はじめに
7年も前(2010年)の出来事です.その後,同じ事態に遭遇したことがないのでかなり希有な事例かと思うので書き残しておきます.
映画館に行こうとタクシーに乗って・・・
6年前のとある日曜日,それは家族で映画館に行く日でした.
ただ,当時行きつけだったその映画館はチケットカウンターが少ないため,人気映画が上映されると長蛇の列を余儀なくされました.
そこで,筆者が朝一で開場前の人が少ないうちに並んであらかじめ前売り券を座席指定券に交換すべく(当時はまだムビチケが実装されてなかった),家を出ました.
映画館は電車とバスでは行きにくいところにあるのでタクシーを拾いました.
チケットを忘れた
映画館の入っている建物のそばで降車し,朝食抜きだったので近くのコンビニで買い物をすませ,お店を出たところで,はたと気がつきました.
チケット忘れた・・・
ちょっとありえない,初めての失態です.前の晩に家人とワイン2本空けたのがまずかったのかもしれません.もっとも,とっくの昔からまずい状態になっているようではありますが.
しかたないので,タクシーで家に戻りました.この時点で前売り券と当日券の差額があっさり吹き飛びました.前売り券意味なし.
自宅に戻り,チケットを手にして再出発.チケットがポケットに入っていることを何度も確認しました.
タクシー,再び
気を取り直し,さっきと同じ場所から再びタクシーを拾おうと手をあげました.
すると,運転手さんが満面の笑みを浮かべながらタクシーを寄せてくるではありませんか!
「さっき乗られた方ですよね!」
見覚えがあるタクシーのような気はしましたが,なんとついさっき拾ったばかりのタクシーではありませんか!
それにしても,ついさっき乗せたばかりのオヤジが,さっきと同じ場所でまた手をあげているという,普通ありえない光景に遭遇するとは,運転手さんも予想だにしていなかったようです.
こんなこともあるんですね~(運転手さん,めちゃくちゃ朗らか)
いや,まったく・・・チケット忘れちゃって(小さな声でささやくように)
なにしろ本日30分で2回目の乗車です.もちろん運転手さんに行き先を聞かれることもなく,目的地まで実にスムーズに連れて行かれました.しかも1回目より安い料金で.
普段タクシーに乗っても運転手さんのお名前を確認しないんですが,何だか気になってネームプレートを見たら最初と最後の文字は私と一緒.こんなこともなかなかありえない,というか初めてでした.
なお,今はムビチケ等,あらかじめ座席を予約してから映画館に出かけています.タクシーで映画館に行き,チケットを忘れてタクシーで家に戻り,またすぐタクシーを拾うなんてことはもうありません.
同じ状況で検証する機会は失われたものの,せめて自分が住んでいる地域のタクシー台数くらいは調べておこうといくつか資料を眺めました.
東京都特別区・武三交通圏のタクシー車両数は42,252台
タクシーは道路運送法第20条によって発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送をしてはならないとされています.
東京都のタクシーは次の図の通り5つの営業区域(交通圏)に分けられています(http://www.taxi-tokyo.or.jp/datalibrary/pdf/hakusyo2014all.pdfより).
図は平成25年度のものです.私が住んでいる東京23区の場合,23区と武蔵野市・三鷹市が営業エリア(特別区・武三交通圏)になります.
特別区・武三交通圏のタクシーが三鷹から客を乗せて立川で降ろした場合,次の客が「立川から八王子まで行ってくれ」と言ってもそれは発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送となります.その依頼は受けられないことになるわけです.
そして,特別区・武三交通圏とは言っても運転手さんがそのエリア全体をカバーしているわけではありません.これまで乗ったタクシーでも「このあたりは不慣れでして」という運転手に当たった経験は少なくありません.
とある特別区・武三交通圏タクシー運転手さんのブログを読むと,この方の営業エリアは港・中欧・千代田の3区となっていました.実際,このエントリーで筆者が2回乗ったタクシーの運転手さんも周回していて私に再び遭遇したと言ってました.タクシー運転手さんはそれぞれ独自の営業ルートを巡回しているのかもしれません.
そうすると,特別区・武三交通圏でハイヤーを除いたタクシー車両数が42,252台(上の図より)あるとはいえ,自分の生活圏で出会うタクシーはそのうちのごく一握りなのでしょう.
試算してみる
特別区・武三交通圏は稼ぎどころの銀座地区を抱えています.
新橋駅の近くには「銀座1号タクシー乗り場」があり,そこへの乗り入れには登録が必要で,その登録台数は平成27年度で17,454台.
(画像出典:https://www.tokyo-tc.or.jp/news/driver/docs/ginza_rule_2908-6.pdf)
筆者は23区内,銀座まで電車で30分以内のところに住んでいますので,1日に2回乗車したタクシーが銀座1号タクシー乗り場に登録している可能性は高いと思われます.
ですが,42,252台を17,454台としてみても,まだ母数としてはかなり多い気がします.
そこで,日本最大級と謳う「全国タクシー」アプリ登録タクシー事業者のうち,特別区・武三交通圏および中央区を含む地域を対応エリアとしているタクシー台数(6,131台)を母数に試算してみます.
実働率,運転手の乗車時間,空車率
<実働率>
1年中すべてのタクシーが稼働してるわけではありません.特別区・武三交通圏タクシーのH25年の実働率は81.3%です.
<運転手一人の乗車時間>
同じ運転手さんが24時間乗車しているわけではないので,1日のうちに同じ運転手さんに再遭遇できる時間は運転手さんの勤務時間によって決まります.
乗務員の1日の勤務時間は15.5〜18時間,1乗務で3時間の休憩・仮眠がとれ,乗車終了後の点検・洗車・片付けに30分ほどかかるとのことなので,勤務時間を18時間すると乗車時間は14.5時間(一週間の流れ・一日の乗務│日本交通タクシー乗務員求人採用案内).
したがって,同じ運転手に出会えるのは1日の60.4%(14.5h/24h).
<空車率>
空車のときにその運転手に当たらないと乗ることはできません.H25年の実車率は43.1%なので,空車率を56.9%としておきます.
特別区・武三交通圏および中央区を含む地域を対応エリアとしているタクシー台数6131台×実働率81.3%×1日の乗車時間割合60.4%×空車率56.9%=1532.4台
この数字をそのまま用いれば,1日のうちに同じタクシーに2回乗る確率は234万8249分の1になります.
でも,筆者の自宅を含む区を営業エリアとしているタクシーを絞り込めば,その母数はもっと少ないはずです.ですがその数字は見つかりませんでした.
ざっくり1/10の153台と仮定すれば,153台のタクシーに1日のうちに2回乗る確率は23,409分の1になります.言うまでもなくこの類の計算を何回してもエリア内のタクシー数がわからない以上意味をなしません.
自分が家のそばでタクシーを拾う場所はいつも同じです.でも残念ながら件の運転手さんに再び出会ったことはそれ以来ありません.23,409分の1はともかくとして,1日のうちに2回同じ運転手のタクシーに乗る確率は地域のタクシー台数によって違うとはいえ,少なくとも特別区・武三交通圏ではかなり低いのではないでしょうか?
あなたは同じ運転手さんのタクシー1日のうちに2回,あるいは再び乗ったことはありますか?
ではまた・・・
この出来事がきっかけで買った本です.上巻の前半は少したるかったけど,物語が進むにつれて一気に読みました.