平成29年度賃貸不動産経営管理士試験を受けてきました.
TACおよびKenビジネススクールの解答速報で自己採点したところ,どちらも33点/40点.この点数なら合格でまず間違いないでしょう.
筆者は平成28年度宅地建物取引士試験で合格,その後不動産キャリアパーソンにも合格し,宅建登録実務講習も済ませました.
マンション関連資格は考えなかったですが,不動産関連でもう一つ資格を取得しておこうと思い,今回の賃貸不動産経営管理士試験を受験した次第です.
とはいえ,試験勉強をはじめたのは10月の半ばくらいから.平成27年度の問題を最初に解いたときは20点・・・.
それでも(おそらく)合格点に達しました. 宅建をきちんと勉強している方なら賃貸不動産経営管理士試験は1ヶ月で十分合格できます.
賃貸不動産経営管理士試験概要
賃貸不動産経営管理士試験の概要は次の通りです.
試験日 | |
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申込期間 | |
試験実施団体 | |
試験受付 | |
受験資格 | |
試験会場 | |
受験料 | |
受験申込 | |
登録要件 | |
出題数 | |
試験時間 | |
事前講習による免除 | |
宅建の申込が7月初旬〜7月いっぱいくらい(インターネット申込は7月前半で〆切になるので要確認)ですので,宅建申込を終えてから受験するかどうか考える時間の余裕はあります.
賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲
賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲は下の表をみると多岐にわたってたいへんそうに見えるかもしれません.でも,実は宅建とけっこう重複しています.宅建受験者は非常に有利です.
1 | 賃貸管理の意義・役割をめぐる社会的状況に関する事項 |
---|---|
2 | 賃貸不動産経営管理士のあり方に関する事項 |
3 | 賃貸住宅管理業者登録制度に関する事項 |
4 | 管理業務の受託に関する事項 |
5 | 借り主の募集に関する事項 |
6 | 賃貸借契約に関する事項 |
7 | 管理実務に関する事項 |
8 | 建物・設備の知識に関する事項 |
9 | 賃貸業への支援業務に関する事項(企画提案,不動産証券化,税金,保険等) |
賃貸不動産経営管理士試験出題内容・難易度
借地借家法のうち借家分野が最重要ポイント
40問のうち,実は5の賃貸借契約が10問程度を占める最重要ポイントになっています.
特によく出題されるのが定期建物賃貸借,必要費,有益費,造作買取,賃借人の義務・賃貸人の権利,賃貸借契約の終了,保証など.どれもこれも宅建で勉強したことばかりです.
ほかにも法令上の制限(建築基準法),宅建5問免除問題の建物や不動産関係統計,固定資産税等の税金関係も出題数は少ないながら重複しています.
過去問を見ればわかる通り,問題文自体はとても平易で選択肢ひとつひとつの難易度は低いと言えます.宅建でしっかり勉強した方なら問題の傾向を確認するくらいで十分対処できるでしょう.
賃貸住宅管理関係分野はきちんと押さえること
一方,賃貸不動産経営管理士試験独特の問題は3の賃貸住宅管理業者登録制度に関する事項,4の管理業務の受託に関する事項,7の管理実務に関する事項です.
これらについては宅建とはまったく異なる知識なので,知らないとどうしようもありません.
逆に言えば,基幹事務等について知ってさえいればどうということはありません.ちなみに倫理面に関してはそれこそ文章を読むだけで解けるものが出題されてきました.これらについては公式テキストや試験対策テキスト・問題集を2回やれば困ることはまずありません.
一方,8の建物・設備の知識に関する事項はやたら細かい問題が出ることもあります.
今年度の問題の問31から選択肢イだけ引用します.
イ 消火器の詰め替えは,5年に1回程度,粉末(消火剤)の交換は8〜10年くらいのサイクルで実施するのが望ましい.
これは公式テキストp.858に記載されている文言そのままなのですが,筆者はイの問題まではチェックしていなかったので外してしまいました(試験対策テキストではp.351の欄外コメントに小さい字で書かれてました・・・).
でも,そこまで細かいことを頭に入れずとも十分合格点に達することができる,はずです.
平成29年度試験での大きな変更点
これまでとは違い,平成29年度試験には個数問題・組み合わせ問題が導入されました.想定外でした.
しかも第1問がいきなり不動産関連統計問題で個数問題という変化っぷりには面食らいました.
実は問題が配付されたとき,表紙から宅建でよく見たこの回答方式が透けて見えていました.
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
第1問のショックを引きずったままページをめくった第2問には追い打ちのようにこれが
1 ア,ウ,オ
2 イ,エ,オ
3 ア,イ,ウ
4 エ,オ,カ
結局,個数問題3問,組み合わせ問題7問と全体の1/4を試験初登場の解答形式が占めました.
4択問題は正解をどれか一つ選べばよいのに対し,個数問題・組み合わせ問題は基本的にすべての肢の正誤判定をするのが鉄則です(組み合わせ誤っている肢を探すのが先ですが).それだけ個数問題・組み合わせ問題はコストが余計に払わなければなりません.試験の難易度は確実に上がったと言えます.
とはいえ,問題文そのものは平易で,宅建のように知っていても惑わされるひねくれたものはありません.
平成29年度賃貸不動産経営管理士試験問題
平成29年度の問題は以下の通りです.
1 | 賃貸不動産をとりまく社会的情勢(統計):個数問題 |
---|---|
2 | 賃貸不動産経営管理士の業務:組み合わせ問題 |
3 | 賃貸住宅管理業者登録制度 |
4 | 賃貸住宅管理業者登録制度 |
5 | 管理受託契約 |
6 | 賃貸住宅管理業者登録制度 |
7 | 賃貸住宅管理業者登録制度の基幹事務 |
8 | サブリース方式による賃貸管理:個数問題 |
9 | サブリース方式による賃貸管理(原賃貸借契約の終了) |
10 | 借り主の募集:組み合わせ問題:組み合わせ問題 |
11 | 借り主の募集・入居者決定 |
12 | 定期建物賃貸借:組み合わせ問題 |
13 | 賃貸借契約(解約申入れ) |
14 | 敷金の承継 |
15 | 賃貸借契約の保証 |
16 | 賃貸借契約当事者の相続発生時の権利関係:組み合わせ問題 |
17 | 賃貸建物の修繕 |
18 | 賃貸借契約の解除 |
19 | 賃貸借契約(契約書):組み合わせ問題 |
20 | 賃貸借契約の更新 |
21 | 賃料改定 |
22 | 内容証明郵便と公正証書 |
23 | 未収賃料の経理上の処理 |
24 | ガイドライン |
25 | 住環境の整備 |
26 | ガイドライン |
27 | ガイドライン |
28 | 共同住宅の避難施設 |
29 | 耐震 |
30 | 給水設備・給湯設備 |
31 | 消防用設備:個数問題 |
32 | 賃貸用建物の企画提案 |
33 | プロパティマネジメントとアセットマネジメント |
34 | 保険 |
35 | 必要経費:組み合わせ問題 |
36 | 不動産賃貸経営 |
37 | 賃貸不動産管理の重要性(4問免除) |
38 | 賃貸不動産経営管理士の倫理憲章:組み合わせ問題(4問免除) |
39 | 雨水による漏水・浸水(4問免除) |
40 | 換気設備(4問免除) |
賃貸不動産経営管理士講習を受講すると4問免除されます.しかしながら,今年度の免除問題(問37〜問40)は非常に簡単で大部分の方は少なくとも3点とれたと思います.丸2日間拘束された上,受講料17,820円を支払いメリットがあるかどうかは,免除問題の難度からすれば微妙と言わざるを得ません.
賃貸不動産経営管理士合格率
直近4回(平成25年〜平成28年)の合格点,合格率,合格者数が下の表です
(http://www.lec-jp.com/chintai/about/difficulty.htmlより).
年度 | 合格点 | 合格率 | 合格者数 |
---|---|---|---|
平成28年度 | |||
平成27年度 | |||
平成26年度 | |||
平成25年度 |
◆合格率は平成27年に54.58%と急落しました.そして,これまで見たように平成29年度は予想しなかった個数問題・組み合わせ問題が登場.問題文自体は平易とはいえ,昨年より難度は上がったと言えます.
昨年度と同様の合格率を保つなら合格点は28点を下回るでしょう.本稿執筆時点でのKenビジネススクールによる合格予想点は24±1点と昨年より低くなっています.
一方,宅建並の合格率15%程度に絞り込むなら合格点は28点程度に据え置くのかもしれませんが,ここは蓋を開けてみないとなんとも言えません.結果がわかり次第追記します.
来年度からの試験はなめてかからないほうが懸命でしょう.
それでも宅建受験者10月の試験終了後,1ヶ月程度勉強すれば合格できる試験だと思います.
賃貸不動産経営管理士は1ヶ月の勉強で受かる:勉強法,試験会場
◆すでに述べたとおり,賃貸不動産経営管理士の試験内容は基本的に宅建で勉強する借地借家法の借家部分が10問,さらに法令上の制限(建築基準法),宅建5問免除問題の建物や不動産関係統計,固定資産税等の税金関係などの知識はそのまま生かせます.テキストと問題集を2周すればまず大丈夫と思われます.
◆一方,賃貸不動産経営管理士試験独特の問題は3の賃貸住宅管理業者登録制度に関する事項,4の管理業務の受託に関する事項,7の管理実務に関する事項については特に難しいことはありません.これもテキストと問題集を2周すれば十分でしょう.
消火器のように細かい問題も含まれてはいますが,それよりも借地借家法と登録制度・基幹事務・管理業務について過去問・テキスト・問題集を中心におさえたほうが確実に点をとれると思います.
◆一つだけ来年度受験への注意をあげるとすれば,個数問題・組み合わせ問題です.
これは宅建の勉強ですでにしていたことですが,対処法は四択問題は4つ全ての肢問の正誤判定を日頃から行う訓練をしておくことに尽きます.「なんとなくこれは正しい,間違い」ということではなく,必ず正誤判定とその根拠を書けば自ずと個数問題・組み合わせ問題もどうということはなくなります.
試験当日:会場の様子
◆試験は午前中13:00〜14:30までの1時間30分です.
私が指定された会場は早稲田大学の16号館.
11:00過ぎに校舎に入ったところ,まだ試験準備はされていませんでした.また,FP試験のようなフリースペースの用意はなし.宅建は渋谷の日本経済大で受験しましたが,そこには小さいながらも休憩室があって昼食と直前勉強ができたけれど,早稲田では16号館2階入り口前の白いベンチとテーブルに陣取って,寒い中昼食を済ませて勉強してました.
体が冷えたので,11:40くらいに受験番号で指定された講義室に移動して45分頃入室,12:40までテキストを出して勉強していました.
ちなみに講義室も寒かったです.予備のウールシャツを膝にかけて試験に臨みましたが,中にはジャケットを脱がない方もいたくらいです.たまたま気温が低い日に当たったとはいえ,屋内フリースペースが利用できないことと試験会場も寒いことを想定した温かい服装を用意するにこしたことはないでしょう.
◆12:40になると試験に関する注意事項等の説明が始まります.ここからは参考書等をしまわなければいけません.
あまり大きな声では言えませんが,こういう試験のときはあらかじめ自分が座る席を確認して受験票や筆記用具をセットしていれば1分1秒を惜しんでぎりぎりまで階段の踊り場等で勉強するのはアリだと思います.
試験中はティッシュも机上に出してはいけません.目薬等が必要な場合はその都度試験官に申し出るよう指示されました.原則として時計・筆記用具・消しゴム以外はカバンにしまいます.携帯電話・スマートフォンは通信機器類封入袋に入れ,封をしてイスの下に置きます.基本的に宅建と同じ要領です.
筆記用具ですが,ステッドラーはお咎めなしでしたが,予備芯と鉛筆削りは不可です.
◆FP試験とは異なり,受験室からの退出はできません.
40問90分の試験ですが,今回は80分かかりました.個数問題・組み合わせ問題で時間を食ったせいです.WEBで公開されている過去問はまだ平成27年度分からしかありませんが,平成29年度の問題は前2年のものとは別物と思って取り組んだ方がいいかもしれません.
賃借人も知識を身に付けよう
平成28年9月から賃貸住宅管理業者登録制度登録業者は事務所毎に賃貸不動産経営管理士または6年以上の実務経験者を置くものとし,賃貸人への重要事項説明と記名・押印が必要となりました.その影響で平成28年から受験者数が急増,平成29年度の受験者数は16,624人と過去最高になりました.
この資格は賃貸物件を借りる側の方にとっても有益な知識を身に付けられる試験です.宅建の勉強をしていないと1ヶ月での合格は厳しいかもしれませんが,賃貸不動産を管理する側の知識は借りる側にとってもそのまま武器になります.例えば雨漏りを大家に知らせたけどなんだか修理する気配が見えないので店子がさっさと業者に依頼して修理した場合,その代金は大家に請求できます.でも部屋を引き払うときになっても大家が修理代を支払わないときは,大家が支払うまで部屋の明け渡しを拒むことができます.
宅建より比較的ローコストで学んで合格することができるのが賃貸不動産経営管理士試験です(受験料だけは宅建より高いし,最初の表に記載した通り登録には要件が必要ですが).
賃貸不動産の知識を身に付けたい方には受験をおすすめします.
賃貸不動産経営管理士受験用テキスト・問題集
平成29年版のテキスト・問題集です.試験合格に公式テキストは不要かもしれませんが,賃貸不動産経営管理士講習を受験する際には公式テキスト必須です.
以下の3冊はいずれも平成29年度試験に対応した版です.