中国が抱える1690兆円問題-運用商品で暗黙の保証終了も投資家信じず

  • 中国の資産運用商品の資産は13年間で15兆ドル(約1690兆円)に拡大
  • 暗黙の保証への信頼変わらず、政府の任務が簡単ではないこと示唆

中国当局は17日、これまで資産運用商品の販売を支えてきた暗黙の保証の取りやめに向けた計画を公表した。国内の購入者にとっては寝耳に水のはずだが、まるで何事も起こらなかったかのようだ。

  中国政府の発表にもかかわらず、銀行や保険、証券各社が発行した資産運用商品に資金を投じてきたヨランダ・ユアンさん(29)など個人投資家に動じる様子はほとんどない。その理由は発表内容を信じていないからだ。

  上海にある国有の金融機関でセールスマネジャーを務めるユアンさんは、「大手銀行が資産運用商品の不履行を許すリスクをあえて取るとは思えない。そうなれば資金の回収が相次ぐことになる」と話す。

  この13年間で中国の資産運用商品の資産はほぼゼロから15兆ドル(約1690兆円)に膨らんだ。モラルハザードの広がりが市場価格をゆがめ、金融システムの危機に対する脆弱(ぜいじゃく)性を高めているとの懸念から、当局は暗黙の保証信仰の打破に動いているものの、ユアンさんのような揺るぎない信念は、政府の任務が簡単ではないことを示唆している。

痛い目必要か

  中国当局が投資家に2019年半ばの発効が見込まれる新ルールに関して真剣であることを確信させるため、最終的には資産運用商品で痛い目に遭うことが必要になるかもしれない。だが、大規模な痛手はリスクを伴う。最悪のシナリオでは銀行や他の金融機関の主な資金調達源となってきた資産運用商品から資金を引き揚げる動きが加速する恐れがある。

  米財務省の元中国専門家で、現在はTCWグループのアナリストを務めるデービッド・ロービンガー氏(ロサンゼルス在勤)は、「非常に難しい」と指摘した上で、「保証はもはやないと人々に示す必要がある。そうする唯一の方法は投資家に損失を被らせることだ。そのことを信じさせるにはこうしたことが必要になってくる」と話す。

  中国の投資家は固定利回りや1年未満の期間が中心の資産運用商品が約束した安定的なリターンに依存するようになっている。

  資産運用商品で割合が最も大きい銀行の理財商品は社債や株式、不動産など変動の大きい資産に投資しているにもかかわらず、特に信頼が厚い。理財商品に関する政府の年次リポートによると、16年に満期を迎えた18万4400余りの商品のうち損失が出たのは88商品にとどまった。

原題:China’s $15 Trillion Problem: Investors Don’t Believe in Losses(抜粋)

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日本株反発、米経済先行きとドイツ政情を楽観-輸出など景気敏感高い

更新日時
  • 10月の米景気先行指数は予想を上回る1.2%上昇、独DAX堅調
  • 為替は一時1ドル=112円70銭台、前日から円安方向に振れる

21日の東京株式相場は反発。米国経済の先行きに楽観的な見方が広がり、ドイツの連立政権協議不調の悪影響も限定的だった。自動車や機械など輸出株、非鉄金属や化学など素材株、石油など資源株といった景気敏感セクターが軒並み高い。

  TOPIXの終値は前日比11.48ポイント(0.7%)高の1771.13、日経平均株価は154円72銭(0.7%)高の2万2416円48銭。

  三井住友アセットマネジメントの吉川雅幸チーフマクロストラテジストは、「マーケットはドイツ問題に対し冷静で、リスクオンの状態が維持された上、米国の景気データが良く、安心感が広がった」と指摘。ドイツの政治情勢は「メルケル首相に代わる人材がいない。最終的に再選挙か、大連立を組み直すか分からないが、激変にはならない」とみている。

東証内
東証内
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  米民間調査機関のコンファレンス・ボードが20日に発表した10月の景気先行指標総合指数は、前月比1.2%上昇と市場予想(0.8%上昇)を上回った。前月は0.1%の上昇。

  一方、ドイツでは4党による連立政権樹立の協議が決裂し、政権4期目を目指すメルケル首相は20日、少数与党で政府を樹立するよりは再選挙を望むと発言。ただし、シュタインマイヤー大統領は、各政党に連立交渉に戻るよう促した。

  ドイツの政治混迷の兆しは下落した20日の日本株市場に反映されていたが、同日の独DAX指数は0.5%高と堅調。ユーロ・円は20日の東京市場で一時ユーロが急落したが、その後落ち着きを取り戻した。米統計の堅調もあり、きょうのドル・円は1ドル=112円50ー70銭と前日の一時111円台後半からはドル高・円安で推移した。20日の米国株はS&P500種株価指数が0.1%高。

  良好な米統計や海外市場の落ち着きを好感し、きょうの日本株は朝方から輸出セクター中心に買いが先行、一時は先物主導で上げピッチを加速し、日経平均は301円(1.4%)高の2万2563円まで上げ幅を広げた。野村証券の山口正章エクイティ・マーケット・ストラテジストは、「円高傾向にあった為替の不安が一巡したことが大きい。欧米株の上昇にも反応した」と指摘。金融緩和継続の日本に比べ、米国の金融政策は利上げ方向で、「1ドル=112円水準から円安が進む余地がある」と話す。

  ただ、午後にかけての主要株価指数は伸び悩み。三井住友アセットの吉川氏は、「今はスピード調整の局面で利益確定の動きも出やすい。さらに今週は日米とも祝日があり、動きが鈍くなる要因もある」と言う。

  東証1部33業種は石油・石炭製品、非鉄金属、鉱業、化学、機械、証券・商品先物取引、金属製品、輸送用機器、鉄鋼など28業種が上昇。下落はパルプ・紙、その他製品、医薬品、保険、サービスの5業種。

  売買代金上位では、JPモルガン証券が目標株価を上げたSUMCOと信越化学工業が上げ、業績計画を上方修正したヤーマンは急騰。野村証券が下期業績に強気の見方を示したJXTGホールディングス、血友病薬の良好な試験結果が好感された中外製薬も高い。半面、ニトリホールディングスや大塚ホールディングスは安い。

  • 東証1部の売買高は15億2830万株、売買代金は2兆5005億円
  • 値上がり銘柄数は1426、値下がりは526

 

  

  

  
  

  

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