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【社説】

代表質問始まる 野党の追及が物足りぬ

 安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まった。新たに結成された立憲民主党と希望の党にとっては初めての登壇だったが、森友・加計両学園の問題は追及不足ではなかったか。

 まず登壇したのは、十月の衆院選で野党第一党になった立憲民主党の枝野幸男代表。続いて自民党の岸田文雄政調会長、希望の党の玉木雄一郎代表が質問に立った。

 衆院選直前に結党された立憲民主と希望の代表はまず自らの党がどんな社会を目指すのかを説明し、首相に質問した。

 自らの立ち位置を明確にした上で、内閣の方針をただすのは当然ではある。しかし「批判ばかり」という指摘を恐れてか、政権の問題点を鋭く突くというよりは、提案型の質問になった感がある。

 特に気になったのは、学校法人「森友」「加計」両学園をめぐる問題への言及である。

 両学園の問題について、枝野氏は「まっとうな民主主義のためには適切な文書管理と徹底した情報公開が不可欠だ」と指摘し、玉木氏も「これらの問題について国民がいまだに疑問を持っている最大の原因は、情報公開が恣意(しい)的に行われているからだ」と追及した。

 これらがいまだ解明に至っていないのは、政府が適切な文書管理と情報公開を怠ってきたことも大きな要因ではある。両党の指摘通り、文書管理と情報公開のあるべき姿を探るのは当然だ。

 しかし、この問題の本質は、公平・公正であるべき行政判断が、首相の意向や官僚の忖度(そんたく)で歪(ゆが)められたか否かにほかならない。

 報道各社の世論調査では、学校法人「加計学園」による獣医学部新設の認可に反対する人や納得していない人は、賛成する人や納得している人よりも依然、多い。

 国民が感じることや素朴な疑問を、国民の代表として政府にただすのは国会議員の役割だ。特に野党にとっては、政権の選択肢を示すと同時に、権力監視が重要な使命であることをいま一度、肝に銘じ、国会審議に臨むべきである。

 岸田氏はこの問題について「国民に疑問の声がある以上、誠意を持って丁寧に説明することが重要だ」とただし、首相は「丁寧な説明を積み重ねてきた。今後もその考え方に変わりない」と応じた。

 首相がその言葉を違(たが)えることなく、謙虚な姿勢で、丁寧な説明に努めるのか否か。きょう以降の代表質問や委員会審議などでの答弁や対応を見つつ、判断したい。

 

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