日本では今年4月経済産業省が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表しRFID導入の機運が高い。しかし、RFIDタグ無人コンビニの代表格である「BINGO BOX」CEOは、その経験からRFIDの問題点を明確に炙り出している。日本勢はRFIDタグの問題点を解決できるのだろうか。
日本の状況:2017年4月経済産業省が好評した「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」
経済産業省で公表されている文章をそのまま以下に掲載する。
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経済産業省は、2025年までに、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズの全ての取扱商品(推計1000億個/年)に電子タグを利用することについて、一定の条件の下で各社と合意することができました。これを踏まえ、各社と共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定しました。
(上記宣言の保留条件)
特殊な条件(レンジ温め、金属容器、冷凍·チルド、極細等)がない商品に貼付する「普及型」の電子タグの単価(ICチップ+アンテナ+シール化等のタグの加工に関する費用)が1円以下になっていること。
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日本では、経済産業省が主導する形でICタグ(RFIDタグ)を導入へ業界あげての機運が高まっている。代表的なRFID製造メーカーである村田製作所は、困難と言われていた金属に取り付けられるRFIDタグの製品化を達成するなど、性能の向上も進んでいるようだ。
中国の状況:RFIDタグを活用した無人コンビニ関係者のコメントまとめ
現段階で中国で稼働している無人コンビニはRFIDタグを活用した無人コンビニが主流である。このサイトでも取り上げている「BINGO BOX」や「WELL GO」はRFIDタグを活用した無人コンビニの代表格といっても良い。
しかし、中国の無人コンビニ関係者の声をヒアリングすると、RFIDタグが在庫管理面では抜群の力を発揮するものの、その欠点がだんだん鮮明になってきていることがわかる。
RFIDタグを活用した無人コンビニBINGO BOXを運営する繽果盒子のCEO陳子林(チャンズーリン)は、インタビューにおいて「BINGO BOXは、現在画像認証技術の研究に注力している。RFIDは無人コンビニを実現する最終的なテクノロジーではない。ベストなソリューションを模索している。」と語っている。
また、娃哈哈グループとアリババと共同で「Amazon Go」型の画像認証を活用した無人コンビニ「Take Go」を開発しているDeepblue Tech社のCEO陳海波(チンハイボー)は、RFIDは、無人コンビニを運営する上で十分な機能を持ち合わせていないと断言し、RFIDタグを必要としない無人コンビニを開発するとRFIDタグへの決別宣言を行っている。先週開業した京東の無人コンビニでは、RFIDを活用しながらも同時に機械センサー、画像認証、重量センサーを複合した総合的テクノロジー無人コンビニへと技術的な改善を試みていることがわかる。
総じて、現在中国ではRFIDを活用した無人コンビニの時代から、より利便性の高い無人コンビニを実現するための次のテクノロジーを模索する段階に突入したといって良いだろう。
RFIDタグの弱点とは?アルミホイルが盲点だった!?
以下に「BINGO BOX」「WELL GO」と言ったRFIDタグを活用した無人コンビニで業務を経験し、RFIDタグの欠点を知り尽くした人間の意見をまとめてみたい。RFIDタグの性質を理解した上で商品の盗難を計画されるとそこにはエアポケットが存在するようだ。以下RFIDの弱点。
1、 RFIDタグとは(Radio Frequency Identification)の略であり、文字どおり電波を発信することによって内蔵された情報を読み取るものである。
したがって、電波を遮るもの、例えば、液体、金属、アルミ箔などをタグに接触させることで認識率が低下する。もっとも厄介なものがアルミ箔で商品を覆い尽くした場合である。RFIDから発信される電波を全て覆い尽くされた状態で、商品を店外に持ち出されれば、相当程度の確率で商品探知出来ないという。電波を認識出来ないのであるから、アラームを出しようがないのである。如何にその他のセンサーでユーザー情報を特定していようが、RFIDタグの存在自体を消しさられてはお手上げである。最先端のテクノロジーがアルミホイルに負けてしまったのである。
2、コストが高い
BINGO BOXからのコスト情報ではRFID1枚あたり0.5元(8円程度)とされている。WELL GOからのコスト情報ではBINGO BOXより廉価だというが明確なコスト金額は公表されていない。先日開業した京東の無人コンビニでは、一枚あたり0.1元(1円70銭程度)まで低下とした公表されている。ただし、RFIDタグも使用電波帯によって性能も異なるし価格も異なるので、一概に公表価格だけを比較しても意味がないのかもしれない。何れにせよ、コンビニでは100円程度の商品が多い。100円の中で0.5元(8円程度)がコストに加われば利益を圧迫するのは当然である。またタグを添付するコストも考慮する必要がある。
3、会計台で商品の配置状況によって同時認証できない。
これは意外な印象であるが、無人コンビニで度々発生しているようだ。会計台に商品を置くときに、少数のアイテムを綺麗に整然と配置すれば認識率に問題はない。しかし、多くのアイテムを山のように積み重なった状態で配置すると、たちまちRFIDタグの認識率が低下してしまうようだ。認識するまで商品の配置を変更して繰り返すこととなる。RFIDが正確に読み取られるまで作業を繰り返すことになり、手続きに時間がかかってしまう。
4、店外に出る際の支払確認認識スピード
会計後に顧客が店外に出る手前に、ちゃんと全商品の会計を済ませたのかを感知するセンサーがある。全ての商品の支払いを済ましてればドアが開く仕組みであるが、一度にたくさんの商品を購入している場合には、たくさんの商品がビニール袋の中で重なりあい、3と同じような状態が発生する。あたらめてビニール袋から商品を取り出したり袋を分けるなど、認識するまでの時間がかかる事態が発生しているという。また、センサーと商品との間に手が入り込んでしまった場合などにも、アラームが作動するなど、ユーザーの利便性が高い状況ではないようだ。
5、熱に弱く電子レンジ対応できない
これは以前から指摘されているRFIDタグの欠点で、性能の向上を待つほかないが、日本のようにコンビニで電子レンジを活用する頻度が高い国では、解決するのが必須の大きな問題点である。
以上がRFIDタグの欠点のまとめであるが、2-3のようにユーザーにストレスを与えるものと1のように致命的に運営企業に損失をもたらす欠点が併存していることがわかる。
ただし、機械の画像認証やAIには出来ないが、RFIDタグだけが実現できる利点もある。それは、RFIDタグの特性を活かし、店内にある全体商品の現時点の情報を把握できることである。同時に複数の商品の在庫状況を把握できるために、在庫管理や発注システムと連動して抜群の力を発揮する。
無人コンビニは、RFIDタグ単体から複合的なテクノロジーを駆使する時代へ突入
現在の中国の無人コンビニのテクノロジートレンドを追いかけてみると、 RFIDタグ依存から、画像認証や重量認証といった別のテクノロジーを複合活用する時代へとシフトしていることがわかる。
RFIDタグだけでは、無人コンビニに関する全ての問題を解決できないという考え方が急速に広まりつつある。次に登場するのが、AIや画像認証などとミックスさせた複合的な進化型無人コンビニとなるわけである。
おそらく、将来的にはRFIDタグを一切活用しない、アマゾンの「Amazon GO」アリババの「タオカフェ」,Deepblue Techの「Take Go」あたりがAI無人コンビニを開発してくるのであろうが、まだその道のりの途中である。
RFIDタグからAI無人コンビニの途中過程として先日発表された「京東無人コンビニ」を位置付けていただくと、業界のテクノロジーマップの理解が進むと思われる。今後も無人コンビニ業界を巡る面白い情報をお届けしたいと思う。
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