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【社説】

COP23閉幕 「脱炭素」が加速する

 気候変動問題の国際会議、COP23は地球温暖化対策の新たな枠組みであるパリ協定の運用ルール作りを加速させ、また一歩、脱炭素に近づいた。変わってしまった米国、変われない日本を置いて。

 昨年十一月に発効のパリ協定に“観客”は存在しない。国際社会が全員参加、各自の目標を掲げて温室効果ガスの削減を競い合う。

 “試合開始”は二〇二〇年。しかし、来年末のCOP24までに、その「ルールブック」をつくることになっている。

 今月六日に開幕したCOP23では、開催地ドイツではなくフィジーが議長国だった。温暖化の進行に伴う海面上昇で国土消失の危機にさらされた、島国の代表だ。

 米国トランプ政権のパリ協定離脱宣言は途上国を動揺させた。

 温暖化による環境変化に適応していくための支援に影響が出るのではないか、という不信感が頭をもたげ、南北対立の再燃も心配された。

 それでも、COP23の「ルールブック」のたたき台となる文書の作成や、各国が自主的に設定済みの削減目標を引き上げるための対話活動を新年早々始めること、先進国の削減目標の達成や途上国支援の進捗(しんちょく)状況を検証することなど、すべての議題に合意をみた。

 世界が共有すべき気候変動危機の象徴であるフィジーを軸に、参加国が、先進国、途上国の立場の違いを超えて、全員参加の枠組みを維持する意志を強める中で、離脱を表明した米国の次に浮き上がって見えたのが日本だ。

 COP23の開幕当日に発表された「日米戦略エネルギー・パートナーシップ(JUSEP)」では、原子力や石炭火力の推進が確認され、国際NGOなどの非難が集まった。

 石炭火力はたとえ高効率のものであっても、天然ガスの二倍の二酸化炭素(CO2)が出てしまう。

 温暖化対策の面から見れば、石炭火力も原子力も、すでに“終わったエネルギー”なのである。

 一方、よい意味で存在感をアピールしたのが、自治体や企業による脱炭素化の取り組みだ。

 世界経済は脱化石燃料、脱炭素へと急展開しつつある。再生可能エネルギーなど、脱炭素市場も急速に膨らみ続けている。

 あと一年、世界の脱炭素化は、さらに加速するだろう。日本政府も野心的な貢献策を掲げて「ルールブック」づくりへの関与を強め、発言力を持たないと、経済の足を引っ張ることになる。

 

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