私が1トン車に乗って、
家具の配送をしていた時の事です。
私は免許は持っていたのですが、
ペーパードライバーだったので・・
二人で配送する時であれば、
大体は助手席に座っていました。
「お前の運転は怖い!」
先輩社員からそう言われるのです。
私が助手席でボーッと座っていると・・
運転している先輩社員がこう言うのです。
「おい、ゼンリン出せ!」
(ゼンリン?なんだろう?)
先輩に尋ねると・・・・
どうやらゼンリンとは地図の事らしい。
「助手席は地図みてナビするんだよ!」
・・と言われてみると・・なるほど!
地図を取り出して開く。
バッ
・・・・・・・・?
使い方がサッパリわかりません。
地図を開く事なんて・・・
生まれて初めてじゃなかろうか?
「オイ~早く案内しろよ~
地図一つまともに見れないのか?」
と先輩社員が急かしてきます。
私は周りの景色を見ながら、
地図を右に左にと傾けて・・・
自分がいる場所を必死に探しました。
すると様子を見ていた先輩社員が、
「あーあーあーあーあーっ」
と怒りの声をあげました。
先輩は言います。
「地図を傾けるなんてなぁ~
1番やっちゃいけない事なんだよ!」
(えっそうだったのか!?)
地図を見てナビゲーションをする。
たったそれだけの事でも、
熟練のコツが必要なようでした。
私は常にパニック状態でした。
ある日は・・・・・
お客さんの家がナカナカ見つからず、
約束の時間に遅れてしまいました。
お客さんはカンカンです。
「お前がちゃんと案内しないからだぞ?」
先輩がそう私を叱ります。
イライラしながら先輩は、
「◯◯は他県から来たのに、
もう道を覚えてるんだぞ?」
と他の社員と私を比較します。
私の少し後に入社した◯◯さんは、
家で地図を広げて勉強してるのだとか・・
(ええ~エライなぁ・・・)
「お前も見習って、
ちゃんと道を覚えて来い!」
そう先輩に言いつけられました。
シュン・・・・・・
本屋でゼンリンを見ると・・・
凄く高い。たしか5000円位??
なので安い地図を買って家で開きました。
これが国道?で・・・これがぁ・・・・
私は車を持っていないので・・
道がサッパリわかりません。
ジィーと地図を見つめていると・・
私の脳に電流が走りました。
私は気付いたのです。
さっそく・・
持ち運び出来るカーナビを購入して、
その先輩社員に見せました。
カーナビを見た先輩は言いました。
「あーあーあーあーっ!
お前はそんなモノに頼るから、
いつまでも道を覚えられないんだぞ?!
「でもカーナビがあれば、
道覚える必要が無いですよね?」
・・・・とは言えませんでした。
結局・・・先輩社員は頑なに、
カーナビを使わせてくれませんでした。
「機械に頼って手抜きをするな!
しっかり勉強して地図を覚えろ!」
そんな事を言うのです。
一時の話でしたが・・・
おかげで随分と苦労しました。
・・ あれから10年近く経ちますが、
未だに地図を上手く見れませんし、
そもそも地図を使う事がありません。
でも・・・困る事なんてありません。
今の時代はスマホもある。
先輩社員としては・・・
オレが苦労して覚えた事だから、
お前も同じ苦労をしろ!
そういう気持ちだったんでしょうか?
でも先輩だって・・・
江戸時代とかの人から見れば、
「お前なにトラックとか使ってんの?
家具は手と足で運べよ!」
「トラックに頼るから足腰が弱いんだよ!」
とか言われるのかもしれません。
・・技術はドンドン発達していくのに、
自分の時代の苦労を下に押し付けてたら、
他の会社に食いつぶされてしまいますよね。
まぁこの会社は倒産したんですけど・・・・
おしまい