無断欠勤OK、嫌いな仕事しなくて結構-大胆、パートの働き方改革「誰も出勤しない日も…」 大阪・茨木の食品会社
パートは無断欠勤OK、嫌いな作業もしなくて結構-。
こんな大胆な働き方改革を実践している企業が、大阪にある。エビ加工・販売会社「パプアニューギニア海産」(大阪府茨木市)。誰も出勤せず、正社員が必死にカバーした日もあったが、「長い目でみればメリットも多い」(同社)。働きやすい職場となって辞める人が減り、人件費の削減が進んだほか、「自由に休める分、会社が困っているときは出勤しようと思える」など、モチベーションも高まっているという。(桑波田仰太)
他の人も休んでいるから気兼ねなく休める
丁寧にエビの皮をむき、衣を付けてエビフライのタネをつくる。同市の工場で働くパート従業員の堀川由美さん(33)は小学生の子供がいる「子育て世代」。子供が体調を崩すとパートを休まないといけないが、「他の従業員も自由に休んでいるので『申し訳ない』と思わなくて済む」と、気兼ねなく休みを取ることができているという。
社員3人、子育て世代中心の女性パート従業員15人の中小企業。社長の長男で工場長の武藤北斗さん(42)が、パート従業員が事前連絡なしに欠勤・出勤できる「フリースケジュール」を考案し、平成25年7月から導入した。
一人も来ない日も…これで仕事は回るのか?
無断欠勤を可能にして本当に業務が回るのか-。同社は比較的出荷スケジュールに余裕があるため作業量を調整できるといい、さらに「働かないと給料が下がるので、みんな一定数は出勤するんです」(武藤さん)。これまでに1度だけ、パート従業員が一人も来なかった日もあったが、その日は武藤さんら正社員が、必要最低限のエビを出荷して乗り切ったという。
きっかけは、23年の東日本大震災だった。
同社は宮城県石巻市に工場を構えていたが、津波で流され、多くの知人も亡くなった。同年5月には、得意先の紹介で茨木市で工場を再開できたが、やがて古くからの社員も辞めた。
フリースケジュール制で定着率アップ、人件費は400万円削減
そんな現実を目の当たりにし、働く意味を考え直した。「会社を続けるからには、従業員から愛される職場にしたい」。フリースケジュール制を発案した。
フリースケジュール制の導入で働きやすい職場になったのか、従業員の定着率が向上。辞めた従業員の欠員補充や新人育成といったコストが減り、人件費が約400万円削減できたという。
昨年1月からは、嫌いな作業をパート従業員が行うことを禁止。武藤さんが、自分は掃除が嫌いだった一方、掃除が好きな従業員もいたことを知り、「ワークシェア」として取り入れた結果だ。パート従業員の面野(おもの)かおりさん(40)は「嫌いな仕事をしないでいいのはストレスがかからず、ありがたい」と話す。
武藤さんは働き方改革について、「『小さい企業だからできる』と思わず、企業それぞれが従業員の働きやすい環境を真剣に目指すことが大切」としている。